金属行人(10月27日付)

 ある取材先の企業はこれまで業績が右肩下がりとなっていた。社員も未来の展望が描けず、ムードもおのずと暗くなる。前社長はイベントなどの開催によって士気を高めようとしていたが、事業が縮小する中では焼け石に水のようなむなしさもあったと思う▼その会社に今年4月、新しい社長が就任した。社員一人ひとりと一対一で面接を実施。率直な意見を聞いた。相当な社員数の会社だが、意見が吸い上げられ分析されていく。内容を見せていただいたが、かなりストレートに不満や要望を述べていたようだ▼こうした意見や会社の現状を分析し、社長を中心に緻密な成長戦略が描かれていく。決して夢物語ではないが、希望の持てる内容だった。また半期に一度社員を集め、受注状況や収益状況を開陳。非常に透明性が高く、他事業のこともよく分かる。酒肴を交えながら楽しいムードで行っているようだ▼就任から半年ながら社内のムードはかなり変わったとの声も聞いた。取材の中で社員のモチベーションの大切さをよく耳にする。やる気が高まれば自然と良い仕事ができる。そのためには社員の納得感が大事だろう。いつもトップダウンだけではなく、下からの声を真摯に吸い上げる姿勢が業績の好転にもつながっていた。

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