【ニュースの周辺】《相次ぐ建材薄板値上げ》原料など調達コスト高止まり、採算悪化の危機感強まる

 建材薄板メーカーの値上げ表明が相次いでいる。原板や副資材をはじめ高止まりする調達コストは需給の引き締まりで短期的に解消する見込みが少ない一方、これまで打ち出してきた値上げを製品価格に反映しきれていない間(はざま)での生産を余儀なくされる。採算悪化に対する危機感が一段と膨らみ、価格改定の動きに拍車をかけている。

 非住宅向けを中心に国内の薄板建材需要が持ち直す中、すでに多くのメーカーで生産設備の稼働率が高位に推移する。品種によっては製造ラインの集約やリフレッシュ工事などによって対応可能な絶対量が限られる供給事情も影を落とす。原板は高炉の供給でタイトな状況が続き、亜鉛やアルミの市場価格が今後も記録的な高値圏で推移する公算が大きいなどコスト高が重くのしかかったままから抜け出せない。

 数量の上積みが難しくなれば、これまでにも増して販売価格の在り方が問われるのは明らかだ。ひるがえって取引関係や特定の案件において、メーカーや流通が提示する価格の高低をめぐる疑心暗鬼は尽きない。

 一連の値上げ表明を通じて、市場全体で薄板建材メーカーを取り巻く現状に対する認識は深まりつつあるものの、これまで売り手と買い手の間に横たってきた温度差を縮めていかなければならないのも事実。今後本格化する値上げ交渉において、局所的な動きに惑わされることなく、当初の方針をどこまで貫けるのかに収益の行方がかかってくる。

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