【韓・ポスコを支える2大製鉄所(上)浦項】〈多彩な製品ポートフォリオ〉効率操業でコスト競争力強化

 韓国・ポスコの2017年1~6月連結営業益は前年同期比で75%増の約2兆3千億ウォン(2300億円)となり、他の東アジアメーカーに対して頭一つ抜けた収益力を示している。年間で4兆~5兆ウォンを稼ぎ出す競争力の源泉となるのが、単一製鉄所として粗鋼生産量が世界第1位の光陽(カンヤン)製鉄所であり、それに次ぐ規模の浦項(ポハン)製鉄所だ。AIの活用など、さらなる高みを目指す両製鉄所の現状などを現地で取材した。(韓国=宇尾野宏之)

 浦項製鉄所は1973年、第1期設備投資が完工し、粗鋼103万トンの高炉一貫製鉄所として稼働を始めた。その後は量的な拡大を続け、16年の粗鋼生産量は1672万トン。現在は約7200人が働いている。

 同製鉄所の特徴の一つは多様な製品を生産している点だ。熱延・冷延コイル、厚板、線材、電磁鋼板、ステンレスなど多彩な製品ポートフォリオを抱えながら、単一製鉄所で世界第2位という粗鋼規模も持っているのが「最大の強み」となる。

 ただ、多様な製品を生産しているため、光陽に比べると小規模設備が多く、コスト面では多少不利な面もある。

熱延工場を合理化

 こうした課題を解消するため、生産効率の向上を目指し、浦項製鉄所は老朽化設備の補修など小規模設備の合理化を推進している。ポスコは「これまでは汎用的な生産システムでもある程度の競争力はあったが、現在のような長期的な需給緩和が予想される時代に、もはや競争力を持つことはできない」とし、多様な製品群のさらなる高級化を目指すとともに、コスト競争力の強化に取り組んでいく。

 この一環として、今年は3号高炉の改修を完了した。炉内容積は4350立方メートルから5600立方メートルに拡大。1日当たり出銑量が1万4千トンとなり、世界第5位の規模の高炉に生まれ変わった。これにより、ポスコは光陽を含め5500立方メートル以上の超大型高炉を5基抱えることになった。

 ポスコはこれまでに合計28回の高炉巻き替えを経験している。今回の改修でこの経験を生かし、高炉の長寿命化を目指して炉内の状態を自動制御する技術を設計段階から適用した。また、稼働初期から炉内外の状態を監視し、ビッグデータを収集できるようにしており、今後はAIを活用した「スマート高炉」の実現を目指していく。

 また、高級鋼を生産する場合、生産工程に負荷がかかるが、これをより効率的に生産できるよう熱延工場の合理化にも着手した。圧延能力の向上を狙いにモータの交換、さらにポスコが独自開発した厚さおよび形状を制御するシステムも設けた。このほか、エネルギー効率を高めるため加熱排熱回収システムも新たに導入している。

「無駄ゼロ」活動展開

 品質・コスト競争力の向上を目指し、設備投資だけではなく、現場レベルでの改善活動も推進している。

 「故障ゼロ」「不良ゼロ」「無駄ゼロ」の3大ゼロを目標とし、特に全職員が日常業務の中に潜在しているコストの無駄を発掘し、改善する無駄ゼロ活動に注力する。コスト競争力の強化を狙いに全員が参加し、活動を展開している。

 このほか、エンジニアを中心とした技術スタッフは、IP(イノベーション・ポスコ)計画を介し、プロセスと製品の要素技術の向上に注力。技術職員だけでなく、現場の従業員はポスコ固有の革新方法論であるQSS+(Quick Six Sigma Plus)の活動により、生産設備と操業問題を重点的に改善している。

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