2連勝から3連敗、ソフトバンクに競り負けた楽天
下克上を狙った楽天の挑戦は終わった。22日のクライマックスシリーズ・ファイナルステージ第5戦。初回に先発の美馬が3点を失って劣勢に立たされると、4回にも3失点。大きなビハインドを背負わさられると、1点も奪えないままに完敗。「最後は何も出来ずに終わってしまった」という梨田昌孝監督の言葉通り、最後はソフトバンクに力づくで押し切られた印象だった。
天国から地獄のファイナルステージだった。西武とのファーストステージで初戦に敗れながら、2、3戦目に連勝して乗り込んできた福岡の地。ファーストステージでの勢いのまま、初戦の塩見、2戦目の辛島と2人の左腕が好投して連勝し、最高のスタートを切った。下克上への現実味が膨らみ出して迎えた第3戦。一気に流れが変わった。
先発の則本が7回まで11三振を奪う意地の投球を見せたが、序盤に5点を失ったことが誤算だった。5-5の同点で迎えた8回に福山が決勝の2ランを許して敗戦。アドバンデージを含め2勝2敗のタイに戻されると、第4戦も先発の岸がピリッとせず、5回2失点で降板。4回途中5失点でKOされた第5戦の美馬と、シーズン中にチームを支え続けて来た先発3本柱で立て続けに3連敗。今季の戦いは、夢半ばにして、終わりを迎えた。
今季は8月まで首位に立ちながら、2度の大型連敗があるなど終盤戦に大失速。2位も確保出来ずに、3位に転落してしまった。CSも序盤に飛ばした楽天が終盤に失速。逆にソフトバンクは徐々にペースを上げ、最後は力の差を見せつける。6か月超に及んだペナントレースが、ファイナルステージの5試合に凝縮されたかのよう。梨田監督は「個々の力もそう。夏場にみんな（打率を）1分以上、2分近く下げたり、1年を通してコンスタントに出来なかったところが連敗に繋がった」と今シーズンを語った。
堂々とした投球、力強い真っ直ぐ…ルーキー藤平が見せた可能性
ソフトバンクとの力の差も感じさせられるシーズン、そして、ファイナルステージだった。指揮官は「残念でしたけど、収穫になりました。失敗という意味で、それを来年に生かしていければ。僕の力の無さも含めて、ですね」と語り、ファイナルステージ5試合での敗退の中にも来季に向けて収穫があったとも口にした。
その収穫の1つ、来季への光明となりそうなのが、ドラフト1位ルーキー藤平尚真投手の存在だ。
この第5戦、美馬の後を受けて2番手でマウンドに上がった藤平。ファーストステージ、ファイナルステージ通じて、この日がCS初登板だった。慣れない中継ぎ登板ということもあり、マウンドに上がった4回に1点を失ったものの、2回2/3を投げて1失点。負ければ敗退の決まる一戦での中継ぎ登板という酷な状況にも関わらず堂々とした投げっぷり、そして力強い真っ直ぐには、ルーキーとは思えないほどの頼もしさを感じさせた。
今季、6連敗、10連敗と2度あった大型連敗を止めたのは、いずれもこのルーキー右腕だった。CSで先発登板させるプランもあったようだが、結果的に第2先発的な役割でブルペン待機することになり、出番はなかなかなかった。梨田監督は「藤平はいつか投げさせてやろうと思っていたんだけど。みんな、なかなかいいピッチングをしてくれていたんで。5回までに先発投手が降りることがあればと思っていたけど」とし、「ソフトバンク戦で初めて投げたけど、十分通用するボールを投げている。楽しみは楽しみで、いい経験になったと思う」と語っていた。
後の祭りではあるが、3、4戦目と先発の則本、岸がピリッとしなかっただけに、早めに藤平にスイッチしても良かったのでは、との思いも沸くが、エース級2人ということもあって継投には難しさもあった。とはいえ、藤平は来季、則本、岸、美馬に続いてローテの中核を担うだけのポテンシャルがあるのは間違いない。来季、打倒ソフトバンクに向けて、藤平がその鍵を握るかもしれない。
（篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki）
