連日の「性上納」強要に「串刺し拷問」…北朝鮮が生んだ「本物のワル」たち

北朝鮮は、国際社会による経済制裁によって、外貨稼ぎに四苦八苦している。こうした中、北朝鮮の秘密警察や朝鮮労働党は庶民がタンス預金として貯めていた外貨を絞り取ろうと躍起になっている。

韓国の大手紙、朝鮮日報は、北朝鮮当局のあこぎな手口について次のようなエピソードを伝えている。

北朝鮮の秘密警察である国家保衛省(以下、保衛省)の本来の任務は、国民の一挙手一投足を監視し、体制不安の芽を徹底的につぶすことだ。しかし、貧乏国家・北朝鮮の一部署であることから、予算は少ない。それだけでなく、逆に国家に上納金を納める義務も負っている

その上納金は、拷問で顔面を串刺しにするほどの比類なき暴力性を武器に、北朝鮮の富裕層から一般庶民に至るまで、一部の超特権階級を除くあらゆる人々から収奪するのである。いわば「恐喝ビジネス」である。

北朝鮮の情報筋は朝鮮日報に対し、「国家保衛省が最近、各道・市・郡の保衛局(保衛省の地方組織)に毎月一定金額のドルを上納するよう外貨稼ぎのノルマを割り当てた」と証言している。ノルマは道の保衛局の場合、毎月50万ドル(約5,640万円)、市・軍保衛局の場合、5万ドル(564万円)、里(行政区分の一つ)の保衛局は5千ドル(56万円)を納めなければならない。

とりわけ、中国、ロシアと隣接する国境地域には、より多くのノルマが課される。

上納金の指示に基づき、各地域の保衛局は、中国など海外出張に出かけた住民1人当たりにつき、無条件で500ドル(約5万6千円)を徴収する。外貨稼ぎのビジネスマンや華僑からは、国境出入許可証を出す条件で金を受け取るという。

つまりはワイロの強要だが、こうした話は北朝鮮では珍しくない。保衛省と並ぶ治安機関である人民保安省(警察)のある幹部は、覚せい剤の密売、密輸に目をつぶり、その代価として巨額のワイロを受け取っていたぐらいだ。

この幹部はワイロだけでは飽き足らず、覚せい剤の運び屋をしていた20代と30代の女性を逮捕し、2人の罪を見逃す代償として、連日、性上納(性的接待)を強要しているというのだ。実にあくどい手口だが、このような女性に対する露骨な人権侵害は国連の人権理事会でも非難の対象となっている。

また、こうしたあくどい幹部に限って、上役にワイロを渡すなどして買収し、何重にも安全網を張っている。民主主義のまったく存在しない閉鎖された独裁体制のなかで、こうした抜け目のない「本物のワル」が出てくるのは必然なのだろう。

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