短期決戦で重要な「今の戦力」、数字で見る苦戦ソフトバンクと広島の共通点

CSファイナルステージは、両リーグともに2勝2敗のタイになった。シーズン中、他のチームを圧倒して勝率1位となったソフトバンクと広島がともに苦戦している。それは両チームともにベストメンバーで戦うことができていないからだ。

ソフトバンク・工藤公康監督【写真:藤浦一都】

「今の戦力」と「ベストメンバー」に見る差とは…

 CSファイナルステージは、両リーグともに2勝2敗のタイになった。シーズン中、他のチームを圧倒して勝率1位となったソフトバンクと広島がともに苦戦している。それは両チームともにベストメンバーで戦うことができていないからだ。

 その状況を端的に表す数字がある。10月20日の両軍スタメンが今季打った安打数と、今年のベストメンバーが打った安打数を比較すれば、今の戦力がベストの戦力の何%に当たるのかが分かる。

パ・リーグ 
○楽天
1茂木 118安打
2藤田 68安打
3銀次 155安打
4ウィーラー 147安打
5島内 131安打
6アマダー 99安打
7聖澤 58安打
8岡島 89安打
9足立 16安打
合計 881安打
ベスト 993安打(88.7%)

 外国人枠と負傷の影響で、今季130安打したペゲーロを外し、投手の宋家蒙を入れたことと、捕手の嶋に休養を与え足立を先発させたために、ベストメンバーと比べると88.7%の安打数にとどまっているが、想定内のメンバー変更であり、それほど大きなマイナスはない。

○ソフトバンク
1今宮 139安打
2城所 0安打
3デスパイネ 125安打
4内川 79安打
5長谷川勇 8安打
6松田 140安打
7中村晃 138安打
8高谷 36安打
9本多 26安打
合計 691安打
ベスト 997安打(69.3%)

 大黒柱の139安打した柳田悠岐が欠場し、108安打の上林誠知、81安打の明石健志もスタメンから外れ、今季0安打の城所、8安打の長谷川勇也、26安打の本田を先発で起用。城所は二塁打を2本打ち、その起用は成功したが、ベストメンバーの安打数と比較すると69.3%。レギュラーシーズンの圧倒的な戦力差はなくなっている。

DeNAはほぼベストメンバー、一方の広島は…

 セ・リーグはどうだろうか。投手を除く8人の安打数を比較したい。

セ・リーグ
○DeNA
1桑原 161安打
2梶谷 124安打
3ロペス 171安打
4筒香 143安打
5宮崎 155安打
6嶺井 30安打
7柴田 50安打
9倉本 133安打
合計 967安打
ベスト 1009安打(95.8%)

 捕手を72安打している戸柱から30安打の嶺井に変えただけ。他はほぼベストメンバー。シーズンと同じ顔ぶれで戦っている。95.8%という高い比率が戦力の充実ぶりを物語っている。

○広島
1田中 164安打
2菊池 153安打
3丸 171安打
4バティスタ 32安打
5松山 114安打
6エルドレッド 91安打
7西川 56安打
8石原 30安打
合計 811安打
ベスト 1031安打(78.7%)

 広島は大黒柱で131安打した4番の鈴木誠也を怪我で欠き、128安打の三塁手・安部友裕も右ふくらはぎの死球で欠場、西川龍馬を使った。戦力はベストメンバーの78.7%にとどまっている。

 これらは端的な数字の比較ではあるが、両リーグともにレギュラーシーズンを圧倒的な打線で勝ち抜いた1位チームが、ベストナインを組めないために苦戦していることがよく分かる。

 レギュラーシーズンは総力戦であり、分厚い戦力を持つ方が有利だが、短期決戦は「時価」の戦いであり、「今使える選手」が多い方が有利だ。楽天、DeNAは、ともに2位チームを下して這い上がってきた3位チームだが、「時価」での戦力では1位チームを上回っていると言えそうだ。

 数字を見る限り、ソフトバンクと広島は、今後も苦戦することが予想される。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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