【関西地区厚板溶断加工大手・菰下鎔断の展望】〈菰下千代美社長に聞く〉M&Aや工場移転など積極的に事業展開 事業拡大に対応、人材育成にも注力

 関西地区厚板溶断加工大手の菰下鎔断(本社・大阪府貝塚市、社長・菰下千代美氏)は、葵産業のグループ化や子会社・井上金属工業の本社工場移転、さらには菰下鎔断本社工場の老朽化更新など、近年、積極的な投資を実施・計画している。これらの投資の狙いや今後の展望などについて菰下社長に話を聞いた。(宇尾野 宏之)

――薄板を扱う葵産業をグループ化したのは?

菰下鎔断・菰下千代美社長

 「昨年7月ごろから話が始まり、3月1日に全株式を取得した。溶断業の当社とは分野が違うが、東南アジア向けを中心とした貿易部門に将来性を感じた。内需が縮小する中、当社も海外に目を向ける必要があるが、海外事務所がなく、輸出実績もほとんどない。こうした中、昨年、グループ企業『鋼管ガラス』の製品が日系ユーザーの海外進出という形で海外プラントに採用された。鋼管ガラスは鋼管内をガラスでコーティングし、耐腐食性を高めたもので、化学・食品プラントでよく使われている。日本でも製造できるメーカーは2社程度しかないため、当社鋼管ガラスのニーズは海外にもあるのではないかと考えている。葵産業さんにはこれまで培った海外におけるブランド力がある。これを生かし、ニーズを探っていくとともに、将来的には溶断業で海外進出する足掛かりになってもらえればと期待している。ただ、山下隆三社長に経営していただくので、基本的には何も変わらない」

――14年6月にグループ化した溶断工場・井上金属工業の現状は?

 「加工量は月500トン程度で、当社グループになってから多少増えた。ただ、母材の調達はグループでするようになったので、購買力は向上している。また、グループ・ミーティングも毎月開催しているため、営業・加工技術に関する情報力は高まっている。ただ、現工場周辺は宅地化が進み、事業継続のためには移転を検討すべき状態にあった。こうした中、同じ尼崎市内にある工業地域の用地約3300平方メートルを取得できた。これから移転作業を進めたい。老朽化設備の更新のほか、溶断工場に必要な設備も導入しなければならない。年内までに移転作業を完了する予定だ」

――人材教育も課題です。

 「近隣地を取得し、研修棟や託児室など福利厚生施設の建設も決めた。グループ企業も増え、こうした企業を運営できる人材が必要になっている。そのために研修棟の建設を決めた。本社での中間管理職の育成も進めなければならない。女性も含め、これからの当社を支えていく人材を頑張って育てていきたい」

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