カブスを愛してやまないバンドマン、オカモト“MOBY”氏が世界一2連覇宣言

メジャーは今週でレギュラーシーズンが終わり、いよいよポストシーズンを迎える。ナ・リーグではナショナルズが早々に東地区優勝を決め、西地区優勝のドジャースは100勝超えを記録した。混戦を極めた中地区は、昨季108年ぶりのワールドシリーズ優勝を遂げたカブスが、最後に底力を見せて優勝。2季連続の世界一へ望みをつないだ。

「SCOOBIE DO」のドラマー、オカモト“MOBY”タクヤ氏【写真:佐藤直子】

趣味が高じてメジャー解説、昨季はWS第5戦を現地で観戦

 メジャーは今週でレギュラーシーズンが終わり、いよいよポストシーズンを迎える。ナ・リーグではナショナルズが早々に東地区優勝を決め、西地区優勝のドジャースは100勝超えを記録した。混戦を極めた中地区は、昨季108年ぶりのワールドシリーズ優勝を遂げたカブスが、最後に底力を見せて優勝。2季連続の世界一へ望みをつないだ。

 短期決戦のプレーオフは何が起こるか分からない。下馬評では、シーズン中も積極的に戦力補強を行ったドジャース優位の声が多いが、昨季終了直後からカブスのワールドシリーズ2連覇を信じて疑わない人物がいる。それが、ファンクバンド「SCOOBIE DO」のドラマー、オカモト“MOBY”タクヤ氏だ。

 小学生だった1988年に、日米野球を観戦に出掛けたという筋金入りのメジャーファン。トレードマークのアフロヘアーは、“ミスター・オクトーバー”ことレジー・ジャクソンへのオマージュだ。アメリカで初めてメジャー観戦をしたのは高校生の時。米ミネソタ州に約1か月ホームステイをしている間に、メトロドームでツインズvsアスレチックスという当時の黄金カードを観戦し、衝撃を受けたという。

「前年(1991年)にツインズがワールドシリーズで優勝して、アスレチックスは1990年にリーグ優勝して、バッシュブラザーズ全盛期。いやぁ、盛り上がりましたね。後に、ツインズからシェーン・マックやダン・グラッデンが巨人に来て、妙に親近感が沸いちゃって。

 僕は当時軟式野球をやっていたんですけど、完全にメジャーかぶれですよ。グローブはアメリカで買ったマグワイアモデルを使ったり、フランクリンの手袋を使ったり。当時は誰もしていなかったアイブラックとか貼ったりね。これは飯田橋にあるベースマンってお店で買いました(笑)。いけ好かないませガキですけど」

 当初はツインズやアスレチックスに傾倒していたMOBY氏の心が、ぐっとカブスに引き寄せられたは1995年大学1年生の時だった。アメリカ一人旅に出掛け、立ち寄ったリグリーフィールドで、その佇まいにイチコロとなった。旅行に出掛ける直前に見た映画は、シカゴが舞台のコメディ映画「ブルース・ブラザーズ」。ブルースやソウル、R&Bといった黒人音楽を演奏するバンドが主人公の名作で、ジェームス・ブラウンやアレサ・フランクリンといった有名歌手も登場する。大学で入ったサークルで黒人音楽を演奏するMOBY氏にとって、必然の出会いとも言える映画だが、実は作品の冒頭で主人公が書いた住所「1060 W Addison」はリグリーフィールドの所在地だった。

「実際にリグリーに行った瞬間、ブラックミュージック、カブス、シカゴ……とバラバラとあった情報が、頭の中でバチッとハマった感じがしましたね。また球場の雰囲気が最高で。ヤジを飛ばしているオジサンに、横から悪ガキたちが物飛ばしたりして(笑)。

 カブスって、選手もファンも球場も、全部ひっくるめていいんですよ。しばらく勝てない時代もありましたけど、それでも平日のデーゲームが満員になったりして。出来の悪い子を愛でている感じが、すごくいいなと」

