【スチール缶リサイクル協会】16年度のリサイクル率、過去最高の93.9% 6年連続で90%以上

 2016年度のスチール缶リサイクル率(スチール缶リサイクル協会発表)は、93・9%と前年に比べ1ポイント上昇し、13年度と15年度に記録した過去最高(92・9%)を更新した。6年連続で90%以上を達成し、16年度から始まり、20年度を目標年度とする第3次自主行動計画に定めるリサイクルの目標値(90%以上維持)を満たした。

 スチール缶の消費重量が46万3千トン(15年度は48万6千トン)に対し、鉄鋼原料に再資源化された缶重量は43万5千トン(同45万1千トン)となった。スチール缶のリサイクル率は、資源循環システムの確立や高付加価値化や高品質化の進展、堅調な鉄スクラップ需要などを背景に高位で安定的に推移する。

 スチール缶をめぐっては、飲料用の分別や再資源化が広く社会に浸透し、全国で95%以上の自治体において分別収集の対象になっている。リサイクル活動においては官公庁に加え、一般の企業や市民の動きも活発で、地域や産官学の枠組みにとらわれない幅広い取り組みが好循環につながっている。

 16年の世界粗鋼生産は16億3千万トンと過去最高を記録した14年(16億7千万トン)には届かなかったものの、小幅ながら前年実績(16億2千万トン)を超える高水準に上った。日本でも1億500万トンと引き続き1億トンを越えており、国内で自給できる貴重な原料の一つとして鉄鋼需要を支えている。

 リサイクル率は、消費重量(出荷量から缶詰輸入量と空缶輸入量をプラスし、缶詰輸出量をマイナス)を分母とし、回収・再資源化重量(鉄鋼メーカーなどによる購入量からアルミ蓋重量と異物量をマイナス)を分子として算出している。

 分子の回収・再資源化重量においては、全国の電炉・高炉、鋳物のメーカーなどに対してスチール缶スクラップ(CプレスおよびCシュレッダー)の利用量を調査。全国の鉄スクラップ取扱事業者がシュレッダー処理したスチール缶スクラップがCシュレッダー以外の規格で再資源化され、製鋼原料として売却された量を調査し把握できた量に限って計上する。

 一連の調査を踏まえて得られる集計値を基に、スチール缶スクラップに含まれる飲料缶用アルミ蓋の重量や水分などの異物を除いて算出する。

佐伯康光理事長/使用済みスチール缶/安定的な資源循環に寄与

 私どもスチール缶リサイクル協会は使用後のスチール缶の散乱防止と環境美化、並びに再資源化を推進するために1973年に設立され、今年で45年目を迎えました。参加事業者は、スチール缶に係る鉄鋼メーカー3社・製缶メーカー3社並びに商社6社の合計12社で構成しております。

 昨年2回目の見直しが終了した容器包装リサイクル法は、国民・自治体・事業者がそれぞれの役割を果たすことにより、家庭から出るごみの容積比で約6割を占める容器包装廃棄物を資源として有効利用し、ごみの減量化を図るための法律ですが、当協会は、95年に施行されたこの法律に先駆けて、国民・自治体・事業者との連携協力のもと、容器包装リサイクル法の枠組みの基礎を築くとともに、持続可能な循環型社会構築に尽力してまいりました。

 その結果、消費者の分別排出・市町村の分別収集並びに事業者の再資源化体制が進展し、現在では使用済みスチール缶は安定的に資源循環が行われています。

 合わせて、地域での清掃活動や環境美化活動、集団回収活動などの自主的な取り組みも活発になされてきております。

 今後も当協会は、消費者・自治体・事業者の連携をいっそう深め、さらなる環境美化推進とスチール缶の資源循環推進を通じて持続可能な循環型社会構築に貢献してまいります。

16年度のリデュース率/7.7%の軽量化を実現

 2016年度のスチール缶のリデュース(軽量化)率は、基準年度の04年度比で1缶当たり7・71%(1缶当たり2・74グラム)の軽量化を実現した。20年度に04年度比8%の軽量化を目指す第3次自主行動計画に向けて関連する取り組みを継続する。

 1缶当たりの平均重量を軽量化の指標に充てる。基準年度(04年度)の35・5グラムに対し、16年度が31・7グラムと10・7%(3・8グラム/缶)の軽量になった。リデュース率の算出においては缶型構成比の変化による影響を差し引いた真水の部分をリデュース率に反映している。

 対象は、総生産数の86・2%を占める主要5缶型(160、200、250、280、350ミリリットル缶)。15年度にカバー率が80%を下回ったため、現在では主要4缶型に160ミリリットル缶を加えた新たな基準に沿って、第三者機関で集計調査を実施している。

 スチール缶リサイクル協会を含む容器包装の素材にかかわるリサイクル8団体は、05年12月に「3R推進団体連絡会」を結成。06年3月に公表した「事業者による自主行動計画」を踏まえ、スチール缶メーカーで構成する日本製缶協会は同年6月「スチール缶軽量化推進委員会」を立ち上げ、軽量化の取り組みを開始した。

16年度ポスターコンクール/小中高生対象、41点が入賞

 スチール缶リサイクル協会は、小中高生を対象に06年度から16年度にかけて、スチール缶のリサイクルをテーマにポスターコンクールを実施してきた。スチール缶をリサイクルする様子やリサイクルへの呼びかけを描いたポスターを募集し、資源リサイクルの大切さを理解してもらうのが狙い。

 16年度は、昨年11月にグランプリ1点と部門別最優秀賞4点、佳作36点の計41点の入賞作品と、学校団体活動賞1点を決定した。今年1月には協会関係者が学校を訪問し表彰を実施、入賞者に賞状と副賞を贈呈した。

