「ソン」ではなく「得してます」 育成出身の台湾人右腕が楽天のキーマンに

育成出身の右腕が下克上への、重要な鍵を握るかもしれない。

楽天・宋家豪【画像:(C)PLM】

右腕・宋がチームを連勝に導く好リリーフ、「勝利に貢献出来て嬉しいです」

 育成出身の右腕が下克上への、重要な鍵を握るかもしれない。楽天の宋家豪(ソン・チャーホウ)投手。19日に敵地ヤフオクドームで行われたソフトバンクとのクライマックスシリーズ・ファイナルステージ第2戦で、チームを連勝に導く好リリーフを見せた。

 1-1の同点で迎えた6回だった。先発の辛島が先頭の今宮に左翼線を破られる二塁打を許した。中村晃が犠打を失敗し、1死二塁となると、ソフトバンクの4番内川を迎えるところで、梨田昌孝監督は、この台湾人右腕を2番手としてマウンドに送った。

 背番号94の右腕は、圧巻の投球を見せる。初球、2球目と150キロの真っ直ぐが外れ2ボール。3球目も150キロで見逃しのストライクを奪うと、4球目は151キロで空振り。そして運命の5球目。外角高めへの150キロのストレートで、バットに空を切らせた。全球真っ直ぐ勝負で、全球150キロ超え。4回に2戦連発の同点ソロを放っていた相手の主砲をねじ伏せた。

 続くデスパイネには、フルカウントの末に四球を与えたが、続く松田には、再び全球真っ直ぐ勝負。1ボール2ストライクと追い込むと、4球目、外角いっぱいの152キロのストレートで見逃し三振を奪った。一打勝ち越しの窮地を救う好投。この台湾人右腕の力投が、ソフトバンクの反撃ムードを断ち切り、試合後は「ゼロに抑えて、チームの勝利に貢献出来て嬉しいです。あの場面は、勝つチャンスもあるし、集中していきました」と喜んだ。

 台湾の国立体育大学出身の宋家豪。2015年6月に台湾球界のドラフトで、2巡目指名を受けたが、NPB入りを目指して、入団を拒否。2015年10月に楽天と育成選手契約を結び、念願だった日本球界入りをつかんだ。

梨田監督もご満悦「ボールが強くなっているし、度胸もついてきた」

 1年目の2016年はイースタン・リーグで6勝3敗、防御率2.44の成績をあげ、育成契約を延長。今季はチャイニーズ・タイペイ代表としてWBCにも出場。イースタン・リーグでは今季33試合に投げて8勝2敗5セーブ。防御率は4.28だったものの、7月31日には支配下契約を勝ち取った。

 1軍デビューを果たした8月11日のオリックス戦(京セラD)では1イニングを投げて2失点だったが、梨田昌孝監督はその潜在能力を高く評価。「後半にちょっとテストして、厳しいところで使ってみて、走者いるところとかね」。クライマックスシリーズを見据えて、10月4日に再び1軍昇格を果たすと、そこから4試合連続無失点。10月10日のロッテ戦(Koboパーク)では打者4人に投げて、4三振と強烈なインパクトを残した。

 クライマックスシリーズの秘密兵器としてメンバー入り。あえて大砲のアマダーをメンバーから外してまで、28人の登録枠に右腕を加えた。西武とのファーストステージ第3戦でも無失点投球をして“プロ初勝利”もマーク。そして、この日の好投。周囲の期待を上回る好投に、「(ソンではなく)得してますよ、本当に。今年支配下になって、初勝利がクライマックスでね。ボールが強くなっているし、度胸もついてきたのかな」と梨田監督も目尻を下げた。

 初戦に続き、2戦目にも勝利して連勝を飾った楽天。ソフトバンクにはアドバンテージの1勝があるものの、これで2勝1敗とした。育成出身の台湾人右腕。楽天にとって、ファイナルステージ突破のキーマンとなるかもしれない。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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