10月4日発売の13枚目となるアルバム「CRACKLACK」

2年連続ワールドシリーズ制覇を確信「去年優勝した経験は大きいですよ」

 以来、カブス愛はとどまることを知らず。「SCOOBIE DO」の所属レーベル「CHAMP RECORDS」のロゴは、「メンバーが誰も案を出さなかったので、デザイナーさんに頼む過程で似せて作ってもらっちゃいました(笑)」と、Cを○で囲ったカブス仕様。バンド結成21年目にして初めて1か月の長期休暇を取った昨年6月には、1人メジャー観戦ツアーを計画し、20日間で10球場13試合(マイナーも含む)を観戦した。さらには、108年ぶりの奇跡を見届けるべく、昨年10月にはバンドのスケジュールの合間を縫って強行渡米。何とか第5戦のチケットを手に入れ、カブスの勝利を右翼ポールに程近いスタンド席で見届けた。

「第4戦と第5戦に間に合うように行ったんですけど、第4戦はチケットが1500ドルもして諦めた。球場周辺のバーで飲みながらテレビ観戦しようとしたら、バーに入るのも100ドル掛かる上に売り切れ。結局、その試合には負けたんですけど、それがよかった。次の日の朝、インターネットで少し安くチケットを見つけたんですよ。それでも1000ドルしたんですけど、うちの奥さんに相談したら『せっかくだから行ってきなさい』って言ってもらって(笑)。

 いや、雰囲気は物凄かったです。1000ドル払った甲斐があった。しかも、カブスが71年ぶりにリグリーで勝ったんですよ。最高でしたね。

 実は、その前年(2015年)もメッツとのリーグ優勝決定シリーズ第4戦を見に行ったんですよ。4連敗で敗退した試合だったんですけど、負けた後の球場の雰囲気がよかった。メッツの選手が喜ぶのを見ながら、シカゴのファンが『レッツゴー・カビー』って大声でコールするんです。これは来年くるぞって思わせる、そんな雰囲気。その時、たまたまカブスで映像担当をしている人と知り合って、実は日本のカブスファン代表として応援ビデオにも出演してしまいました(笑)」

 メジャーの醍醐味を伝えるべく、2012年からはドジャースを愛する音楽ライターの久保田泰平氏と「NO BASEBALL, NO LIFE.」というラジオ番組をスタート。今では趣味の枠を超え、DAZNのメジャー中継で解説を務めるまでになり、時間があればメジャーの試合映像を見たり、選手のスタッツやプロフィールをチェックしている。「なんだ、この沼は。はまり込んで抜け出せない感じ」と野球漬けの日々を笑うが、抜け出せない感じが心地よくもあるようだ。

 もちろん、バンドマンとしての本職も忘れてはいない。10月4日には13枚目のアルバム「CRACKLACK」が発売され、来年にかけてはツアーで全国を訪れる日々を送る。ひび割れ(CRACK)欠落(LACK)した世界に響くようなラブソングが収められたアルバムを、野球に例えて説明してしまうのは、もはや“職業病”なのかもしれない。

「20年以上バンドをやっていると、バンドの個性が決まってきて、何でも同じ感じに聞こえてしまうことがあるんですよ。でも、今回はいつも作詞・作曲を担当するギターのマツキタイジロウが、ほぼ完成形に近いデモ音源を作ってきて、それを少しアレンジする形にしたら、癖が出すぎずに今までと違う味が出たと思います。野球に例えたら、GMが個々の良さを引き出しながら、うまくチーム編成をしてくれた感じかな。22年目で新しい形が出せたと思いますね」

 ツアーに忙しい今年は、現地でカブスを応援できないが、心は常にカブスと一緒だ。

「今年は新戦力がよかった。ジョン・ジェイとかイアン・ハップとかね。地区シリーズでナショナルズと対戦するのが、最大の山場。シーズン中は負けてるイメージしかないので(苦笑)。でも、去年優勝した経験は大きいですよ。2年連続ワールドシリーズ制覇。それしかありません」(佐藤直子 / Naoko Sato)

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