【韓・ポスコを支える2大製鉄所(下)光陽】〈世界最大、粗鋼2300万トン〉車用鋼板主力、さらに拡張余地

 光陽製鉄所は世界最大の単一製鉄所であり、2016年の粗鋼生産量は2078万トンだった。主要生産品種は自動車用鋼板など薄板で、約6400人が働いている。

 製鉄所最大の特徴がコスト競争力の高さ。生産工程が一直線に配置され、経済的な構内物流を確保しているだけでなく、積載量30万トン級の原料輸送船が一度に2隻接岸できる。

 原料搬入や生産工程だけでなく、出荷についても荷役台(パレット)など設備をそのまま搬入できるようにし、コスト競争力を高めている。このほか、主に日本向けについては3500トン級船舶が接岸できる全天候型バースから出荷しており、コスト競争力だけでなく、短納期ニーズにも十分に対応できる体制を整えている。

3基の超大型高炉

 昨年6月、光陽製鉄所は老朽化対応のため5号高炉を改修した。これにより、炉内容積は3950立方メートルから5500立方メートルに拡大。1号高炉は世界最大とされる6千立方メートル、4号は5500立方メートルで、光陽製鉄所は5500立方メートル以上の超大型高炉を3基抱えることとなり、粗鋼年産規模は2300万トンとなった。

 5号高炉は規模拡大による生産増だけでなく、竜巻状の管を挿入し微粒子までろ過するクリーン集塵システムを採用。集塵効率を従来比で30%以上高めた。また、排出蒸気をゼロ化したことで正確な温度調節が可能となり、高炉本体の寿命をさらに伸ばせるようになった。

「ギガスチール」専用CGL稼働

 同製鉄所で主力製品となるのがポスコの戦略商品でもある自動車用鋼板。ポスコ全体の売上高で自動車用鋼板は約25%を占める。ポスコ全体の昨年の自動車用鋼板生産量は900万トンだったが、光陽では860万トンを生産した。

 自動車用鋼板の生産をさらに増やすことを狙いに、冷延工場の合理化事業を推進。第4冷延工場はAHSS(次世代高張力鋼板)を生産する能力を高めて、設備負荷の低減、納期短縮などを実現した。

 今年4月には年産規模50万トンの第7CGLを竣工。同CGLでは、これまで蓄積した設備技術と操業ノウハウを活用し、中核設備の開発および製造、さらにはプラント設計から施工まですべて独自に行った。

 ポスコは同CGLを「ギガスチール」専用の自動車用鋼板工場とした。引張強度1・5ギガパスカル級の超高強度「ギガスチール」を亜鉛めっきできるCGLで、1・5ギガパスカル級のGA・GI鋼板を両方生産できる世界初の工場とし、自動車用鋼板に関して他の鉄鋼メーカーと差別化を進めていく。

 今年2月、ポスコは光陽製鉄所内で韓国初となるリチウムの商業生産を開始した。2500トン規模のリチウム精製工場で、電気自動車向けなど増加するバッテリー需要を捕捉していく。

リチウム生産開始

 光陽製鉄所は自動車用鋼板を主力とし、その専門製鉄所ともされる。しかし、リチウムのほか、年産規模5万4千トンのフェロニッケル工場、11年に稼働を始めた厚板ミルもあり、これまでの自動車用鋼板専用製鉄所といったイメージは変わりつつある。

 同製鉄所はポスコが「世界最高の製鉄所」と自負するように、すでに品質・コスト競争力で世界最高もしくは有数の製鉄所だ。だが、鉄鋼スラグを活用した埋め立てが今も行われているように、世界最高・有数でありながらも、まだ拡張・成長の余地を残している。

 ポスコの好業績を支える光陽、そして浦項製鉄所。今後の成長戦略が注目される。

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