CSファイナルステージ両軍データを分析、見えたDeNA「下克上」の理由

DeNAのアレックス・ラミレス監督【写真:荒川祐史】

ラミレス采配ズバリで、圧倒リーグ優勝の広島下す

 史上最大ゲーム差からの「下克上」が実現した。10月24日、DeNAは広島を9-3で下し、CSファイナルステージを4勝2敗(広島のアドバンテージ含む)で勝ち抜け、3位からの日本シリーズ進出を果たした。両チームのシリーズ成績を比較し、DeNAの勝因を分析しよう。

○打線
両軍の打席数上位8人の打撃成績

【DeNA】
桑原将志 5試22打8安1本4点2盗 打率.364
梶谷隆幸 5試15打3安1本2点0盗 打率.200
柴田竜拓 5試14打5安0本0点0盗 打率.357
筒香嘉智 5試19打5安3本4点0盗 打率.263
宮崎敏郎 5試19打7安2本4点0盗 打率.368
ロペス 5試19打5安0本1点0盗 打率.263
倉本寿彦 5試15打3安0本0点0盗 打率.200
嶺井博希 3試13打3安0本0点0盗 打率.231

【広島】
田中広輔 5試18打6安0本2点1盗 打率.333
菊池涼介 5試14打3安0本1点0盗 打率.214
丸佳浩 5試16打4安1本3点1盗 打率.250
松山竜平 5試15打3安0本0点0盗 打率.200
西川龍馬 5試14打4安0本2点0盗 打率.286
バティスタ 5試14打3安0本1点0盗 打率.214
新井貴浩 4試13打5安1本2点0盗 打率.385
會澤翼 5試11打1安0本0点0盗 打率.091

 DeNAはレギュラーシーズン後半の陣容そのままで戦うことができた。突出した数字の選手はいないが、ほぼシーズンと同じ戦い方ができていた。中軸打者の破壊力は強力だった。

 広島は4番の鈴木誠也が骨折で離脱、正三塁手の安部も1打席だけの出場にとどまり、エルドレッドも故障で登録を外れた。そんな中で、昨年のCSファイナルステージMVPの田中広輔は今年も好調を維持したが。全体として、DeNAに比べて迫力不足だったのは否めない。

 驚くべきは、投手の打撃成績だ。

DeNA投手合計 9打4安0本1点0盗 打率.444
広島投手合計 6打0安0本0点0盗 打率.000

 ラミレス監督は、CSでも投手を8番に据えた。第4戦ではウィーランドが攻撃の起点となって勝利に貢献したが、安打を打ったのはウィーランドだけではない。石田健大1打数1安打、井納翔一2打数1安打1打点、三嶋一輝1打数1安打。投手が打者として機能し、打線の穴を埋めたのだ。

 広島の11人の投手が1度も出塁できなかったのに対し、DeNAの投手陣は6回も出塁した(4安打2四球)。この差は大きかったと言えるだろう。

投手陣の成績を比較すると…

○投手陣

【DeNA】
先発投手陣
石田健大 2試0勝1敗 6回 防御率7.50
井納翔一 1試1勝0敗 5.1回 防御率0.00
ウィーランド 1試1勝0敗 5回 防御率5.40
濱口遥大 1試1勝0敗 7回 防御率2.57

救援投手陣
山崎康晃 4試0勝0敗2S0H 4回 防御率0.00
エスコバー 3試0勝0敗0S2H 2.1回 防御率0.00
パットン 3試0勝0敗0S2H 3回 防御率0.00
三上朋也 3試0勝0敗0S2H 2回 防御率4.50
砂田毅樹 2試0勝0敗0S0H 0回 防御率0.00
濱口遥大 1試0勝0敗0S1H 2回 防御率0.00
今永昇太 1試0勝0敗0S1H 2回 防御率0.00
須田幸太 1試0勝0敗0S1H 0.1回 防御率0.00
三嶋一輝 1試1勝0敗0S0H 2回 防御率0.00

 DeNAは、ファーストステージの翌日からファイナルステージが始まる厳しいスケジュールだった。初戦は石田が負けたもののコールドゲームで完投。2試合目、3試合目は濱口、井納が好投、雨で2日開いたことで、第4戦では現時点で最も信頼できるウィーランドを休養十分で投げさせることができた。

 ラミレス監督は、投手陣に関しては総力戦の意識があった。第5戦は石田が初回に失点すると、2回から継投策に出る。2試合目に先発した濱口や、チーム最多勝の今永を救援に回すなど、CS仕様の戦いに徹した。
救援陣で失点したのは三上朋也だけ。9ホールド、2セーブとほぼ完璧だった。

【広島】
先発陣
野村祐輔 2試0勝2敗 8回 防御率7.88
薮田和樹 2試1勝1敗 9回 防御率4.00
ジョンソン 1試0勝1敗 5回 防御率1.80

救援陣
一岡竜司 3試0勝0敗0S0H 3回 防御率3.00
今村猛 4試0勝0敗0S0H 4回 防御率0.00
大瀬良大地 1試0勝0敗0S0H 1.2回 防御率16.2
九里亜蓮 2試0勝0敗0S0H 2回 防御率0.00
ジャクソン 3試0勝0敗0S0H 3回 防御率6.00
中崎翔太 3試0勝0敗0S0H 3回 防御率0.00
中田廉 2試0勝0敗0S0H 1.1回 防御率0.00
ブレイシア 1試0勝0敗0S0H 1回 防御率9.00

 広島も1戦目で薮田がコールドゲームで完投、2戦目は野村、3戦目はジョンソン、4戦目は薮田、そして5戦目は野村と先発投手で回した。しかし、先発は初戦を除く4試合で、いずれもDeNAにリードを許す状況で降板した。

 今季は先発で規定投球回数に達した大瀬良大地は、調子が上がらなかったためローテから外れ、救援で1試合投げたのみ。救援陣は、出来不出来のばらつきがあったが、一度もリードした状況で救援投手がマウンドに上がることがなかったため、ホールドもセーブも付かず。宝の持ち腐れの感があった。

 DeNAと広島では「現有戦力」の格差があったことは否めない。広島の戦力は、レギュラーシーズンから大きく落ちていた。しかし、ラミレス監督はレギュラーシーズンの実績にとらわれず、思い切った選手起用をした。それがことごとく当たり、思わぬ勝利となった。まさに「ラミレス・マジック」の勝利と言えるのではないか。

(Full-Count編集部)

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