【東海地区の自動車向けプロパー商い】集購価格連動に異変か 鋼材値上げ、ユーザーにも浸透、中小向け部品販価据え置きも

 鋼材価格値上げの勢いが東海地区の流通市場にも強く出る中、本来ならば今下期(10月以降)から値下げとなる自動車部品二~三次下請けの元請向け販売単価(部品)が「上期比据え置きとなるケースが出た」と市場でささやかれ始めた。集購連動型のプロパー商いが、今下期はヒモ付き動向と連動せず「値上げ局面」になっていることに配慮したとの指摘も。地区鋼材流通市場では「そうした動きがどの程度波及するのか」に注目している。コストダウン意識が徹底している自動車部品関連だが、諸コストが上昇し人材不足も顕在化する中で、これまでのようなコストダウン図式が変調している可能性もある。

 自動車向けの集購(支給材)比率は年々高まっている。特にリーマンショック前後の大きな価格変動の中で比率は高まり、関係筋では「8割以上が支給材になっているのでは」とみる。

 しかし、材質や加工との関係などで支給材にはなじまない品種や取引もある。それらは、向け先が明確であれば、集購価格の推移に連動するのが一般的とされる。

 また、自達比率を維持することによって自社の収益性を保ってきた中小部品関連企業もあり、即座に支給材に移行することには躊躇(ちゅうちょ)する考えも根強い。

 諸コストが上昇を続け、人材確保もままならない状況となっている中では、今以上のコストダウン要請に耐えられなくなっている下請けが増えているという実態もある。

 自動車メーカーが部品メーカーから購入する部品の購入単価は、自動車ヒモ付き価格の動向から「半期遅れで動く」というのが一般的な認識。

 その際の鋼材価格(通常は集中購買方式。自動車部品の査定根拠ともなる)の動きが話題になるが、半期遅れのために「市場全体は上昇局面なのに、支給材は値下がりする」というケースもあり、特に、リーマンショック直後は足元の市場動向と大きく乖離(かいり)するケースも目立って関係者を困惑させた。

 しかし、ここへ来て「その動きが変わるのでは」との指摘が市場から出た。「集購外のプロパー商いだが、商習慣的に集購に価格連動するケース」について、足元の需給や価格動向を重視する姿勢に変わり「単純な連動から個別ケースを考慮しての対応に変わりつつある」との指摘だ。

 国内鉄鋼メーカーは、高いレベルの生産状況が続き「年末年始は品不足が顕在化する可能性が高まっている」との見方も強まっている。

 神戸製鋼所の動向なども、鋼材需給や市場全般にインパクトを与える。品種によっては、顧客の発注量が受注レベルを超えており、神鋼が供給難となれば、マーケット全体の新たな障壁となる。外貨の稼ぎ頭である輸出型のものづくり産業にダメージを与える可能性も指摘される。日本経済全体にとってのマイナス要因だ。

 こうした中、出てきた「二~三次下請けに対する部品購入価格据え置き」の話。集購連動の建前からすれば値下がりとなって当然だが、上期の大幅な値上げとのバランスなのか、目先の部品の安定供給や中小筋の財務体質などを考慮したのか、は定かではない。

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