【東海地区鉄鋼需要、下期をどう見るか(中)】〈建設・土木関連〉足元さえないが「回復局面」/地区大型物件も順次始動へ 「人手不足」の足かせ要因続く

 東海地区の建設市場は今のところ、良い要素といまひとつの要素が交錯した微妙な情勢になっている。しかし、多くの関係者が「年度末にかけて状況は好転してくる」とみて、土木・建築ともに期待が高まっている。ただ、これまでのような過度な期待も抱いていない。「人手不足で加工業務も建築・設計も大きくは伸ばせない」とみているためだ。こうした中、下期は需要回復への着実な対応とともに、メーカー販価値上げ分の市場への転嫁が重要テーマになりそうだ。

 2017年度第1四半期の鉄骨生産数量(橋梁除く)は4万664トン(中部経済産業局まとめ)となり、前年同期を14・2%上回った。地区Hグレード鉄骨ファブリケータ―は、多くが半年先までの案件を確実に抱えている。亜鉛めっき加工などにも繁忙感が出ている。

年度末にかけ穏やかな需要回復が予想される

 しかし地区案件はそれほどではなく、多くは首都圏物件向け。「大手鉄骨加工業者は繁忙だが、地区の建築向け厚板加工量などはあまり伸びていない」のが実態といえる。

 足元、東海圏ではドラッグストアなど中小案件が建設需要を下支えしてはいるが「中堅クラスの鉄骨加工業者では、足元の生産には余裕がある」(厚板溶断業者)状況。

 だが、下期以降の需要には光明が差し始めている。

 自動車関連メーカーが研究開発棟や高層マンションタイプの従業員寮の新設計画を打ち出した。また、万トン級の鉄骨加工となる大規模物流拠点の新設が相次いで着工する。

 三菱地所が名古屋市南区で「ロジクロス名古屋笠寺」(仮称)を着工。大和ハウス工業も三重県桑名市で物流拠点を開設(19年春竣工予定)するなど、当地区の建築用鋼材の需要に追い風となりそう。

 さらに、中部国際空港隣接地で大規模展示場の建設工事が間もなく始まる。鉄筋なども含め鋼材使用量は2万トン、展示面積は6万平方メートルともいわれる。このほか岐阜県庁および岐阜市庁舎の建て替え計画が進捗しており、これもプラス要因。

 こうした中「人手不足」はやはりマイナス要因となる。

 施工管理者など建設現場作業員の不足による建設工事の進捗遅れも懸念される。工期が遅延すれば、鉄骨加工業者はヤード不足となり、コストアップ要因にも。

 また、配送リスクも懸念材料。「運転手不足で、納期通りの供給ができない配送リスクに直面している。場合によっては、遠隔地の案件の受注を避けざるを得ない」(鉄骨加工業者)。

 さらに、課題はやはり価格だ。鉄鋼メーカーの販価上げを市場に転嫁しなければ、流通・加工業の採算は厳しくなる。足元の環境から明確な方向性を読み取るのは難しい段階といえる。

 カラーガルバリウム鋼板など亜鉛めっき鋼板類の需要は、踊り場局面から脱しそうだ。薄番手は新設住宅数の伸び悩みを映し、目先も動意は薄そう。厚番手は夏場に一時ストップしていたスレート屋根改修工事が再び動きだした。また、大型物流拠点の新設で実需は増えそうだが、建て方開始後、外壁、屋根工事までは時間がかかるため「薄板建材需要が本格化するのは、早くて年末になりそう」(窓口商社)との見方。

 淀川製鋼所は10月出荷分より、全品種トン1万円の値上げを公表。他メーカーも追加値上げする公算が大きい。

 特約店筋の多くは、鋼板メーカーが昨年末以降に実施した合計トン2万円の値上げ分の転嫁が未達のまま。堅調な自動車生産などを映し、原板である薄板の供給タイト化が顕在化しており、ガルバリウム鋼板など鉄鋼二三次製品にも影響する。流通各社は在庫の確保と、仕入れ値高に応じた新価格の浸透に一層注力する必要がありそうだ。

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