【「住金システム建築」、創立10周年】〈生井敏夫社長に聞く〉ニーズの多様化に対応、今期売上高200億円に拡大

 システム建築を展開する住金システム建築は今年10月1日で創立10周年を迎えた。生井敏夫社長に事業の現状と今後の展望を聞いた。(村上 倫)

――10周年を迎えた感想からお聞きしたい。

 「2007年10月に住友金属工業(現・新日鉄住金)から住金システム建築として分離・独立したが、初年度の売上高は63億円だった。それから10年で3倍以上となる200億円を見通すことができるまでに成長した。ここまでくることができたのは、1500社近い住金システム建築会の会員各社や110社あまりの協力会会員会社の皆さんなどの継続的で暖かいご支援とご指導があったからこそと思っている。もちろん社員の頑張りも大きく、支えてくれた皆さんへ心から感謝しているというのが率直な気持ちだ」

住金システム・生井社長

――事業拡大の要因は。

 「旺盛な建築需要を背景に、低コスト・短工期で高品質なシステム建築全体に対する認知度と期待感が高まっている。慢性的な現場管理者・作業員の不足に悩むゼネコンにとっても、システム建築が在来工法に比べ省力化や管理効率化に資する工法として魅力が高まっていると感じる。中でも当社は基礎システムを含めたパッケージシステムを保有しているほか、平屋向け規格型システム建築『ティオ』、自由設計型システム建築『トレオ』、中低層向けシステム建築『ラフィット』という三つの商品群で幅広い領域をカバーしている。21カ所の販売拠点を中心とした地域密着型の営業体制や下請けに徹するビジネススタイルと合わせて、会員各社にとっては営業の間口を広げ新たなチャンスを生み、さまざまなソリューションを提供する一助となる商品と認められてきていると自負している」

――今年度の見通しは。

 「売上高200億円の大台へ初めて乗せたいと考えているが、現時点でほぼオンラインだ。受注額全体の8割超を占める工場・倉庫分野の旺盛な需要を着実に捕捉している。受注棟数は年間250棟超のレベルを見込んでおり、1棟当たりの平均床面積は2千平方メートル程度となっている。こうした中、主力製品の『ティオ』は2千~5千平方メートル規模の案件で圧倒的な競争力があり、メリットを感じていただけると思っている。ただ、設計の自由度へのニーズが高まる中で最近では『トレオ』の比率が高まってきている。多様化する顧客ニーズに対応できる商品バリエーションを保有する当社の強みが生かせていると感じている」

――さらなる10年に向けてどのような会社の姿を描きますか。

 「成長の源泉である受注対応力は商品力と社員の総合力、協力会社との連携の3要素の掛け算だと思っている。これらがバランスを保ちながらさらに強化されていくことで成長力が生まれる。受注対応力を強固にすることで会員各社からより信頼され、期待され、そして選択される企業を目指していきたい。現在、次の10年後のありたい姿をイメージし、実現に向け課題やスケジュールを整理する『NEXT10』を社内で検討している。これを足元の3年間に引き戻す形で、親会社である日鉄住金物産に合わせた次期3カ年中期経営計画につなげたい」

――3要素で重視するものは。

 「特に商品力は次世代の当社の魅力や競争力を左右するキーファクターと思っている。これまで営業活動や住金システム建築会の総会、研修会などを通じてニーズを吸い上げ、製品の改良を重ねてきたことで適用範囲の拡大などにつなげてきた。競合他社より進んでいる部分はあるが、一般工法でも省力化の動きが進んでおり、システム建築はその先にいかなければ顧客に選ばれなくなる。システム建築業界の中でポジションを高め、ブランド力を極めることでシステム建築を伸ばしていきたい。一歩先の技術革新を目指して開発にはこれまで以上に注力していく」

 「社長に就任して約1年半となるが『すべてはお客様の安心感と満足感のために』を行動指針として事業を進めてきた。安心感は安全と品質、満足感は商品力とコスト・工期の競争力が基本。それぞれを磨くことで建築主・会員会社により信頼感を高めてもらい、当社のシンパ・リピーターになってもらうことを大切にしてきた。また、中途入社の社員も多く共通の価値観と達成感を皆で共有できる会社を目指してきた。これからもこの姿勢を貫き、一体感を醸成していきたい。10周年の節目に社員旅行を計画しているほかロゴマークの制定も決めたが、このこともブランド力や一体感の一助となればと思っている」

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