【日新製鋼・東北支店の下期展望】〈上石成彦支店長に聞く〉太陽光発電架台など加工品向けでZAM拡販 津波被災地の街づくり、ステンレス積極提案

――上期の需要環境をまとめると。

 「薄板需要は地域や業種によって濃淡があるものの、全般的な荷動きはまずまずで底堅い印象だ。実際に顧客の工場や加工センターに行くと、目が回るほどの忙しさはないが、手持ちの仕事はある程度抱えているという話が聞かれた。ステンレスに関しては、今年4月の着任前に1度15年前に仙台勤務を経験したことがあるが、その時と比較して東北地区のマーケットは確実に大きくなっている。特に足元好調なのが半導体装置関連と震災復興に伴う水門。あとは一部で首都圏向けの建材部材を受注しているところが忙しいようだ」

日新製鋼東北支店・上石支店長

 「建築関連で若干気になるのが東北6県の住宅着工件数。今年度は4月こそ対前年同月を上回ったが、5月以降は4カ月連続で下回っており、震災復興需要が落ち着きはじめたと予想される。ただ、数字的に依然として震災前を上回っており、今後もある程度の水準は保つだろう。非住宅に関しても足元は芳しくないが、ここにきて自動車や半導体関係の工場進出などがあり活気が出始めている。また、省力化や増産対応の民間設備投資は増加傾向となっているので、人手不足という問題を抱えてはいるが今後に期待している」

――下期の展望、それに対する支店としての戦略は。

 「例年であれば東北地区は下期から荷動きがよくなると言われている。当社のロールはタイトな状況が継続しているが、お客様と情報交換を密にさせていただき、対応したいと思っている。値上げに関しても、引き続き供給責任を全うするためにも、ご理解とご協力をいただきながら、進展させていきたい」

 「販売戦略としては、まずはコア製品のZAMの拡販に力を入れていきたい。具体的には関連会社の日新製鋼建材と連携し、素材の先には加工があることを念頭に置いて、太陽光発電に使用される架台などの加工品向けの受注に注力していきたい。2016年度末時点で東北では国が認定した太陽光発電など再生可能エネルギー設備のうち、80%が未稼働となっている。今後、どれくらい稼働するか不透明な部分もあるが、東北はメガソーラーの案件が多いだけに稼働に向けた動きには迅速に対応しなければならない。また、東北で盛んな畜産業をターゲットに、畜舎・堆肥舎向けの屋根・構造材にZAMの採用が拡大するようこれまで以上にPRしていきたい。もう一つのコア製品であるステンレスに関しては、海沿いの津波被災地の街づくりが進捗し塩害対応の需要が出てくる中で、耐食性が高いステンレスを提案し受注に結びつけたい」

 「今後、あらゆる産業で自動化や省力化などに着目した技術革新が起こると思うが、その中で鉄がこれまで以上に注目されると思う。環境にやさしい持続可能社会が重要なテーマになる中で、リサイクル体制が最も整備されている素材が鉄である。鉄の用途拡大に向けて、あらゆる産業、分野、商品に興味を持ち、将来の鉄需につながる種をまいていきたい」

――新日鉄住金グループとして半年が経過した。

 「支店ごとに商品別、業種別に戦略の連携を図っている段階。シェアの維持・拡大をどうするかが今後の大きなテーマだと思っている。具体的な活動はもう少し先となるが、日新製鋼東北支店として新日鉄住金グループの中で存在価値を高めていくように活動していきたいと思っている」(小室 慎)

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