相続が発生したら火災保険の名義変更はどうするの?

相続が発生した場合に、火災保険にも名義変更(権利譲渡)の手続きが必要です。しかし意外とあっさり手続きできるケースと書類を整えるのに苦労するケースの火災保険契約があります。

相続手続きが済んだら火災保険の名義変更が必要

火災保険には色々な手続きがあり、相続発生の際の名義変更もそのひとつです。物件の所有者が死亡すると相続が発生し、最終的にはその物件の所有者は相続人が変わりますから、名義変更の手続きが必要になるわけです。今回は相続が発生における火災保険の名義変更の手続きについて解説します。

火災保険と契約者、被保険者、所有者

最初に火災保険と契約にかかわる人について説明しておきます。

■契約者:保険契約の当事者で契約をして掛金を支払う人です。

■被保険者:火災保険の補償を受けることができる人です。つまり火災保険(建物)では、物件の所有者になります。契約時に指定しなければ契約者と同じ人になります。

補償を受ける人(被保険者)が所有者であるというのは、物件の所有と関係ない人が契約できたら、火災で全焼して保険金を貰った方がよくなってしまうからです。

契約者と被保険者が同一のこともあれば、そうでないこともあります。なお建物が親と子の共有名義などの場合、被保険者はその親と子になります。火災保険の契約や建物の所有者に関することはこれが前提になります。

火災保険の通常の名義変更

どんな保険契約でも契約期間中に契約内容に変更が生じることがあります。火災保険も同様で、住所変更や銀行引落口座の変更、保険目的の追加、増額・減額など様々です。名義変更についてもそうした手続きのひとつです。物件の所有者が変わり、契約者や被保険者の変更をすることを「権利譲渡」といいます。

名義変更(権利譲渡)は契約者死亡による相続のみで起こるわけではありません。贈与など別な事由でも発生し、珍しい変更内容ではありません。但し、相続による火災保険の名義変更(権利譲渡)は、契約者等が死亡していて契約者本人が自分で書類を作成することができない点が大きく違います。

名義変更していないと事故で火災保険は支払われないの?

また、相続の発生時に火災保険の名義変更手続きをしていないと保険金は支払われないかというと、そんなことはありません。そもそも契約そのものに不備があるわけではないからです。

保険金は法定相続人には支払われます。但し、スピーディに支払いになるかというとやはり手続きが必要になるので、早めに手続きするのがいいでしょう。

その他、火災保険契約が銀行引落の月払いになっていて、口座振替不能をそのままにしておくと一定期間後に契約が不払い解除になります。口座振替不能の契約については保険会社もほったらかしにはしませんが、気をつけておきましょう。

遺産分割が済んで登記簿上の所有者が変わったら火災保険の被保険者(必要があれば契約者も)を変更する必要があるのです。

火災保険の契約者(被保険者)死亡での名義変更

相続時の火災保険の名義変更はどのように手続きすればいいのでしょうか。一般的には「火災保険契約内容変更届出書」に必要事項の記入等で処理は済みます。この書類は火災保険のあらゆる契約内容を変更する際に使われます。

名義変更には比較的簡単にできるケースとそうでないケースがあります。これは簡単なケースの場合です。この場合に条件がひとつあり、契約している火災保険契約が「掛捨型」であることです。逆に「積立型」の火災保険で相続発生時に名義変更する場合には少々面倒です。

相続時の積立型火災保険の名義変更手続き

積立型の火災保険の場合、積立てられているお金があるため、これが相続財産にあたります。名義変更をした場合、契約が満期になれば満期返戻金が払い戻され、解約すれば解約返戻金が支払われるからです。

そのため相続発生に伴う積立型の火災保険の名義変更には原則、相続人の承諾が必要です。相続人の数などによって必要な書類は変わってきますが、保険証券や印鑑証明書・実印、戸籍謄本、返戻金を受け取る場合、その人の本人確認書類等が必要になります。

身内が死亡していますから慌ただしいでしょうが、特に積立型の火災保険であれば早めに保険会社に連絡・相談しておきましょう。いまは積立型の火災保険は主流ではありませんから、該当する人は少ないでしょうが覚えておいてください。

(文:平野 敦之)

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