【広島M&Mを傘下に ダイクレの狙い】〈山本浩社長に聞く〉トップ同士の信頼感で実現 コスト削減などシナジー追求

 グレーチング国内最大手のダイクレ(山本浩社長)は先月、特殊鋼ブルームや鋳鋼品、化学・環境機械を製造する広島メタル&マシナリー(以下HMM、川口敬一郎社長)を傘下に収めたと発表した。HMM現経営陣が設立した特別目的会社が、HMMの株式の94・5%を保有する地域経済活性化支援機構(REVIC)の全株式を買い取り、残る株式もその他株主から取得。この特別目的会社に地元銀行に加え、ダイクレが出資の過半を支援したことで、実質的に子会社化した。両社とも鉄鋼関連業種で広島県呉市発祥である以外、取引上の接点がない。これからどんなシナジー効果を描いていくのか、山本社長に聞いた。(小田 琢哉)

――出資に至る経緯から。

ダイクレ・山本社長

 「今回の出資は川口社長の存在ありき。新日本製鉄在籍時からの知己で、2015年に旧寿工業(現HMM)再建に呉に来ると聞いた時は驚いた。大手高炉メーカーでの地位を投げ打ち、敢えて経営破たんした会社の再建を手掛けることは尊敬に値する。REVICからの再生支援終了が1年繰り上がり、シナジー効果がある出資先を探しているとの話が回ってきた。会社業績も回復基調で、現経営陣に経営を続けてもらうことを条件に出資を引き受けた。ファンドなどがかかわれば伸び代がある化学・環境機械事業のみ切り売りされる可能性もあり、出資が地元雇用を守る意味合いでもプラスだったと考えている」

 「出資話以前の2年前に互いの工場を見学。どんな手腕で会社再建中か、社員をいかに前に向かせているかに興味を持っていた。実際、現場の社員の挨拶の声は大きく想像以上に良い雰囲気で、これなら順調に再建が可能だとの感想を得ていた」

――直近で考えられるメリットは。

 「HMMは電気炉、ダイクレは溶接など大量の電力を使用する工場運営のスケールメリットを生かしたい。グレーチング製造で発生する端材はHMMの特殊鋼、鋳鋼品の原料に使える。相互の資材調達、人材育成も含め、すべてはこれからだが将来にわたって相乗効果を目指せると感じている。ダイクレが間に入ることで資金調達の自由度が増すし、外注していたメッキ塗装などグループ内の技術を活用すればコスト低減にもつながる。ダイクレが持つ国内外の製造・営業拠点を活用することも当然検討していく」

――今後の相乗効果の見通しは。

 「今の体制がベストな選択。取締役と監査役は送り込むが、現経営陣の邪魔をしたくない。今後も今の関係性をベースに相乗効果を図っていく。HMMとは同じ鉄鋼業でも中身が違う分、期待もある。売上高17年1月期で128億円と一番大きい子会社で利益では本体に勝るかも知れず、互いに切磋琢磨していく」

――ダイクレ本体の状況や海外事業は。

 「17年3月期業績は売上高191億円。18年3月期の目標200億円に向け、グレーチング需要期の下期入りで踏ん張りどころ。国内生産量は月間4千トン水準。11年に進出したタイでのグレーチング月産量は300~500トンと当初想定の採算ラインに乗ってきた。タイ国内メーカーと肩を並べる生産量レベルだが、タイを中心に東南アジアで拡販するには、もう一段生産量を伸ばさねばならない。台湾などで製造する工業用熱交換器は、物件対応商品のため、受注量に山谷がある」

――設備投資関連は。

 「グレーチングは多品種・少量・短納期の代表選手。1万種類の中から短納期対応できること、工程中のボトルネックである段取り替え作業が少ないことが強みのひとつだ。こうした強みをいっそう強化し、海外に対抗してコスト競争力を高めるための自動化を推進する」

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