大林組が「現場ロボット溶接工法」開発 鉄骨柱・梁の溶接作業を全自動化

 大林組はこのほど、「現場ロボット溶接工法」を開発したと発表した。鉄骨造建築物の柱・梁の現場溶接作業の全てを自動化し、省力化と高品質化を実現する。既に東日本旅客鉄道の品川新駅(仮称)新設ほか工事などに適用している。

 本工法は溶接作業の難易度にも関わらず複数のロボットを並行して稼働させることで、溶接技能者よりも高い作業効率を実現する。1人のオペレーターがロボット2台を同時に稼働させた場合、単位時間当たりの溶接量の比較では溶接技能者の1・5倍程度となり、溶接作業の省人化を図ることができる。

梁下フランジの現場溶接

 また、溶接技能者の経験や技量により溶接品質にばらつきが発生し、検査結果によっては再施工を要するケースもあったが、現場ロボット溶接工法ではロボットの特長である施工再現性により高い溶接品質を示す良好なビード(1回の溶接作業で作られる溶接金属)が安定的に得られる。

 鉄骨柱・梁での現場溶接箇所は梁上フランジ、梁下フランジ、梁ウェブ、円形鋼管柱の継手、ボックス柱の継手、角形鋼管柱(コラム)の継手の6カ所となる。このうち梁上、円形、ボックスについては1990年代からロボット溶接が導入されている。しかし、その他については溶接の難易度が高く複雑な機械制御を要するため安定した品質を確保できず、ロボット化が困難だった。

 同社は梁下についての課題を解決し、2015年2月に「現場上向きロボット溶接工法」を実用化。16年12月には、溶接の速度制御機能を改善することで角形についても現場溶接作業をロボット化している。今回、電流や電圧などの溶接条件や溶接時の動作などをさらに改良することで、梁ウェブの継手でも現場溶接作業のロボット化を実現。鉄骨造建築物の全現場溶接作業の自動化に至った。

 今回、品川新駅(仮称)の工事では梁ウェブの継手に現場ロボット溶接工法を適用。大断面の鉄骨梁に対しても高い溶接品質が得られることを確認した。建設業界で技能労働者不足が深刻化する中、同社では今後、本工法を積極的に適用し改良を重ね、安全で高品質な建築物を提供していく方針。

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