山崎武司氏が分析「楽天が雄星を乗せてしまった」 楽天が巻き返すカギは? 

パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)・ファーストステージ初戦は西武が楽天に10-0で快勝した。先発の菊池が9回5安打9奪三振1四球無失点の完封。打線は炭谷が3安打2打点、中村は3ランを含む4打点と爆発した。一方、楽天はエース則本が4回7安打7失点とまさかの炎上。打線も沈黙し、初戦を完敗で落とした。 

2009年に楽天を初のCS出場に導いた山崎武司氏【写真:岩本健吾】

西武が楽天に大勝、完封の雄星は「最高潮ではなかったけど、素晴らしいボールもあった」 

 パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)・ファーストステージ初戦は西武が楽天に10-0で快勝した。先発の菊池が9回5安打9奪三振1四球無失点の完封。打線は炭谷が3安打2打点、中村は3ランを含む4打点と爆発した。一方、楽天はエース則本が4回7安打7失点とまさかの炎上。打線も沈黙し、初戦を完敗で落とした。 

 中日、オリックス、楽天で通算403本塁打を放ち、2009年には楽天を初のCS出場に導いた野球解説者の山崎武司氏は、「楽天が雄星(菊池)を乗せてしまった」と、この試合を分析した。 

「雄星は立ち上がりは緊張感があったよね。楽天に(ペナントレースで)8連勝しているとはいえ、CSになれば関係ない。気持ちも変わる。立ち上がりは少し緊張していて、ボールが先行していたから、1、2回は硬いなと思って見ていた。 

 でも、ああいういいピッチャーは回を追うごとに尻上がりにいいピッチングになっていくもの。楽天が雄星を良くしてしまった。3回であの展開になってしまうと。中盤には余裕が出てきて、最高潮ではなかったけど、ところどころで素晴らしいボールもあった。楽天が雄星を乗せてしまったよね」 

 西武は初回に浅村の2ランで先制すると、3回には一挙5点を奪取。楽天は立ち上がりに「硬い」雄星を捉えられず、逆にエース則本が序盤で大量失点を喫した。点差が余裕を生み、雄星の快投を引き出す結果となった。では、試合が一方的にならないように、3回に崩れた則本を早めに代えるという選択肢は楽天ベンチになかったのか。 

難しかった則本の代え時「もし代えても、楽天に則本以上のピッチャーはいない」 

「5点がいいところかなと思ったけど……。負ければ終わりのCSだから、則本の今までの実績や力を考えれば、100球くらいまでは、という思いもあったのかもしれない。もし代えても、楽天に則本以上のピッチャーはいない。あれだけのピッチャーだから。3、4番手ではなく、エースなので。立ち直ってくれるという期待もあった思う」 

 山崎氏も、難しい状況だったと明かす。ただ、則本の調子自体は、やはりよくなかったと指摘する。それは、初回に浅村に2ランを浴びた場面で感じ取れたという。内角高めの147キロの直球をレフトスタンドに運ばれた一発は、本調子の則本であれば見られなかったはずだ。 

「真っ直ぐが走っていなかった。初回から大丈夫かなという感じだった。力感もなかったし。則本の投げ方としては躍動感もなかった。浅村へのインハイを捉えられて、もっていかれたけど、あれは苦しいなと。(この日の)則本は良くないのかなと感じたよね」 

 そして、本調子ではない楽天のエースに対して、西武打線のボールの見極めも光っていたという。 

「西武打線は選球眼がよかったよね。アウトコースの際どい球に手を出してこなかった。(球審の)手が上がるかなと言うボールをちゃんと見ていた。逆に言うと、ああいうボールを見極められるということは、則本の球の切れ、スピードがいつもより良くなかったのかなと思うね。 

 一番のキーになったのは炭谷。3回の左中間への2点タイムリーで試合の流れが決まってしまった。その前の打席で低めへのスライダーをセンター前に運んでいたけど、タイムリーの場面ではそれとは全く違う高めに抜けたスライダーを打った。則本は決めにいかないといけない場面で全部甘くなってしまっていたよね」 

 西武打線の良さ、則本の不調が重なり、大差のゲームになってしまった。

第2戦のキーマンは岸「楽天は“先行逃げ切り”で行くしかない」 

 流れは完全に西武。では、楽天が2戦目を取り返すために必要なことは何のか。山崎氏は「選手がどう思うか。過去のデータを見ると、CSファーストステージは初戦を取ったほうが断然有利となっているけど、そうとは限らない。楽天としては、最も苦手な雄星はもう出てこないわけだから。楽しくやるというのは無理かもしれないけど、思い切ってやるしかない。やはり、一番大事なのは気持ちだから」とした上で、キーマンに古巣のマウンドに上がる第2戦の先発・岸の名前を挙げた。 

「オレは(鍵は)ピッチャーだと思う。岸にかかっている。ペナントレースでは最後の2か月勝っていないけど、ゲームを作れるピッチャー。CSになって、終盤の嫌なイメージはリセットして来ると思う。完全アウェーの雰囲気の中で投げるかもしれないけど、丁寧にというより思い切っていってほしい。丁寧に行こうとしすぎて、それが出来ないで打たれるのが一番つまらない。 

 初戦で打てなかったし、前半で点を取られてしまうと、勝てないなと思ってしまう。逃げ切られてしまう。シーソーゲームになれば、逆転もある。楽天としては“先行逃げ切り”で行くしかない。そう考えると、岸がキーマンになる」 

 まずは、岸がしっかりゲームを作り、打線の奮起を待つ。先発投手には厳しい戦いとなるが、山崎氏が言うように思い切りの良さ、そして我慢が必要なマウンドとなりそうだ。一方、西武の第2戦先発の十亀も今季は楽天戦で5試合登板、3勝1敗、防御率1.78と相性がいいだけに、2連勝で一気に決めたいはず。好勝負に期待したいところだ。 (Full-Count編集部)

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