【新日鉄住金グループ企業の〝今〟(2)】〈日鉄住金建材〉多様なニーズに素早く対応、内需捕捉し新商品拡販

 日鉄住金建材は新日鉄住金誕生に先駆け2006年に日鉄建材工業と住友金属建材が統合して発足。建築・土木分野の鉄鋼を中心とした建材製品を展開する中核子会社としてその存在感を高めてきた。統合により住金建材・尼崎工場の品種を日鉄建材の拠点に集約し既存工場の稼働率が向上。また、日鉄建材が保有していなかったポールや仮設製品などが既存事業と高いシナジー効果を発揮したほか、両者の技術の融合により製造技術の一層の進化も実現するなど製造・販売・技術基盤の厚みを増した。

 これまでには苦難もあった。08年のリーマン・ショックの打撃から立ち直りかけた11年には東日本大震災が発生。津波で壊滅的な被害を受けた仙台製造所の存続が危ぶまれたが、驚異的なスピードで復旧し改めて結束も強まった。その後、小松川鋼機の商権譲受や共英建材工業の経営権取得などにより国内事業を拡大。16年には日鉄住金コラムを統合し8事業部門体制となった。現在、土木の事業環境は「需要が想定以上に落ち込み、統合当時よりもはるかに悪化している。(住金建材との)統合がなければ乗り越えることはできなかっただろう」と中川智章社長はその統合効果を実感する。国内事業の拡大を図る一方で海外展開にも着手。中国やベトナム、台湾などで事業を展開するなどその幅を広げてきた。

 足元の事業環境は「販売数量は建築・土木共に明らかに増加している」という。しかし、母材価格や輸送費の上昇は深刻で「価格転嫁を打ち出しているが、収益的に依然課題を残している」。不退転の決意で販価の引き上げに注力し、新日鉄住金の連結収益への貢献を着実に果たしたい考え。さらに、新日鉄住金への貢献という意味では内需を手堅くフォローして付加価値や新機能を付加した新商品を拡販することで、母材のホットコイルの販売増や用途拡大にも寄与している側面も大きい。特に「ロールコラムは圧倒的なシェアでナンバーワンポジションにあるほかパイオニアでもある。軽量形鋼も一定のポジションにあり、ガードレールなどの道路商品、ダム、法面保護工法などもトップシェアを維持している」と自負する。

 これまで、社会産業インフラに欠かせない高機能の製品を供給して日本の安心・安全に貢献してきたが「世の中の困りごとを解決していく企業が目指す姿」。その言葉通り、足元の建設労働者不足に対応すべく『NDコア』や『アクロスデッキ』などの省力化製品を矢継ぎ早に投入。さらに、〝困りごとを解決する〟という観点からシカ被害対策システム『ユクリッド』も誕生した。今後、東京五輪関連なども含め当面高水準の内需が期待できる環境にあり「足元は需要にしっかり応える生産体制を構築・維持していく。これに加えて先々の需要減に備えた動きも必要。顧客のニーズに応えた製品を提供することでポジションを上げていくことが生命線だ。当社が恵まれているのは省力化や環境対応などニーズが読みやすい点で、どれだけスピード感を持って応えられるかが勝負となる。まい進していきたい」と成長戦略を描く。(このシリーズは毎週水曜日に掲載します)

企業概要

 ▽本社=東京都江東区 ▽資本金=59億円1250万円(新日鉄住金100%)

 ▽社長=中川智章

 ▽売上高1125億円(17年3月期)

 ▽主力事業=建築・土木分野における鉄鋼製品を中心とした建材の製造・販売

 ▽従業員=1358人(連結、17年3月末時点)

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