楽天、史上最大の下克上に一歩前進!? 2010年ロッテとの意外な共通点とは

楽天の勝利で幕を開けた2017年、パ・リーグのクライマックスシリーズ・ファイナルステージ。ファーストステージでリーグ2位の西武を倒して勝ち上がってきた同3位の楽天が、その勢いをそのまま発揮した。

楽天・梨田昌孝【写真:荒川祐史】

史上最大の下克上と言われたロッテの戦いを振り返ってみると…

 楽天の勝利で幕を開けた2017年、パ・リーグのクライマックスシリーズ・ファイナルステージ。ファーストステージでリーグ2位の西武を倒して勝ち上がってきた同3位の楽天が、その勢いをそのまま発揮した。先頭の茂木が先頭打者本塁打を放ち、アマダー、ウィーラーの助っ人2人にもソロ本塁打が出た。先発の塩見が6回1失点と好投し、リリーフ陣も踏ん張って3-2で逃げ切った。

 リーグ王者のソフトバンクにとっては、痛い1敗だった。先発は今季16勝をあげて最多勝に輝いた東浜だったが、まさかの3発被弾で6回途中で降板。打線も塩見の前に、今宮、内川によるソロ2本だけに終わり、敗れた。

 ファーストステージでも散々取り上げられてきたが、2007年にスタートしたクライマックスシリーズで、パ・リーグではファースト、ファイナルステージいずれも、初戦に勝利したチームが必ずそのステージを突破してきていた。今季、初戦で敗れていた楽天が初めて突破を決め、この歴史に終止符を打ったのだった。

 これまで、ファイナルステージも、初戦に勝利したチームが日本シリーズ進出を決めてきた。ただ、この10年で9度は、その年のリーグ優勝チームが初戦に勝利。先手を奪って、そのままファイナル突破を決めてきた。唯一、ファーストステージを突破して、かつファイナルで初戦に勝利したのが、史上最大の下克上と言われた2010年のロッテだった。そして、その時のファイナルの相手はソフトバンクだった。

 2010年のパ・リーグのクライマックスシリーズを振り返ってみる。

 ファーストステージは2位の西武と、3位のロッテの顔合わせ。初戦、先手を奪われて一時は1-5と4点のリードを奪われたロッテだったが、9回に4点を奪って同点とすると、延長11回に福浦のソロで勝ち越し。劇的な形で先勝すると、第2戦も先にリードを奪われながら、じわじわと追い上げて9回に里崎のソロで同点に。またしても延長11回に勝ち越しに成功。激戦の末に、ファイナル進出を決めた。

2010年のロッテは首位と2.5差、今季の楽天は15.5差

 迎えたファイナル。場所はヤフードーム、現在のヤフオクドームだった。その初戦。2回に大松がソフトバンク先発の杉内から3ランを放って先行し、左腕・成瀬が9回4安打1失点の好投。リードを守りきって、下位チームが初戦に勝利した。

 第2、3戦はリーグ優勝を果たしていたソフトバンクが意地を見せて連勝。アドバンテージを含めて3勝として、日本シリーズ進出へと王手をかけた。だが、ドラマはここから。第4戦を渡辺俊の好投などで4-2で勝利すると、第5戦もロッテが逆転勝利。3勝3敗として逆王手をかけ、第6戦では初戦に先発していた成瀬が再び好投。ソフトバンク打線を4安打無失点に封じて完封勝利。打線も10安打7得点を奪って勝利し、大逆転での日本シリーズ進出を決めた。

 そして、2017年のファイナルステージだ。ソフトバンクを破って初戦をモノにした楽天には、2010年のロッテを連想させるものがある。まず、西武ドーム(現メットライフドーム)で2位の西武を破ってのファイナル進出。そして、2010年のロッテしか成し遂げていない下位チームによるファイナル初戦勝利を果たした。

 しかも、その白星をもたらしたのは、成瀬と同じ「左腕」の塩見だった。茂木、アマダー、ウィーラーのソロ3発と、大松の3ランとの違いこそあれ、奪った3得点は全て本塁打によるもの。しかも、敗戦投手となったソフトバンクの先発の東浜と杉内は、それぞれ、シーズンで「16勝」をマークしていた。

 これらは偶然の一致ではあるが、楽天が、下克上に一歩前進したのは間違いない。2010年のロッテは、首位ソフトバンクと2.5ゲーム差の3位だったが、今年の楽天は15.5ゲーム差あった。これほどの差がついた3位球団が日本シリーズに進出しても、いかがなものかとは思うが、果たして2010年を超える最大の下克上は起きるのか。2戦目以降も目が離せない。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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