「福岡発 売り子名鑑」メンタル強いストイック女子、自己最高は200杯 

球場の新たなエンターテインメントとなっている「売り子」。美女どころといわれる福岡のヤフオクドームで働くアサヒビール、キリンビールの両メーカーの売り子を不定期連載で紹介している「福岡発 売り子名鑑」の第28回をお届けする。これまでに紹介した売り子も含めてお気に入りを見つけ、今季も残りわずかとなった中で、スタジアムでの楽しみの1つとなれば、幸いだ。

キリンビールの「めぐ」さん【写真:福谷佑介】

1年目はノルマ30杯も売れず、毎試合辞めることを考えたが… 

 球場の新たなエンターテインメントとなっている「売り子」。美女どころといわれる福岡のヤフオクドームで働くアサヒビール、キリンビールの両メーカーの売り子を不定期連載で紹介している「福岡発 売り子名鑑」の第28回をお届けする。これまでに紹介した売り子も含めてお気に入りを見つけ、今季も残りわずかとなった中で、スタジアムでの楽しみの1つとなれば、幸いだ。 

 第28回はキリンビールの「めぐ」さんだ。 

 1年の浪人生活を経て、現在は大学4年生の「めぐ」さん。今シーズンは就職活動と学生生活、売り子の仕事を並行してこなし、ハードな日々を過ごした。「就職活動中のメンタルが、売り子をやっている時にも出てしまっていました。お客さまにも『暗いよ』と言われたりしました」。苦労の甲斐もあって、めでたく就職先も決定。残り少ない学生生活、ラストイヤーとなる売り子生活に奮闘している。 

 小学生の頃に、前身のダイエーのファンだったという彼女。大学受験を控えた最中、テレビで特集された売り子の姿を見て、この世界に興味を抱いた。「一見華やかに見える仕事だけど、すごい努力をしていて、自分との戦いで、すごく格好いいなと思ったんです。スポーツみたいだし、野球も好きだったのでやりたいと思いました」。大学入学を機に、売り子生活をスタートさせた。 

 今季が4年目。1年目は苦労しかなかったという。「最初の頃は全く売れませんでした。同期の中でも最下位、エリアの中でも最下位、ノルマとされる30杯も越えませんでした。毎試合辞めよう、次の連戦で辞めようと思いながらも、売り子が好きで辞められなかった」。 

 転機はやってきた。メーカーで行われた研修の場だった。「当時、ドームには伝説的な売り子さんがいらっしゃって、その先輩が色々と教えてくれました。ナンバーワンの先輩が教えてくれているのに、結果を出さないままに終われるわけがない」。ふつふつと燃え上がる感情があった。 

先輩の教えで開花、自己最高は200杯超え

 その先輩からの教えで印象深いものがある。「売り子はスタンド内で声を出して歩きますが『その時だけが本番じゃないよ』と。『常にお客様に見られている存在だから、コンコースを歩いている時も、5回裏にやるダンスの時も手を抜いてはダメ。ビールを販売することばかりを考えるのではなく、売り子というものになるということを考えていこう』と」いうものだった。先輩の教えを基に、試行錯誤を重ね、自己最高は200杯を超えた。 
  
 陸上だけでなく、書道では師範代の腕前を持つ「めぐ」さん。「自分を追い込むのが好きなんです。メンタルは人一倍強いと思います」と自ら言うほどのストイック女子だ。小学生の時は、学校内の音楽発表会での伴奏者に憧れた。ピアノを習ったこともなく、家にピアノがあったわけでもない。「楽譜は読めたので、家で紙に鍵盤を書いて、それで練習しました。音はハーモニカとかリコーダーで合わせて。初めてピアノで音を出して演奏したのは、オーディションの時」。それで合格してしまうのだから、驚きだ。 

 一塁側内野席が持ち場の中心。キリンビールの中でも50円高く、売り子の数が限られる「一番搾り プレミアム」を担当することがほとんどだ。今季がラストイヤー。「50円高いのも関わらず、買ってくれる人に対して、おもてなし、接客でお返しできたらいいなと思いますし、4年間私から買ってくださったお客様に対して、ビールを売ることしかできないですけど、感謝の気持ちを何かお返しできたらいいなと。それを出していく1年のつもりでやってきました」。身長170センチの長身と白のシュシュ、金色の帽子が目印。集大成の時は、刻一刻と近づいている。 

「ほぼ毎試合、試合開始前から最後までスタンドにいますので、声をかけていただけるだけでも嬉しいです。一番搾りプレミアムはギフト限定で、なかなか飲める機会のないビールですので、ぜひ飲んでみて欲しいです!」 (福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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