【インドネシアに進出する日系鋼管関連企業、ジャカルタ近郊の工業団地から(6)】〈第一高周波工業・ジャカルタ駐在員事務所〉高周波誘導加熱技術で進出検討 日系、地場両企業へ技術プレゼン

 高周波ベンディング・表面処理、誘導加熱機器などの製造販売を手掛ける第一高周波工業(DHF、本社・東京都中央区、社長・佐藤昌俊氏)は昨年10月、ジャカルタ市内に駐在員事務所を設立した。1年間、日系、ローカル双方に同社が持っている高周波誘導加熱など独自技術の啓蒙活動を続けてきた。

 DHFでは以前からグローバル化、海外進出事業に注力。2010年12月には、中国の江蘇省南通市にポリエチレンライニング鋼管の加工を行う現地法人「第一高周波工業管件(南通)」を立ち上げている。その後、東南アジアについてもインドネシアをはじめマレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムなど東南アジア諸国を中心に長期出張ベースで現地調査を行った。

 最終的にインドネシアに事務所を出したのは、世界第4位の約2億5千万人の人口で、国民の平均年齢も30歳前後と今後購買層の増加が見込まれたこと、現地のガスパイプラインや電力プラント、インフラ整備などのプロジェクト案件の計画が多いことなどを考慮した。また、大手ローカル企業の商品知識や技術レベルの高さも進出の決め手となった。

 DHFの経営戦略部海外戦略室に在籍していた内山孝太課長、高岡大祐氏が現地事務所に赴任。所長は内山氏が務めている。内山所長自身は、かつて父親の仕事の関係で約5年間ジャカルタに住んでいた。土地勘があり、インドネシア語も堪能だ。

 駐在員事務所(日本人2人+現地スタッフ2人の計4人体制)なので、まだ受注活動は行っていない。DHFが持つ高周波誘導加熱によるベンディング鋼管技術のニーズが見込める現地のオンショア・オフショアのガスパイプライン案件、火力・地熱発電、LNGプラント、石油精製プラントなどの案件を調査しつつ、自社の技術・サービスをPRしている。

 当初は現地に進出する日系企業の案件をメーンに調査していたが「並行して行っていたローカル企業へのPRが功を奏し、現在ではローカル企業からの引き合いが増加している。ジャカルタとスラバヤ地区を中心に日本から出張ベースでエンジニアを動員するなどして施主やユーザーに対する技術プレゼンテーションに注力している」(内山所長)という。今年7月には、延べ50人面接した後に元日系企業に勤めていた現地営業マンを採用。非常に優秀で、ローカル企業へのPRの戦力となっている。

 「インドネシアは高品質=高級品(高額)という概念が成り立たない文化。ハイグレードとミドル・ローグレードの全方位を狙っている。ただ一方で、日系企業を模範としているローカル企業も多い。日系とローカルがコラボレーションするような開発案件も増えている。どの企業がプロジェクトを主導しているかによって、ニーズや狙い方が大きく変わる」と、内山所長は現地プロジェクト捕捉の難しさを語る。

 約1年間の現地調査を経て、今年中にはDHFとして何らかの方向性を出す方針。最終的には、現地に加工工場を出すことを目標としている。

 高周波誘導加熱によるベンディング鋼管のほか、同社の他事業である表面処理や各種装置・機器の製作、バイメット製品などでの可能性も探る。「DHFが日本国内で手掛ける高周波誘導加熱による加圧一体型の機械式鉄筋定着工法『Tヘッド工法』などは、今後多くのインフラ・建築案件が見込まれるインドネシア国内では施工性やコスト面で必ず需要があるはず。地道に種まきをして、将来的には地場で加工できれば」(内山所長)と構想を練る。

 今後、インドネシアでどのような受注活動を展開するか。また同地からASEAN全体を睨んだ営業展開も注目される。

© 株式会社鉄鋼新聞社