「ずっと追いかけてきた」―広島で活躍の兄から刺激、プロ注目の弟が秘める思い

侍ジャパン社会人代表が出場する「第28回 BFA アジア選手権」が2日、台湾で開幕した。日本は予選ラウンド初戦で香港と対戦。30-0の大差をつけて、5回コールド勝ちの白星発進をした。この試合に、今秋のドラフト候補に挙がる田中俊太内野手(日立製作所)は「1番・二塁」で先発。リードオフマンとして先制のホームを踏み、2安打4打点とチームを勢いづけた。

侍ジャパン社会人代表・田中俊太【写真:Getty Images】

兄は広島・田中、プロ注目の侍J社会人“斬り込み隊長”俊太が躍動

 侍ジャパン社会人代表が出場する「第28回 BFA アジア選手権」が2日、台湾で開幕した。日本は予選ラウンド初戦で香港と対戦。30-0の大差をつけて、5回コールド勝ちの白星発進をした。この試合に、今秋のドラフト候補に挙がる田中俊太内野手(日立製作所)は「1番・二塁」で先発。リードオフマンとして先制のホームを踏み、2安打4打点とチームを勢いづけた。

侍ジャパン社会人代表、アジア選手権2戦目はパキスタン戦、石井監督「気持ちを前面に出す」(侍ジャパン応援特設サイトへ)

「初回に先制点を取れたのは大きかったと思う。それで一気に緊張が取れて、こういうゲームに繋がったと思います。点差が開いても、しっかり集中力を持って、攻撃にしろ、守備にしろ、できたと思うので良かったです」

 先発・谷川昌希(九州三菱自動車)が3者連続三振でゲームの流れを作り、迎えた最初の攻撃だった。1番・田中はフルカウントからボールを見極め、四球で歩いた。2番・福田周平(NTT東日本)も四球を選ぶと、3番・藤岡裕大(トヨタ自動車)の一二塁間を破るヒット。日本は満塁の絶好機を迎えた。

 ここで打席に立ったのは、4番・笹川晃平(東京ガス)。カウント1-1から打球を打ち上げたが、三走・田中は香港の二塁手の下がり方が悪かったため、「ちょっとやりそうだなと思った」という。その予想通り、二塁手は落球。田中は先制のホームを駆け抜けた。その後も日本の攻撃は終わらず。無死満塁で再び回ってきた第2打席は二ゴロだったが、二塁封殺の間に7点目が入った。

 2回には無死二、三塁で打席へ。「点差が開いていたが、積極的にいこうと思っていた」と、1ボールからの2球目を捉え、左中間を割る2点適時三塁打とした。その後もヒットに四球が絡み、1死一、二塁で入った4打席目には「逆方向を狙った中で、内(角)に入ってきたボールを、しっかり我慢して払えた」と、ライトオーバーの2点適時二塁打を放った。

「(3打席目に)逆方向に当たりが出たので良かったなと思います。調子がいい時は、自然と逆方向に打球が行くことが多い。緩いボールのピッチャーを引っ張りにいくと凡打になるので、逆方向をイメージして打ち返せるといいかなと思います。限られた練習時間でも、もっと良くなるように工夫してやっていきたいなと思っています」

イメージは逆方向「打ちにいった中で見逃せるように」

 普段、対戦している投手とは、球速や球威などでレベルの差がある。それでも、やることは変わらない。

「タイミングはしっかりネクストでも合わせているので、打てると思ったボールに対して振れる準備はしている。打ちにいく姿勢は忘れないように、打ちにいった中で見逃せるようにしています」

 国内で行われたオープン戦からトップバッターを任せている石井章夫監督は「調子を見て、1番か3番か。切り込み隊長として一番いいバッターを持ってくる考え方もあるので。今日は素晴らしかったですね」と、期待通りの働きぶりに拍手を送った。

 兄は広島のリードオフマン・田中広輔。尊敬する兄の姿は「いちファンという目線でも見れる」という。代表入りした時は「おめでとう、怪我なく頑張れよ」と祝福された。

「兄は第一線で頑張っていて、全てを参考にすることはないですが、参考になる部分もいっぱいある。大変な中でやっているので、僕も負けないでやらなきゃいけないなという気持ちになりますね。ずっと追いかけてきたので」

 小学校でソフトボールを始め、中学でも同じチーム。東海大相模から東海大、と同じルートを歩んできた。社会人1年目の昨年、ベストナイン二塁手部門を受賞したが、兄も社会人1年目(JR東日本)にベストナイン遊撃手部門に選ばれた。残るは、最高峰の舞台=プロ野球入りだ。

 今年のドラフトは今月26日に迫る。「しっかりやることをやらないといけないと思っています。怪我はしないようにしたい」。まずは日の丸で役目を務め、日本をアジア王者にけん引する。(高橋昌江 / Masae Takahashi)

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