今さら聞けない「ホルモン」って一体なに?

ホルモンバランスが乱れる原因は、生活習慣やストレスがありますが、そもそもホルモンって体の中でどんな働きをしているのか知っていますか?

「ホルモン」ってそもそも何のためにある?

アンチエイジングや健康について興味を持っている人が増えるにつれて、非常に専門的な知識を持つ女性が増えてきました。特に、美容の為に「ホルモンバランスを整える」大切さは、最近では、多くの人が知っている知識かもしれません。

ホルモンバランス、とよく言いますが、ホルモンって一体何なのか、皆さんご存知でしょうか。ここでは、知っているようで知らない「ホルモン」についてお話ししていきたいと思います。そもそも、ホルモンはどんな働きをするためのものなのか、まずは、私たちの体の仕組みについて解説していきます。

私たちはよく「今日は体調がいい」「なんとなく調子が悪い」と言います。そのまま無理を続けていると病気になってしまうこともありますが、健康な人であれば、しっかり休養を摂ったり気分転換をしたりすることで、再び元の状態に戻ります。

これは、私たちの体は、常にいつも一定の状態に保とうとする力が働いているからです。これを「ホメオスターシス」(からだの恒常性)と言います。

たとえば、私たちの体温は、季節や外気温に影響されることなくいつも36℃前後で保たれています。これは、ホメオスターシスを維持する働きが私たちの体に備わっているからです。ホメオスターシスを維持できなくなると、私たちの体は生命の危機にさらされます。外が暑いからといって、体温が40℃くらいまで上昇してしまったら、大変なことになりますよね。

このホメオスターシスを維持しているのは、2つの登場人物がいます。1つは神経系。そしてもう一方がホルモンです。体の状態がいつもと違ってくると、ホルモンが分泌されて、神経系と協力しながら、体を元の状態に戻そうとするのです。

ホルモンを分泌しているのは、「内分泌腺」という部位です。ホルモンを必要とするような事態に直面すると、内分泌腺からホルモンが分泌されます。

ホルモンの働き

体の中で作られるホルモンは、非常にたくさんの種類があります。そしてその多くは、相反する作用を持つ、対になるホルモンがあります。

たとえば、空腹になって血液中の糖分の量が減ると、血糖値を上昇させるホルモンが分泌されます。食事を摂取したりすることで血糖値が上昇すると、今度は、血糖値を下げるホルモンが分泌されます。この相反する2つのホルモンは、互いに調整し合ってコントロールしています。

あるホルモンの分泌量が増えると、対になるホルモンの分泌量が減り、減りすぎると、また逆のホルモンの分泌量が増える……これを「ネガティブフィードバック」と呼びます。

このネガティブフィードバックのバランスが崩れると、体のホメオスターシスは崩れてしまい、病気になってしまいます。ホルモンを分泌する内分泌腺の異常によって病気になることもありますが、日ごろの生活習慣が乱れることで、ホルモンの分泌バランスがおかしくなって、病気になることもあります。

たとえば、糖尿病は、過剰に糖を摂取することで、うまくホルモンが分泌調整されなくなって起こる疾患です。

「無理をすると体を壊す」というのは、すなわち、ホルモンの分泌の調子が悪くなる、ということ。近年問題視されている「生活習慣病」は、まさにホルモンの分泌がうまく調整できなくなって、ホメオスターシスが崩れてしまうことで起こります。また、ストレスで体調を崩すのも、ストレスが神経系とホルモン分泌のリズムを崩してしまうことが原因となります。

そもそもホルモンの名前の由来は、「呼び覚ます」というギリシャ語です。眠っているからだを目覚めさせて、成長や代謝を促すように見える作用を示すところから、こういう名前がつけられました。

研究が進んで、対になるホルモン同士で、ただ体の機能を促進しているばかりではなく、時には、体の働きを抑制する作用があるものもあることがわかっているので、必ずしもこの意味が常に当てはまるわけではありません。

ホルモンの種類によって、ホルモンのタイプや、分泌される器官、分泌を調整している物質は、さまざまです。ホメオスターシスは、体の実際の調子だけではなく、メンタル面についてもホルモンが影響しており、ある種のホルモンの分泌が低下したら、無気力になったり鬱になりやすくなったりすることがわかっています。

ストレスを軽減させてくれるホルモンや、イライラを抑えるホルモン、また、恋愛感情を継続させるホルモンなど、一言で「ホルモン」と言っても、本当にたくさんの種類があります。

次にホルモンと賢く付き合って、毎日をご機嫌に過ごす方法をお話ししていこうかと思います。

どんな毎日を送っているかで、これからの体が決まる。

ホメオスターシスが崩れてしまうと、私たちは体調を崩したりイライラするわけですが、ホメオスターシスが崩れてしまう、すなわちホルモン分泌と神経系の伝達がうまくいかなくならないためにできることを考えましょう。

まずは、「生活習慣を正すこと」

これが、実は一番実行するのが難しいかもしれませんが、ホルモン分泌と生活習慣は、密接に関わっています。たとえば、夜更かしすると、成長ホルモンというホルモンの分泌が不具合を起こします。これは、成長ホルモンが、夜22時~夜中2時の間に最も多く分泌されるホルモンであるので、この時間帯に活発に活動していると、分泌機能がうまく働かなくなります。

