平成29年 寡婦控除(寡夫控除)の書き方・記入例

税法上、離婚して扶養親族がいる人や配偶者と死別した人は、税額を軽減してもらえます。これを寡婦控除(寡夫控除)といいます。会社員がこの所得控除を受けるには、年末調整の書類のとある箇所に○印をつけ必要があります。寡婦控除・寡夫控除の適用ポイントと書類の書き方を確認しておきましょう。

寡婦控除(寡夫控除)を受けられると税金が安くなる

配偶者と死別したり離婚をしたりすると、所得控除の額が上乗せされ、税額が軽減される仕組みがあります。これを寡婦控除(男性の場合は寡夫控除)というのですが、適用条件および所得控除の上乗せ額が、女性と男性とでは異なります。

まずは女性の場合からみていきましょう。

寡婦控除の要件と控除額

次のどちらかの条件を満たせば税法上「寡婦」とみなされ、寡婦控除が適用されます。つまり、所得控除の額に27万円を加算することができます。

1. 夫と死別後、婚姻せず合計所得金額が500万円以下(扶養親族がいない場合)

2. 夫と死別もしくは離婚後に婚姻せず、扶養親族がいる場合

1で注意したいのが、夫との別離する状況に離婚は含まれず、死別だけという点です。合計所得金額500万円以下とは、年収でいえば688万8889円以下となります(給与所得者の場合)。子どもがいない、あるいは子どもを引き取らないといった離婚は含まれず、連れ添った夫に先立たれたケースなどが該当します。

一方、2では、合計所得金額500万円以下といった所得制限要件はありません。さらに、別離の状況に死別だけでなく離婚も含まれます。一般的には「子どもを引き取った上で離婚を決断した」というケースが想定されますが、要件には「扶養親族」とあるため、「子どもがいなくても、離婚後、所得の少ない親の扶養をしている」という状況でも適用可能になります。

※生計を一にし、合計所得金額38万円以下の人なら扶養親族にできます。また、生死が不明の状況でも死別と同様に取り扱うことができます。

寡婦控除の要件を2つとも満たすと所得控除額がアップ

では、上記の2つの条件をどちらも満たす人は、税法上どのような取り扱いとなるのでしょうか。この場合は「特定の寡婦」といって、所得控除の額が27万円から35万円に拡大されます。

男性の場合はちょっと厳しい?寡夫控除

男性側にも寡夫控除の制度はあります。ただし、女性と比較するとやや厳しく、所得控除の上乗せ額も少なくなっています。

寡夫控除が適用されるには、扶養親族である子がいるという扶養親族要件と、合計所得金額が500万円以下という所得制限要件とを同時に満たす必要があります。つまり、女性の「特定の寡婦」の要件にあてはまらなければならないのです。

また、所得控除の加算額は、寡婦控除と同じ27万円です。男性の場合、特別の寡夫という規定はないため、35万円という上乗せ額は存在しません。

寡婦控除、特定の寡婦、寡夫控除の要件をまとめたのが以下の表です。離婚&死別要件、親族要件、所得制限要件という3つのポイントで整理してみるとわかりやすいでしょう。

寡婦控除・寡夫控除の要件とりまとめ(図表:筆者作成)

年末調整の書類で寡婦(寡夫)控除はどう書く?

では、年末調整で自分が寡婦(寡夫)であることを明らかにし、寡婦(寡夫)控除を適用してもらうためには、どの書類にどのように記載すればいいのでしょうか。

書類の種類は扶養控除等(異動)申告書、記載箇所は書類の中央やや下段あたり、「主たる給与から控除を受ける障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生」の欄(下記、記載例ではブルーで囲んだ箇所、実際の書類はブルーで囲われていなない)に印字されている「2 寡婦」「3 特別の寡婦」「4 寡夫」のいずれかに○印をつけるだけです。

扶養控除等(異動)申告書 記載例抜粋(出典:国税庁資料より)

意外と多い寡婦控除(寡夫控除)のし忘れ

寡婦(寡夫)控除が受けられるにもかかわらず、実際には控除されていないことも多いようです。

年末調整時の事務処理をイメージしてみてください。書類が配布され、回収期日が伝えられるだけではありませんか。「あなたは離婚していますか?子どもはどちらが面倒をみていますか?」などは聞きづらい情報でもあることから、細かくヒアリングされることが少なく、さらに扶養控除等(異動)申告書の記載方法を教えてくれることがない勤務先がほとんどなのではないでしょうか。

やはり、年末調整を受ける対象者が控除を受けるための要件を理解し、扶養控除等(異動)申告書の該当箇所にきちんと記載するしかないのです。

(文:田中 卓也)

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