配偶者控除が廃止されると5万~20万円の増税に!?

所得税と住民税について、配偶者控除の見直しが検討されています。平成23年には扶養控除が一部廃止となりました。配偶者控除の代わりに夫婦控除などが検討されていますが、さらに増税となる家庭もありそう。どんな影響が出るのかをまとめました。

配偶者控除見直し、本格的検討に

2017年度税制改正で専業主婦世帯を優遇する所得税の配偶者控除を見直しを検討すると報道されました。配偶者控除を受けている世帯にとって増税となる今回の発表。大きな影響が予想されます。

増税といえば、子どもに対する扶養控除も平成23年から廃止されました。次々に制度が変わり、理解をするのが難しい状況です。そこで、こららの制度がどのように変わったかをふりかえり、今後の配偶者控除がどのようになるのか、実際に廃止されたらどれくらい増税になるのかを確認しましょう。

所得税と住民税の扶養控除が一部廃止・変更に(平成23年以降)

子ども手当(現:児童手当)の創設にともなって、所得税と住民税の扶養控除が一部廃止、変更となりました。この扶養控除の変更ですが、所得税は平成23年分から、住民税は平成24年度から廃止、変更されています。実際には増税となるこれらの政策、しっかりと確認しておきましょう。

その前に、「所得税と住民税って何が違うの?」 という疑問を持つ人もいるはず。所得税と住民税の違いをおさらいおきましょう。また、配偶者控除を廃止して新たな控除を設ける案が出ています。実現した場合、どれくらい増税になるのかも併せてご紹介します。

扶養控除・配偶者控除って何?

扶養者がいる時に受けられるのが扶養控除。また、その扶養者が配偶者の場合は配偶者控除を受けることができます。これらの控除は、個人の所得に対する税金を計算する時に勘案されるものです。養う人がいる場合は税金を安くしましょうという意図ですね。

平成22年4月から子ども手当が支給され、また高校授業料の無償化も実施されました。これにともない、15歳までの子どもに対する扶養控除が廃止となり、 16~18歳までの子どもに対する扶養控除が減ることになりました(平成24年度から子ども手当は児童手当に変更になりました)。

この扶養控除ですが、前述のとおり所得税は平成23年分から、住民税は平成24年度からの廃止、変更となっています。

配偶者控除の廃止も検討されている

また、配偶者控除を廃止し、新しい控除を新設するという方向で調整されています。2018年1月に新しい控除が創設される案が有力です。

今の配偶者控除は、専業主婦や、働いていてもパートであれば年収103万円以下であれば受けられるものです。これが「103万円の壁」と呼ばれ、夫の税金が増えないように、働くのを年収103万円までに調整する妻が多い理由です。

働く女性の労働を制限しているこの制度はやめて、妻の年収に関係なくすべての夫婦に公平になる税制を導入しよう、という動きになっています。

2重の控除ってどういうこと?

所得税の2重の控除について。税制調査会「働き方の選択に対して中立的な税制の構築をはじめとする個人所得課税改革に関する論点整理(第一次レポート)(平成26年11月7日)」より筆者が抜粋

この配偶者控除はパート世帯において「2重の控除」が行われているために不公平だといわれています。この不公平をなくすために、配偶者控除を廃止して新しい控除を設けようということです。パートの妻と配偶者控除を受けている夫のパターンで考えてみましょう。

パートの妻の所得税を考えてみましょう。パート収入の税金の計算では、給与所得控除(パートや会社員にとっての必要経費)が最低でも65万円認められています。この65万円を超えると、次に基礎控除を受けることができます。この基礎控除は納税者が誰でも受けられる控除で所得税では38万円です。パートで年収65万円から103万円までは基礎控除により所得はゼロとなり、所得税もかかりません。この時、夫は配偶者控除を受けており、妻の基礎控除とあわせて2重の控除が存在しているのです。

また、妻のパート年収がもう少し増えても、141万円までなら夫は配偶者特別控除を受けることができ、妻の基礎控除とあわせて2重の控除を受けています。このように、妻のパート年収が65万円から141万円の間は夫婦で控除を2重に受けているということで、不公平といわれています。

新しい控除は「夫婦控除」?

新しい控除は色々と検討されているようですが、最も有力とされているのが、夫婦でひとつの控除を新たに設けるというもの。妻の年収に関係なく、子育て世帯を中心に夫婦に控除を設けるというものです。女性の働く意欲を高め、税制の不公平もなくすという案です。今後どのようになるのか注目ですね。

個人の所得には所得税と住民税がかかる

配偶者控除の廃止による増税額を計算する前に、所得税と住民税の違いを復習しておきましょう。個人の所得に対してかかる税金は、所得税と住民税の2種類です。所得税は国税で税務署が、住民税は地方税で自治体が徴収しています。また、地方税は道府県民税と市町村民税にわけられ、それぞれの地方自治活動の財源となっています。

住民税の税率は一律10%

平成19年に、国から地方への税源移譲が行われました。多くの人は所得税(国税)が減り、住民税(地方税)が増えました。全体の税額は変わらないのですが、税金の行く先が、国から地方へとシフトしたわけですね。所得税は所得によって税率が変わりますが、住民税の税率は一律10%となりました。

所得税はその年の所得、住民税は前年の所得に対してかかる

会社員などにおなじみの年末調整。これは、その年(1月~12月)の所得税の計算をするものです。また自営業などが行う確定申告も、所得税の税額を決めるものですね。この所得税(厳密には所得金額)が決まってから、住民税が決まります。

住民税は前年の所得に対して課税されるものです。所得税の情報が地方に行き渡り、そのデータを基に住民税を決めるためです。

配偶者控除がなくなると、約5万~20万円の増税に

配偶者控除がなくなったら、どれくらいの増税になるのでしょうか? 配偶者控除額は所得税38万円、住民税33万円です。実際の増税額は、これらの控除額に税率をかけたものになります。

所得税の税率は所得に応じて変わります。税率は5%から45%(平成27年以降。平成26年までは5%から40%)。住民税は一律、税率10%です。配偶者控除がなくなると、増税される所得税は所得によって変わりますが、1万9000円(38万円×5%)から17万1000円(38万円×45%)となります。

住民税は一律10%ですから、3万3000円(33万円×10%)の増税となります。配偶者控除が廃止されると、所得税と住民税あわせて5万2000円から20万4000円の増税となるわけですね。

いかがですか?配偶者控除がなくなるとかなりの増税額になると思いませんか? 税金の制度をよく知った上で、今後の動きを注意深く見守っていきたいですね。

(文:福一 由紀)

© 株式会社オールアバウト