【共英製鋼、目指せ100年企業 創業70年の軌跡と展望】〈(12)環境リサイクル事業〉医療廃棄物など年7万トン処理 PCB以外の産廃に対応

 共英製鋼の環境リサイクル事業は、(1)医療廃棄物を含む産業廃棄物(2)フロンガス破壊処理(3)自動車リサイクル(4)コンビニなど全国展開店舗の閉店改装管理(5)鉄源再生―の5事業で構成されている。

 1988年に山口事業所(山口県山陽小野田市)での医療廃棄物の溶融処理からスタート。現在は山口を中核に、枚方(大阪府枚方市)名古屋(愛知県飛島村)の各事業所、子会社の関東スチール(茨城県土浦市)、グループ会社の中山鋼業(大阪市)の5事業所で年間7万トン(16年度実績)の産業廃棄物を処理している。

 連結業績も、17年3月期で売上高65億円、営業利益10億円のほか、16年度で13億9千万円、15年度で14億2千万円の営業利益を計上。主力の鉄鋼事業に次ぐ経営の3本目の柱に成長している。当面、年商100億円・営業利益10億円以上を目指している。

 中核拠点の山口は、年間7万トンの産廃処理量の80%を扱う。24時間操業の電気炉による無害化溶融処理を軸に、カーシュレッダー、ガス化溶融炉、トナーなどの加熱処理設備、廃液中和処理設備などの設備と、約16万8千平方メートルの管理型処分場(容量能力約89万立方メートル)を持ち、「山口で処理できないのはPCB(ポリ塩化ビフェニル)のみ。その他の産廃はほぼすべてリサイクル対応できる」(小野晃メスキュード部長兼本社環境リサイクル部長)。

 医療廃棄物、自動車・建産機、自販機、家電・IT機器、フロンガス、飲料、ペットボトル、車載リチウムイオン電池、炭素繊維やCFRP、コピー機のトナーカートリッジなど産業廃棄物といわれるほぼすべてを処理している。

 従来、医療廃棄物は焼却処分が多かったが、92年の「感染性廃棄物処理」に関する法律施行で、高温の電気炉による溶融処理が有効な処理方法として認知され、特許も取得した。共英では法律施行前の88年から電炉溶融による「メスキュードシステム」(医療廃棄物を安全かつ完全に溶融処理するシステム)を全国に先駆けて運用開始。安全性と信頼性を軸に顧客を増やし、全国の医療機関の20%以上と契約を結んで医療廃棄物処理を行っている。

 2002年には医療廃棄物の処理費の一部を積み立てて社会還元する「メスキュード医療安全基金」を、共英メソナや中山鋼業などグループで設立。毎年医療関係団体に助成金を贈呈している。今17年度までの15年間で約120団体に合計約3億6千万円を寄贈した。

 自動車リサイクルでは、05年にカーシュレッダー(能力・年間6万台)とガス化溶融炉を導入。廃車のシュレッダー加工と、残ったシュレッダーダストをガス化溶融炉で一酸化炭素、水素ガス、スラグに分離して、ガスは鋼材圧延加熱炉用燃料に、スラグは道路舗装向けなどに出荷している。ガス化溶融炉は、電気炉で溶融しにくい、硫黄分の多いものや、水分を多く含んでいるものなどを処理する。

 15年度からは炭素繊維破砕機を導入。砕いた炭素繊維を電気炉に投入してカーボン源にするリサイクルも開始した。

 コピー機のトナーカートリッジも加熱設備で固形化し、コークス代替品として販売している。コークスの1・3倍の熱量があり、多方面で活用されている。飲料は、中和処理設備でバクテリアによる糖質分解で真水化し、工場の冷却用水に使用している。コンビニなど全国展開している店舗の解体や改装に伴う廃材処理も全国展開で対応している。コンビニの廃材は80%が鉄。鉄リサイクル業者と連携し、これらの廃材を製鋼原料として共英グループ工場や他の電炉メーカーに納入するビジネスを展開している。

 山口事業所は国内の普通鋼電炉工場で唯一の24時間操業。産廃物の処理は、「廃掃法」に基づき60日(特別管理廃棄物)~90日(その他の廃棄物)以内に処理をしなくてはならないため、毎日搬入される産廃物を処理するには24時間操業の電気炉は大きな武器になる。

 それでも扱い量は年々増加。山口だけでは対応しきれない時が来る。「このまま行けば、山口も処理量に限界が来る。環境リサイクル事業のさらなる発展のために、他社との提携やM&Aも含めた取り組みが必要だ」と共英製鋼の森光廣社長は先を見据えている。

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