DeNAラミレス監督の用兵の妙 「8番投手ウィーランド」から始まった逆転劇

DeNAのジョー・ウィーランド【写真:荒川祐史】

ラミレス采配際立つDeNA、下剋上へあと1勝 「8番・投手」

 23日のセ・リーグ、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第4戦は、3位・DeNAが1位・広島を4-3で下し、日本シリーズ進出へ王手をかけた。この試合でチームの初安打を放ったのは8番で先発した投手のジョー・ウィーランドだ。

 今年のラミレス監督は、108試合で先発投手を8番で起用している。打撃自慢の投手が多かった昭和の時代、「8番投手」は珍しくなかったが、最近はほとんどなくなった。今季のセ・リーグではDeNAのほかに投手を9番以外の打順で先発させた例は中日の1試合しかない。昨年のラミレス監督も、ずっと投手は9番で起用していた。

 8番に投手を据えるきっかけになったのが、ウィーランドだったと思われる。ウィーランドは、MLBでは1勝6敗、防御率6.32という成績しか挙げていない。打者としても12打数2安打、二塁打1本、打点2、打率.167。打撃が好きな投手ではあったが、傑出した成績ではなかった。

 しかし、ラミレス監督は、ウィーランドの打席での構えの良さを評価し、4月14日、ウィーランドを8番で起用。これを初例として、8番に投手を据えるようになった。

 ウィーランドは投手として10勝2敗、防御率2.98、終盤戦ではエースの活躍だったが、打者としても48打数11安打3本塁打12打点、打率.229をマーク。3本塁打はリーグ1位だ。

倉本は“恐怖の9番”に、“ラミレス・マジック”の妙

 投手を8番に置いた背景には、遊撃手に倉本寿彦が定着したことも大きい。倉本は四球が少ない一方で三振が多く、1、2番では使いにくい打者だが、打撃は勝負強い。この倉本を9番に置いたことで、下位打線で巡ってきた好機を逃すことなくモノにするケースが増えた。

 倉本は9番で出場した試合で414打数114安打2本塁打、46打点を稼いでいる。“恐怖の9番打者”が誕生したのだ。

 投手が8番で先発することで、打者としての自覚が芽生える。

 指名打者制がないセ・リーグでは、9番投手は打線の穴になる。ラミレス監督は、ウィーランドという強打の投手を見出して8番に据え、新しいオーダーを組むことで、打線の穴を小さくすることに成功した。

 ウィーランドはなぜか、広島戦にめっぽう強い。他球団の対戦打率はすべて1割台以下だが、広島だけは13打数7安打、打率.538、本塁打も大瀬良大地から2本、岡田明丈から1本とすべて広島戦だった。このために広島はウィーランドを警戒し、5回には先頭打者だったウィーランドを歩かせた。これがきっかけとなってDeNAの同点に追いつく猛攻が始まった。結果、この日のウィーランドは1打数1安打2四球、出塁率10割だった。

 DeNAの「下克上」はあと1勝で完成するが、その背景には、常識にとらわれない“ラミレス・マジック”とでもいうべき用兵の妙があるのだ。

(Full-Count編集部)

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