【美濃工業のメキシコ拠点・車向けアルミダイカスト品生産「MIMX」の現状と展望】〈山崎一郎社長に聞く〉旺盛な需要、着実に捕捉 高精度・薄肉品の一貫体制構築

 【メキシコ・レオン発=佐野雄紀】中部地区大手アルミダイカストメーカー、美濃工業(本社・岐阜県中津川市、社長・杉本潤氏)のメキシコ現地法人「Mino Industry Mexico(MIMX)」は前年の会社設立後、段階的な設備投資と社員教育を推進。来年春に本稼働を開始し、メキシコ・北米市場への供給を目指した生産拠点として第一歩を踏み出す。完成車生産台数の伸びとともに今後ダイカスト需要が高まる中、どのような指針で成長戦略を描くのか。MIMXの現状と展望を山崎一郎社長に聞いた。

――メキシコにおける自動車向けダイカスト製品需要から伺いたい。

 「進出を決めた直後から日系メーカーから多くの引き合いを頂くなど、非常に旺盛な印象。当社グループは日本のほか中国、タイにも生産拠点があり、ここでの供給実績が追い風となっている側面もある。日系同様、非日系メーカーも部品の現地調達化を推進しており、かなり多くの潜在需要があるのではないか」

――日系サプライヤーに対する現地ユーザーの評価は。

 「ステアリング関連など非常に高い精度を求められる製品の量産対応、軽量化ニーズに応える薄肉化といった高度な技術と品質面は、美濃グループの最大の武器であり高い評価を頂いている。日本メーカーのジャストインタイムでの供給体制にも定評がある」

 「一方、当社のコスト競争力は不十分だと捉えられているようだ。立ち上げ直後で一時的に固定費がかさむ面もあるが、現在日本式のものを横展開する改善活動を活発化し、QCDすべてにおいて優位性を発揮すべく努力することが不可欠だ」

――今後、非日系ダイカストメーカーの進出も予想される。

 「最近、当社があるコリナス・デ・レオン工業団地内に中国メーカーが工場を立ち上げるなど、すでに具体的な動きが出始めている。ただ同社は1千トン以上のマシンを用いる中大型品の生産が中心であり、直接の競合先とはならない」

 「しかしメキシコにおける現在のダイカスト製品の供給能力は、依然将来的な生産台数の増加に対応できない規模。カーメーカーが促すケースもあり、自動車市場の広がりとともに進出が加速する可能性も少なくない」

――さらなる受注拡大に向けて注力すべきポイントは。

 「第一に製造工程や従業員のスキル、5Sへの意識など、日本のモノづくりをメキシコに融合させる。すでに12人のメキシコ人スタッフを1年間にわたり日本に派遣し本社研修を実施した。彼らとともにグループ最大の武器である高精度・薄肉製品の鋳造と機械加工までの一貫生産体制を作り上げることが先決だ。現在自動車産業の国際マネジメント規格『IATF16949』の取得を準備し、品質保証体制の構築も進めている」

 「その上で美濃グループとして信頼いただいている日系メーカーとの事業拡大、非日系メーカーに対する営業も強化しなければならない。現地調達先を探されている部品メーカーも多く、営業を担当するアメリカ法人『Mino Industry USA』と共にPR活動を強化しながら事業拡大を図りたい」

――需要増加に対応する効果的な能力増強も必要となる。

 「現在1万1千平方メートルの第1工場に350トンマシン2台を置き本稼働への準備を進めているが、19年までに350トンを5台、850トンを4台まで増台する。20年をめどに金型保全や材料・製品置場、出荷スペースといったサービス機能に特化した第2工場を建て生産効率化を進め、需要動向を見極めながら生産に特化した第3工場も建設予定。需要に応じたタイムリーな供給に努める」

――事業展開する上で苦労する点は。

 「5~10月の雨季は雷による停電が頻発し、マシンの故障を防ぐため稼働を停止せざるを得ない。稼働率アップのため、被雷対策設備や定電圧設備の導入も検討している。金型冷却に使用する現地の水は硬度が高いため、軟水化設備を設置したが、今後純粋化装置の導入も視野に入れ、さらなる品質確保と生産性改善を図っていく」

――非自動車ユーザーへ製品供給する余地はあるか。

 「JETROの商談会に参加した際、航空・宇宙産業や家電メーカーから引き合いもあった。まず自動車製品の量産、安定供給体制を確実に構築した上で他分野、または他地域への販路拡大可能性を模索したい」

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