米国ビントン・スチール
共英製鋼は昨16年12月、米国テキサス州の電炉工場を買収し、ビントン・スチール社(テキサス州エルパソ郡ビントン村、社長・北田正宏氏)とした。
異形棒鋼と鉱石粉砕用鉄球のメーカーで、93万平方メートルの広大な敷地に、30トン電気炉2基、連続鋳造設備1基、圧延設備1基などを持ち、生産能力は製鋼が年25万トン、圧延が異形棒鋼年20万トン、鉄球(鍛造)年5万トン。従業員は350人(17年3月末)。
買収時の業績(15年12月期)は売上高153億円、売上総利益6千万円の赤字だったが、買収後の今17年1月からは、月次ベースで黒字が続いている。
現在、年間20万トン(棒鋼16万トン、鉄球4万トン)ペースで生産し、テキサス州などの需要家に販売。今期も年20万トンの生産販売を計画している。
米国の異形棒鋼需要は年間約800万トン。うちテキサス州で同100万トン。同社ではテキサス州東部の都市・ヒューストンに営業担当を配置し拡販にも努めている。
共英製鋼の米国進出は3回目。73年に日本鉄鋼メーカー初の米国進出となったオーバン・スチール(ニューヨーク州、79年撤退)、92年のフロリダ・スチール買収(フロリダ州、アメリ・スチールに社名変更、99年売却)に次ぐ進出となった。
共英は70~90年代にかけ、米国、アジア、欧州、アフリカなどで技術支援も含むグローバル展開を推進してきた。現在はベトナムのビナ・キョウエイ・スチール社とキョウエイ・スチール・ベトナム社の2社および港湾事業(チーバイ・インターナショナル・ポート社)と、米・ビントン社の4カ所。
日本の電炉メーカーでグローバル展開を進めているのは、共英と大和工業、それに今年インドネシアに進出した大阪製鉄の3社。共英はその先駆け企業。
共英の森光廣社長は米国での鉄鋼事業展開について「オーバンもアメリも好調だったが、共英本体の経営難で売却せざるを得なかった。しかし今回は違う。本体の体力もしっかりしている。ビントンは小さな電炉メーカーだが、ここを橋頭堡にチャンスを見ながら米国事業を拡大していきたい」と意欲を見せる。
当面はビントン社の老朽設備の更新を進めて、コスト削減や品質向上を図る。過去2回の米国進出で培った知見を活用して競争力を高めながら、次の展開につなげていく。
ベトナム「TVP」社
チーバイ・インターナショナル・ポート(略称・TVP、社長・木下勝之氏)は共英製鋼がホーチミン市近郊で運営する港湾事業会社。敷地面積は約42万平方メートル。第1期工事は約5400万ドル(約60億円)を投じ、そのうち約25万平方メートルを造成する。パナマックス級の船舶が接岸できる300メートルの主岸壁、内航船が接岸する315メートルのバージバースの建設工事が順調に進ちょくしている。今年11月にも竣工予定で、年内開港を目指している。
同港湾には倉庫を2棟建設する計画だが、1棟はすでに完成し、VKS向けの鉄スクラップ在庫ヤードとして利用されている。もう1棟は他社製品も含めた鋼材の輸出を主目的とした倉庫とする計画だ。
第2期工事については、設計を含めまだ検討中だが、「3年後には操業を開始したい」考え。扱い量は第1期で年間約250万トン規模、第2期工事完了後は同500万トン規模にまで拡大することになるという。
TVPが扱う貨物のメーンターゲットは鉄鋼業関連。港湾近隣にはVKSのほか、新日鉄住金系列のCSVC、NPV、ブルースコープといった外資系、国内系など多数の鉄鋼ミルが操業している。鉄スクラップの扱いについてはVKS向けをメーンとしながら、「余力があれば、他社の分も手掛けたい」とし、他に薄板コイルの輸出入も視野に入れている。
木下社長は「開港3年目から数億円程度の利益を確保したい」と語る。カイメップ・チーバイ地区の貨物取扱量が増加を続ける中、TVPもベトナムの主要物流拠点となることで、同国南部の経済発展に貢献しながら安定収益を確保することは十分に可能とみる。そしてベトナム南部のみならず、アセアン地区の発展にも寄与する港湾を目指していく。