【東海地区、下期の鉄鋼需要展望】〈新日鉄住金・名古屋、越川和弘支店長に聞く〉製造業堅調、建築にも明るさ 需給タイト化、価格改定「機は熟した」

 自動車をはじめ日本のものづくり産業が集積する東海地区。国内外の需給環境がタイト感を増す中、今年度下期の東海地区鉄鋼業はどうなるのか。越川和弘新日鉄住金名古屋支店長に、下期の地区鉄鋼業の展望を聞いた。(片岡 徹)

――地区の鉄鋼需要環境をどうみるか。

 「非常に力強い。管内鉱工業生産指数は7月実績で119(2012年を100)と近年の中でも高い水準。主力の自動車生産が底堅く、特に運転支援機能など安全性能を強化した小型車販売や、北米向けSUVなどの輸出が堅調」

新日鉄住金・名古屋・越川支店長

――全体の輸出額も増えている。

 「名古屋税関管内の輸出額は7カ月連続増(8月)。トランスミッションなどの自動車部品や工作機械、半導体製造装置など、競争力のある当地区のものづくり力が輸出を押し上げている。輸出の増が設備投資にも波及し、配電盤などの内需関連の活動も増えている」

――建築・土木分野は、少し動きが鈍いとの声もあるが。

 「当地区のS造・SRC造の建築着工は、今期に入り月間約50万平方メートル(7月まで)、対前年で3%程度の増。研究開発などの拠点強化や、物流倉庫関連の出件が見込まれる中、ここにきて工場増設などの動きも出てきており、今後の荷動きへの期待感はある」

 「土木も、名古屋第二環状自動車道(名二環)で大径管需要があるほか、河川・港湾での鋼矢板関連案件も季節的に出件が見込まれ、おおむね昨年並みの需要規模になるとみている」

――自社の生産状況と今後の見込みは。

 「足元、ほぼすべての品種でフル生産が続いている。自動車・産機などの実需が旺盛な中、下期以降も薄板、特殊鋼棒線を中心にタイトな状況が続く見通し」

 「特に特殊鋼棒鋼は日々のデリバリーにおいてもひっ迫した状況にある。当社として一層の生産安定化、能力対策を進めるが、個別には納期調整のお願いをせざるを得ない局面も発生し得るため、迅速・丁寧な対話を徹底していきたい」

――名古屋支店の取り組み課題は。

 「需給ともにタイト感が増しており、価格改定の機は熟した。主原料以外の副原料など鉄鋼メーカー共通のコストアップ要因の顕在化や、設備高齢化に伴う設備投資が必要な中で、使用価値に見合った再生産可能な価格レベルを実現することが大きな課題。お客様と丁寧に対話し、引き続き真摯に取り組んでいく」

――次世代自動車など、各需要分野では大きな動きが出てきているが。

 「鉄のメリットを生かしたソリューション提案を進めていく。自動車分野では、加工プロセスを含めたさらなるハイテン化による軽量化ニーズへの対応や、電動化への対応など、未来の車づくりにおける鉄の貢献代は非常に大きい」

――建築・土木分野では。

 「愛知県など学校建築における鉄骨造(S造)化の取り組みや、国土強靭化対策としての施工性・経済性に優れたハット型鋼矢板のさらなる採用促進など、当社グループ全体の総合力を結集し、省人化・省力化を実現できる工法・鋼材商品を提案し実績に結び付けたい」

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