いよいよCS開幕 藪恵壹氏が占う「阪神にとってDeNAは一番嫌な相手」

OBとして、解説者として、今季の阪神を間近で見続けてきた藪恵壹氏は、「今、阪神にとってDeNAは一番嫌な相手じゃないですかね」と話す。

阪神OBでの藪恵壹氏【写真:岩本健吾】

今季甲子園で無敗のDeNA今永、ウィーランド、濱口の先発トリオ

 日本プロ野球は10月10日にペナントレース全日程を終え、14日からクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージが幕を開ける。パ・リーグは2位西武と3位楽天がメットライフドームで、セ・リーグは2位阪神と3位DeNAが甲子園で対戦する。

 ファーストステージは3試合制で行われ、勝利数が多いチームがファイナルステージへコマを進める。ただし「1勝1敗1分」あるいは「0勝0敗3分」と勝敗が五分になった場合は、レギュラーシーズン2位のチームが勝ち抜けるアドバンテージを持つ。そのため、2位は2勝もしくは1勝1分で勝ち抜けが決まるが、3位は2勝が必須条件となる。

 OBとして、解説者として、今季の阪神を間近で見続けてきた藪恵壹氏は、「今、阪神にとってDeNAは一番嫌な相手じゃないですかね」と話す。

「巨人が来るよりDeNAが嫌だと思いますよ。特に、甲子園では今永、ウィーランド、濱口がいい。打線を見ても、ロペス、筒香、宮崎と並ぶ。しかも、1番を打つ桑原も長打もあるし、嫌な打者ですよね。今季の対戦成績は、14勝10敗1分で阪神が勝ち越してはいるものの、最後に甲子園で2連敗しているし、決して印象はよくないと思います」

 藪氏が指摘する通り、DeNAがCSで先発起用するであろう今永、濱口、ウィーランドは、3人合わせて今季甲子園で7試合を投げたが、6勝無敗と負けなしだ。特に、今永は3試合で3勝無敗、防御率0.48と相性抜群。ウィーランドも2戦2勝で防御率1.76の成績を誇る。

 阪神のチーム打率を見ても、今季甲子園のDeNA戦は打率.212と打ちあぐね、セ5球団で最も苦手としていることが分かる。主軸の成績を見てみると、福留はウィーランドに対して5打数無安打、今永は9打数2安打、糸井はウィーランドに4打数無安打、今永に8打数2安打の成績。鳥谷は両者に対してそれぞれ打率.333と健闘しているものの、大山もウィーランドには無安打に封じ込められている。

 対戦成績は、阪神が14勝10敗1分で勝ち越していながら、甲子園に限定すると6勝7敗で1つ負け越し。阪神は敵地でのDeNA戦は圧倒的な強さを見せるが、本拠地では苦労する傾向にあるようだ。

阪神のカギは「打線の奮起」と「3番手以下の先発投手」

 だからこそ、阪神にとってファーストステージ勝ち抜けのポイントになるのは、打線の奮起だという。

「打たないと勝てない。今年の阪神は、なかなか打順を固定できずに戦ってきました。それで2位なんてよく頑張ってるっていう人もいれば、固定できないから2位なんだっていう人もいる。現場にいる監督やコーチに言わせれば、固定したいけど怪我や成績不振で変えざるを得ないっていうジレンマがあると思うんですよ。

 僕は、打線のカギを握るのは糸井だと思っています。最近メジャーでは、2番に強打者を置く傾向にあるけど、糸井も2番の方がいいと思うんですよ。4番が左打者の福留だから、2番に同じ左の糸井を置いて、3番に右打者の大山か中谷。例えば、1番俊介、2番糸井、3番大山、4番福留、5番中谷、6番鳥谷、7番大和、8番捕手、9番投手で右左の流れが作れる。この並びは点が入りそうで、相手投手は嫌だと思いますね」

 一方、DeNAのラミレス監督は、甲子園では“2段構え”の打線を組む巧さがあるという。

「ラミレス監督は、たまに打線を入れ替えて、2番に梶谷を起用することがある。でも、それは大体狭い球場の時ですね。甲子園では梶谷を6番か7番に入れてくる。狭い球場の場合、筒香、ロペス、宮崎はホームランで走者を一掃する可能性があるけど、広い甲子園では走者が残るから、それを6番梶谷が返す。特に、9月最後の連戦では、この打順がハマりました」

 甲子園でDeNA打線に打ち込まれている印象のある阪神投手陣だが、それでも本拠地でのDeNA戦は防御率3.00と決して悪くない。今季のチーム防御率3.29、救援防御率2.64はセ・リーグでトップ。やはり、藪氏が指摘する通り、打線の奮起が勝敗のカギを握ることになりそうだ。

 それでは、阪神投手陣のカギは何か。それは「3番手以降の先発投手」だという。

「先発ローテは秋山、メッセンジャーの順でしょう。問題は3番手以降をどうするか。ファーストステージを勝ち抜けたとしても、日程的に1、2戦を投げた投手は、ファイナルステージの1、2戦では投げられない。そこに誰を入れてくるかでしょうね。候補としては小野、岩貞…ショック療法じゃないけど、藤浪を入れるのもあり。3番手以下が未知数っていう不安はありますね」

 いろいろな条件やデータを総合すると、DeNAがやや有利に思えるが、阪神は何よりも本拠地開催でファンの声援を一身に受けられるアドバンテージを持っている。阪神が地の利を生かすのか、DeNAが相性のよさを生かすのか。決戦は14日に幕を開ける。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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