「湯の町」感じる玄関に 温泉楽しむ“手湯”新設 湯河原駅前広場の改修完了 

 湯河原の玄関口が「湯の町」の風情を醸し出す姿に生まれ変わった。2年前から工事が続けられてきたJR湯河原駅前広場(湯河原町宮下)の改修がこのほど完了。温泉の温かさを肌で感じられる足湯ならぬ「手湯」が設けられ、駅前には湯煙が上がる。1日は完成式典が行われ、設計を手掛ける建築家の隈研吾さん(63)らとともに町民らが祝った。

 町によると、改修事業は屋根の老朽化などが理由で、総事業費は国の補助金を含めて8億2千万円。2015年9月に着工し、今月3日に供用を開始した。

 設計は、20年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の設計も担う建築家の隈さん。上屋がスギの屋根とガラス波板の勾配屋根の二重構造の大屋根になり、ヒノキや御影石製の手湯(長さ約5・4メートル、幅約70センチ)には地下に埋められた温泉管から地元の温泉が流れる。

 タクシー・バスの乗降場所も約2倍に拡幅(約15メートル)され、利用者や観光客らにも配慮している。

 完成記念式典に参加した隈さんは「木の香りのする、温かく優しい風情のある駅にしたかった」と、ふんだんに木材を使った理由を説明。「湯河原の文化の中心に温泉がある」とし、手湯を設置したことについても語った。

 町内のゴルフ場を利用していた父の東馬さんに連れられ、小学生のころから頻繁に町を訪れていたという隈さん。「湯河原は昔から好きで、自分の町のように懐かしい場所。また縁ができてうれしい。皆に楽しく使ってもらえたら」と笑顔で話した。

 記念イベントとして、地元商店街による市場が開かれたほか、伝統芸能「湯河原ばやし」などの演奏も披露された。冨田幸宏町長は「利用者の集いの場として、新たな役割を果たすと期待している」とあいさつし、夫婦で手湯を楽しんだ伊勢原市の主婦久保孝子さん(50)は「とても気持ちいい。駅前広場に初めて来たが、とてもきれい」と声を弾ませていた。

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