1勝呼んだ「CS男」、横浜DeNA・乙坂 10月19日・クライマックスシリーズ広島戦

 広島に田中がいるならば、ベイスターズにはこの男がいる。2−1の五回2死満塁。代打乙坂は「流れはいい。自分もそれに乗っていく」。

 高めのカットボールを上からたたいた。二遊間を破る中前打に2者が生還。赤く染まった球場の一角で、誇らしげに青が揺れる。阪神とのファーストステージ第2戦で代打3ランを放った「CS男」は「いい場面で打てた」。塁上で、甘いマスクに笑顔がはじけた。

 ベンチの積極采配が実を結んだ。「高城に代打を出してもいいんじゃないか」。乙坂の数打席前から光山バッテリーコーチがラミレス監督に提案した。乙坂本人に告げたのは、前の打者の柴田が敬遠気味に歩かされている間だった。

 「乙坂は急な展開だったのに、よく結果を出してくれた」と指揮官はたたえる。殊勲打のヒーローは「準備するルーティンがある中で、普段よりは確かに早かった。でも気持ちはいつでもいける。(チーム宿舎の)ホテルにいる時からいつも準備している」とうなずく。

 4回1失点と好投を導いた捕手高城に五回で代打を送ったのは「ゲームの流れが変わる」(青山総合コーチ)というリスクのある采配だが、「戸柱は浜口と組んだこともあったからね」と指揮官。「今までにない初めての展開。でも今までゲームに途中出場してきた経験が生きた」という戸柱は、浜口をリードして七回まで3イニングを1失点にまとめた。

 昨年は2点ビハインドの六回に投手をそのまま打席に送るなど消極的な采配で痛手を負った。ベンチも悔しさを忘れていたわけではない。「総力」で1勝目をつかんだ。

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