【現場を歩く】〈トーアミ・千葉工場〉国内最大級、溶接金網・フープ筋生産 伸線から加工まで一貫生産体制

 溶接金網最大手のトーアミ(本社・大阪府四條畷市、社長・北川芳仁氏)の千葉工場(千葉県白井市、工場長・竹野建二氏)は、溶接金網と高強度せん断補強筋(フープ筋)の生産に関して、国内最大級の工場だ。同社の溶接金網の市場シェアは約20%でトップ。また、フープ筋のシェアも業界トップと言われる。千葉工場は敷地面積が約4万平方メートル、従業員数が約50人で、白井第一工業団地に構える。今年で創業130周年を迎える同社を、関東圏から支える生産拠点を訪れた。(綾部 翔悟)

 千葉工場は1997年10月にワイ・エス・ケイを買収し、関東事業本部・千葉工場として設立したのが始まり。当時は、溶接金網のみを生産していた。その後、2000年3月に江戸川製線からの事業譲渡に伴い、千葉工場の隣接地や生産設備を取得。溶接金網の生産増強に加えて、フープ筋の生産も開始する。また江戸川製線の設備を活用し、同工場内での伸線加工能力を増強した。加えて拡充した土地を利用し倉庫機能を設け、現在では、倉庫に約5千トンの製品が在庫されている。そして工場には事業所が隣接しており、積算のチェックや製品状況など生産管理システムによって品質面と納期面を徹底して管理している。

 溶接金網は、コンクリートの補強材として土木建築の基礎・床・壁などさまざまな場所に使用され、建築物を縁の下で支えている。そのため、強度など品質面が要求されているが、近年では施工性にも注目が集まっている。

 溶接金網は、伸線したロッドを碁盤の目のように縦と横に重ね、交点を溶接することで製作される。同工場では、形状に合わせてさまざまな自動溶接機を配備。そして直交したロッドを電気溶接によって任意の形状にした後、切断して製品となる。完成した溶接金網は、在庫・配送のために、立体起動装置で効率的に積み重ねられる。積み重なった溶接金網の在庫の高さは5メートル以上にもなる。北川社長は「整理整頓された溶接金網を見上げる海外の溶接金網メーカーの方からは驚きのコメントをいただく」と話す。また、防錆の観点から出荷するまでビニールで覆うなど、品質面にも細心の注意を払っている。

 同工場は一定の形状の溶接金網の大量生産を得意とする生産ラインの設備が充実しており、主に幅2・0メートル×長さ4・0メートルと、幅1・0メートル×長さ2・0メートルを生産している。近年、関東以西では、コスト面や施工性に優れる獣害防止金網柵『いのししくん』の引き合いが堅調だ。そのほか公共事業関連の需要も増えており、足元は堅調に推移している。

 ユーザーは土木・建築関連以外に、溶接金網の機械設備が同業他社よりも多いことから、同業者からの注文も多い。そのほか、自治体やホームセンターなど幅広いユーザーを100件以上持つ。ユーザー数が多い理由は、設備面や製品の品質だけでなく、配送面の優位性もある。同工場が拠点を構える千葉県白井市は都内へのアクセスも容易で、北関東への交通の便も優れる。同工場は、新潟から神奈川エリアまで広範囲にユーザーを持つ。

 幅広いユーザーを持つ千葉工場の溶接金網のロッドは、工場内にある伸線工場で伸線加工されたものを使用する。そのため、自社開発した溶接機などの生産設備を駆使しながら、ロッドの伸線・直線・加工まで一貫した生産体制を敷いて溶接金網を生産している。

 同社の伸線加工工場は、細物用と太物用の線形別に2工場に分かれている。また、費用対効果を考慮して取り扱うロッドメーカーは多岐にわたる。伸線機や取り扱うロッドメーカーの多さから、溶接金網に使用されるロッドの太さはユーザーのニーズに合わせて多種多様に生産することができる。

高耐久性の鉄筋加工でニーズ対応/独自管理システムで高品質維持

 同社のフープ筋生産拠点は、千葉工場以外に、中部(愛知県岡崎市)、関西(奈良県生駒市)、中国(岡山県瀬戸内市)およびグループ会社の住倉鋼材(福岡県北九州市)の、合わせて5工場。

 各拠点で生産するフープ筋は主に、鉄筋コンクリート構造(RC造)で柱・梁のせん断破壊を補強し、破損などに抵抗するための下地として使用される。そのため、大手ゼネコンからの引き合いがメーンだ。また、強度だけでなく施工性や建物の意匠に合わせた難加工などユーザーからの要求は極めて高い。

 同社の全生産拠点で使用するフープ筋の母材であるバーインコイル(BIC)にはJIS規格や大臣認定が必要なため、合同製鉄やJFEスチールなど100%国内メーカーだ。その中で、同社グループ最大規模のフープ筋工場を有する千葉工場は、『トーアミフープ』や『GTSフープ』など6種類のフープ筋の建築センター評点を取得し、生産している。

 同工場ではゼネコンが設計した図面に沿い、BICを変形加工する。そのため、変形用途に合わせた自動鉄筋曲げ切断加工機を十数台配備し、さまざまな形状・特性を持つ高強度コンクリート向けなど、耐久性の高い鉄筋加工を行っている。また、加工時に出たロスは鉄筋アンカー向けに再利用される。加工した製品は溶接機で溶接するなどし、ユーザーのニーズに合ったフープ筋となる。

 千葉工場を含めた同社のフープ筋の製造および受注・配送は、自社開発した独自の管理システムを各工場で導入してネットワークを充実させている。このネットワークセキュリティシステムにより、全拠点が共通して高い品質を保っているだけでなく、トレーサビリティに関しても徹底している。

 今後の同工場の目標については、「提案型営業を強化して、工場をフル稼働にもっていきたい」(同)と話す。そのためにも、顧客満足度の向上を図る。「〝未来を綾なす技術〟を駆使しながら、さらなる高品質・短納期を実現する。そして、業界を引っ張っていくことができるリーディングカンパニーを目指す」考えだ。

 また、従業員満足度を今以上に高め、モチベーションとコミュニケーションを向上させるため、従業員とのイベントを定期的に実施するなどの企画を模索している。

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