【インドネシアに進出する日系鋼管関連企業 ジャカルタ近郊の工業団地から(1)】〈工業団地・インフラ整備〉車など日系企業進出に対応 インフラ整備なお道半ば

 インドネシアは世界第4位の人口約2億5千万人を抱え、1万以上の大小の島々で構成される。東西5100キロは、米国の東西に匹敵する。人口の約6割はジャワ島に集中。首都ジャカルタ近郊には工業団地が多数隣接しており、四輪・二輪メーカーをはじめ多くの日系企業が進出している。今回、現地に拠点を構える日系の鋼管・加工メーカーや管材商、また進出を目指し市場調査を行っている鋼管加工会社を現地で取材。需要分野や販売品種・サービスなどさまざまな角度から各社の事業展開の動向を探る。(後藤 隆博)

 ジャカルタ市内から東側に伸びるチカンペック高速道路沿いの同市から半径70キロ圏内には、日系商社やゼネコンが開発した多くの工業団地が隣接する。

 ジャカルタから27キロともっとも近い工業団地「MM2100」は丸紅系。三菱自動車やスズキなどが製造拠点を構える。双日系のGIIC、カラワン地区にある伊藤忠商事系のKIIC、住友商事系のEJIP、豊田通商のTT Techno Park、大成建設のインドタイセイ(INDOTAISEI)などが代表的な工業団地。また、デルタシリコンのように日本の中小企業を対象としたレンタル工場「Japanese SME`s Center」などを備えた工業団地もある。

 工業団地は整備されているが、インフラ整備は遅々として進んでいない。慢性的な渋滞は、もはやインドネシア名物となっている。現在インドネシアでは二輪の販売台数が年間600万台前後、四輪が同100万台前後と見られているが、道路の整備が追い付いていない。ジャカルタでは車のナンバープレートによって市内に入ることができる時間帯を変えているが、目立った効果は上がっていないようだ。

 現在、ジャカルタ東のブカシ(Bekasi)、西のセナヤン(Senayan)、南のボゴール(Bogor)、西北部郊外にあるスカルノ・ハッタ国際空港などを結ぶ全長130キロのモノレールLRT(Light Rail Transit)計画が進行中。ジャカルタ市内ではジャカルタMRT(Mass Rapid Transit)という地下鉄の都市高速鉄道の整備が進む。さらにチカンペック高速道路の高架工事も計画されているという。完成すれば人やモノの流れが劇的に変わる可能性もあるが、どのプロジェクトも完工まではまだしばらくかかりそう。逆に現地では「工事による車線規制などで、さらに渋滞がひどくなった」との声もある。

 もう一つ慢性的な渋滞の遠因と指摘されているのが、港湾の問題だ。現在インドネシアは、ジャカルタ北部の「タンジュン・プリオク港」が唯一と言える国際港。日系の工場群で使用される資機材などを船で輸入する場合、ほとんどが同港を介する。同港で荷揚げされる物資の約3割が、前述のジャカルタ東側にある各工業団地向けと言われる。現在、ジャワ島東端のカラワン近郊に港を造成する計画があり、東西に国際港ができれば工業団地への渋滞も緩和されるのではと期待されている。

 現在、インドネシアの1人当たりのGDPは3千~3500ドル。年間経済成長率も5%前後を維持する。一般的に1人当たりのGDPが3千ドルを超えると車社会に変わる傾向にあると言われるが、インドネシアはまだ二輪社会。今後は四輪の需要増が見込まれるものの、一般庶民には依然としてぜいたく品の部類に入るようだ。

 二輪、四輪のほか、インフラ分野関連などでさまざまな市場成長のポテンシャルが見込まれるインドネシア。だが同時に現地に拠点を構える日系企業は、宗教上の問題、労働者にとって非常に手厚い制度となっている労働組合法(新労働法・03年3月公布)、一部で毎年約10%ずつ上昇している最低賃金の問題など、多くの課題に対応しながら操業を続けている。次回からは、各企業のそうした課題への取組みや現地での営業戦略などを個別に見ていく。

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