東海地区の資源関連は、鉄スクラップ市場の国内需給は比較的引き締まっているが、足元のグローバルマーケットの様子は異なってきている。特殊鋼専業メーカーや地区電炉メーカーの生産は堅調。特に自動車支えとなる特殊鋼は非常に高い生産レベルを維持しそうだ。また、鋳物業などにも繁忙感が出ているが、自動車由来の鉄スクラップはハイテン鋼などの比率も高まり、選別も厳しくなっている。
為替環境が比較的安定しているため輸出産業にとっては追い風だが、原料などの輸入には逆風環境ともいえる。相対的に国内メーカーの製造コストは下がらず、逆に物流コストなどの上昇もあって販価は上げ方向になる。
地区の鉄スクラップ市場を見ると、当面、旺盛な原料需要が続こう。
当地区では下期以降、物流拠点をはじめ大型案件の建設が控える。2020年度以降、全面開通の予定で東海環状自動車道の整備が急ピッチで進められているなど、建築分野は回復局面と見ていい。地区電炉各社は下期にかけ増産を計画。電炉メーカーの鉄スクラップ需要量は足元、約45万トン強と9月比で約5%上回っている。
懸念材料は「市況」だ。6月末、中国政府が主導して同国の地条鋼生産が全廃された。影響で、東南アジア域内への中国産ビレット輸出は急減。国産スクラップへ需要がシフトし、輸出価格は反発した。
今年はじめにH2=2万7千円だった電炉実勢買値(高値)は、ピークとなる9月には3万3千円にまで上昇した。
しかし、9月下旬ごろから輸出市況は一変する。供給過多で米国産トルコ向け鉄スクラップ相場が軟化。中国向けの鉄鉱石、原料炭スポット価格も値下がり。これらの影響で、国産スクラップの急上昇に嫌気していた韓国や東南アジアのユーザーが買いを見送るなどして、新規輸出が成約しにくい状況になった。
9月末、韓国大手ユーザーが国産スクラップの調達価格を1千円引き下げたため、当地区の電炉も買入値を引き下げた。
今月10日時点で、H2高値は3万1千円。今後、海外ユーザーが国産原料の調達意欲を高める好材料はあまりない。輸出価格がさらに下押しする可能性は否定できない。
さらに深刻なのは、鉄スクラップの発生減少による集荷競争の激化だ。
製造業を中心とする生産活動は回復局面だが、製造業の海外移転も進んでいる。市中発生は年々縮減している。
「集荷のためには同業他社と同程度の買値を提示しなければ、持ち込み原料減を余儀なくされる」(直納問屋筋)など、ヤード業者は原料調達のため高値買いに走らざるを得ない。結果、不採算に拍車がかかる。昨夏、地区老舗ヤード業者のかね丈商店(名古屋市)が経営破たんしたのは記憶に新しいところだ。
競争原理は当然働くが、鉄スクラップ業が薄利スパイラルから抜け出すためには、各社が足元の相場に見合った適正買値での調達を心掛けることだろう。
銅・黄銅系スクラップは上期同様「入荷増・出荷不振」の状況が続きそうだ。
7月以降電気銅建値が70万円を超え手持ち在庫を抱えていた回収業者の持ち込みが増加。春先までの不足感と異なり、足元では荷余り感が生じる品種もある。
現在でも銅建値は70万円台後半で高位安定。扱い筋は「在庫漸増と相場反落リスクから、原料購入を必要最低限まで抑制」(問屋)している。
一方、ユーザーである伸銅メーカーは、需要が好調で高操業を継続、原料需要も高まっている。しかし、建値が上昇しスクラップに割高感が生じ、生産効率優先で溶解しやすい地金を使用する傾向が目立つ。全体としてスクラップの使用、購入を抑える傾向にある。
メーカー生産は増える見通しだが、今後も地金使用がメーンとなる状況が続きそう。スポットでの販売もさえない。
銅建値が現行値を維持する一方、需給が一段と緩み市況は下値寄りで推移する可能性が高い。