成長ホルモンの働きは、「体を成長させる」他に、代謝を促進したり、肌の細胞のターンオーバーにも関わっているので、「夜更かしすると肌荒れする」「お肌のゴールデンタイム」と呼ばれるのは、この成長ホルモンの分泌のことを言っているのです。

また、睡眠時間だけではなく、食生活、特に、食事を摂る時間帯や順番には注意しましょう。仕事をしているとなかなか難しいかもしれませんが、できるだけ決まった時間に食事を摂るようにしてください。

食事の摂り方は、健康のカギ

食事と食事の間の時間が開き過ぎると、次の食事を摂取したときに一気に血糖値が上昇して、それをコントロールするために大量のインスリン(血糖値を下げるホルモン)が分泌されます。

はじめのうちはうまく調整できていても、それが長年繰り返されると、インスリンを分泌しているランゲルハンス島が、血糖値の上昇をうまく感知できなくなって、インスリンが分泌されず、血糖値が上がりっぱなしになってしまいます。

この病態を「糖尿病」と言いますが、糖尿病になると、血液中の糖によってさまざまな臓器がダメージを受けて、いろいろな合併症が出現してきます。

ダイエットの為に絶食を繰り返している人も、普通の食事に戻した時に、一気に上昇した血糖値を下げようとしてインスリンが分泌され、一時的な低血糖状態になったりすることもあります。

ドカ食い、早食いをする人も要注意。早食いをすると、なかなかおなか一杯にならないのも、実はホルモンのせい。満腹を感じるのは、消化管にあるセンサーによって分泌が促進されるセロトニンというホルモンが、満腹感を感じさせてくれるため。

早食いをすると、消化管にあるセンサーがうまく働かず、信号が送られずに、セロトニンが分泌されないからです。このセロトニンの材料は、タンパク質とビタミンBなので、ビタミンBが不足しても、セロトニンがうまく合成できなくて満腹を感じにくくなってしまいます。

ストレスやアルコール摂取でビタミンBが減少していると、食べても食べてもおなかいっぱいにならないのは、このセロトニンがうまく分泌されていないからです。ドカ食いをすると食べ過ぎてしまうのは、ドカ食いをすることでセンサーが鈍ってしまい、セロトニンの分泌が起こらないからです。

ダイエットをするのなら、絶食をするのではなく、バランスよくゆっくりよく噛んで食事をすることが大切です。そして、カロリーが低いものを選んだ食事メニューも大切かもしれませんが、とりわけビタミンBはしっかり摂取するようにしてください。ビタミンBは、肉や魚、ピーナッツなどに豊富に含まれます。

なかなか摂る機会が少ないのであれば、サプリメントなどで摂取するのもいいかもしれません。ビタミンBは、糖代謝や脂質代謝にも大きく関わっているビタミンなので、不足すると、摂取した糖分や脂肪分がエネルギーに変換されにくくなってしまって、太りやすくなります。

「食べてないのに太る」という人は、ビタミンBが不足しているのかもしれません。

女性ホルモンの助っ人は「大豆」

また、女性であれば特に大切なのは、女性ホルモンのバランスです。ストレスが溜まったり無理なダイエットをすると、女性ホルモンの分泌はすぐに崩れてしまいます。生理痛や生理不順だけではなく、肌荒れや情緒不安定の原因になります。

女性ホルモンのバランスと働きを助けてくれるのは、大豆に含まれるイソフラボンです。イソフラボンは、女性ホルモンであるエストロゲンに似た働きをする栄養素。エストロゲンは、女性を女性らしく美しく魅せる働きをするホルモンで、不足しているときに補ってくれる働きがあります。

また、女性ホルモンが過剰になりすぎている時には、ホルモン分泌量を調整してくれる働きもあり、ホルモンバランスを整えてくれます。毎日の食事に、大豆イソフラボンを豊富に含む豆乳などの大豆製品を取り入れてみてはいかがでしょうか。

ストレスがホルモンバランスを乱す原因に

あとは、ストレスをためないこと。ストレスは、ホルモンの分泌調整機構を乱す要因になります。ストレスで生理が乱れたり、過食に走ってしまったり、肌荒れしたりするのも、ホルモンバランスが乱れているせいです。ストレス発散の仕方は人によっていろいろですので、自分なりのストレス発散方法を見つけてみてはいかがでしょうか。

ちなみに、ストレスを軽減させてくれるホルモンは「セロトニン」です。セロトニンが不足していると、ストレスがたまりやすくなってしまいます。ストレスをためないようにすることも大切ですが、このセロトニンも大切。既に挙げた通り、セロトニンの材料はビタミンBとタンパク質。しっかりビタミンBを摂取しておくことは、ダイエットだけではなくストレスを減らすためにもとても大切です。

いかがでしたか。ホルモンのことを知り、ホルモンバランスを制して、今よりもっと健康で素敵な女性を目指してみてはいかがでしょうか。

(文:山下 真理子)

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