 また修学旅行の研修活動などで協会を訪れる生徒に対し、スチール缶の製造からリサイクルについての授業を手掛ける。16年度は6校(郡山市立郡山第三中・大崎市立三本木中・盛岡市立城西中・海津市立城南中・府中市立第8中)、17年度は今年10月現在で6校(いわき市立泉中・鳥取市立高草中・富山市立西部中・津市立橘南中・みなべ町立高城中・海津市立城南中)に上る。

「清掃と美化の普及啓発」/今年で活動45年目

 スチール缶リサイクル協会が展開する「清掃と美化の普及啓発」が今年で45年目を迎える。使用済みあき缶の散乱防止と地域の美化促進を目的に、1973年4月から今年9月にかけて計359カ所・502回で実施。2016年度は山形県鶴岡市(5月30日、約1500人)▽山口県萩市(6月11日、約200人)▽横浜市(10月28日、約200人)の3都市、17年度は札幌市(6月24日、約80人)と福井市(9月30日、約500人)で地域と連携して取り組んだ。

環境イベントに出展/住民、事業者ら意識醸成に一役

 スチール缶リサイクル協会は、住民や事業者らの環境に対する意識を高めようと、地域の環境イベントに出展している。地方自治体や市民団体、鉄鋼関連企業をはじめとする事業者たちと協力して企画。2016年度はエコプロダクツ川越2016(7月、埼玉県川越市)▽子どもとためす環境まつり2017(9月、東京都中央区)▽エコプロ2016(12月)に出展したほか、会員企業の地域と連携してJFE西日本フェスタinふくやま(5月、JFEスチール)▽小樽市CAN―ARTフェスティバル(9月、北海製罐)▽ひめじ環境フェスティバル2016(9月、新日鉄住金)▽JFEちばまつり(10月、JFEスチール)▽JFE西日本フェスタinくらしき(11月、JFEスチール)▽東海秋まつり2016(11月、新日鉄住金)の各イベントに協力した。

 今年度はこれまでにエコプロダクツ川越2017(7月、川越市)と子どもとためる環境まつり2017(9月、東京都中央区)にに出展し、12月にはエコプロ2017年を予定する。会員企業の地域においてはJFE西日本フェスタinふくやま(5月、JFEスチール)▽小樽市CAN―ARTフェスティバル(9月、北海製罐)▽TKWorksフェスティバルinくだまつ(10月14日、東洋鋼鈑)で協力、今後はJFEちばまつり(10月22日、JFEスチール)▽JFE西日本フェスタinくらしき(11月、JFEスチール)▽東海秋まつり2017(11月、新日鉄住金)の各イベントを控える。

 協会では毎年、自治体や消費者団体からの要請を受け、清掃用のごみ袋やポスター、冊子、ノベルティなどを提供。地域の清掃活動や環境意識の向上を狙いに環境展などで広く支援している。

集団回収、環境教育などで社会貢献/42団体・小中50校を表彰

 スチール缶リサイクル協会は2008年度から、広く社会貢献の一環で支援事業を継続している。スチール缶の集団回収を実施並びに計画した地域の町内会や子ども会、老人会、PTAなどの各種団体と優れた環境教育に取り組む小中学校を表彰、支援しており、16年度は42団体と50校が対象となった。16年度の対象者については、今年1月に表彰式を開催した。

 17年度は、100団体以内に総額250万円、60校程度に600万円以内の支援を計画する。応募期間は6月1日から12月28日まで(到着分)。

製鉄所見学会を開催/小学生や消費者向け

 スチール缶リサイクル協会は、2009年度から小学生や消費者向けに製鉄所の見学会を開催している。国民における環境意識の向上や鉄鋼メーカーらによる事業者の環境に配慮したものづくりや環境活動を理解してもらう。

 16年度は、16年7月に慶應義塾女子高の37人、8月に保護者を含む東京都中央区の小学生23人が新日鉄住金君津製鉄所、17年1月に大正大人間環境学科の12人がJFEスチール東日本製鉄所・千葉地区を見学。今年度は7月に首都圏の小中高の教員8人がJFEスチール東日本製鉄所・千葉地区を訪ねたほか、同月に慶應義塾女子高の21人、8月に保護者を含む東京都中央区の小学生39人が新日鉄住金君津製鉄所を見学した。18年1月には大正大人間環境学科の約10人がJFEスチール東日本製鉄所・千葉地区に行く予定となっている。

スチール缶リサイクル協会概要

 ▽設立 1973年(昭48)4月17日

 ▽主な役員(敬称略)

 理事長 佐伯康光(新日鉄住金代表取締役副社長)

 副理事長 森泰治(東洋製罐取締役常務執行役員)

 副理事長 山口裕久(大和製罐取締役副社長)

 専務理事 中田良平(専任)

 ▽会員会社

 鉄鋼メーカー3社(新日鉄住金・JFEスチール・東洋鋼鈑)

 製缶メーカー3社(東洋製罐・大和製罐・北海製罐)

 商社6社(三井物産スチール・伊藤忠丸紅鉄鋼・メタルワン・JFE商事・日鉄住金物産・東罐商事)

 ▽設立目的 使用済みスチール缶の散乱を防止し、資源としてリサイクルを推進するための調査研究や指導、啓発広報などに取り組み、社会との協働実践を通して社会貢献する。

 ▽実績 家庭ごみの分別収集のシステムや地域一斉清掃活動を推進して社会に広め、容器包装リサイクル法制定に大きく関与。拡大生産責任者という政策的な手法を初めて取り入れた容器包装リサイクルのもと、これまで自治体が分別収集・処理保管したスチール缶の引き取りと再資源化の保証を最初に行った団体として広く活動している。

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