【日本S】ソフトバンクがDeNAに快勝、日本シリーズ初戦の勝敗分けた“普段着の野球”

ソフトバンク・工藤公康監督【写真:藤浦一都】

ソフトバンクがDeNAに快勝、初戦のポイントは?

 ソフトバンクが、理想的な形で初戦を勝利で飾った。28日にヤフオクドームで行われたDeNAとの日本シリーズ第1戦。パ・リーグ王者は初回、2回と得点を重ねてリードを奪うと、自慢の投手陣が反撃を許さず。中盤のビッグイニングで大差をつけて、10-1とDeNAを圧倒した。

 初戦に関して言えば、力の差、経験の差が大きな結果の差になって現れた。94勝を挙げてパ・リーグを制し、2年ぶりの日本一を狙うソフトバンクと、セ・リーグ3位で日本シリーズに進出したDeNA。主力のほとんどが日本シリーズを経験しているソフトバンクに対して、DeNAはシリーズ経験者はロペスと田中浩康の2人のみ。試合を見れば、ソフトバンクの工藤公康監督の言う「普段通りの野球」が出来たか出来なかったかが、勝敗を分けたと言えるのではないか。

 とにかく、ソフトバンクには気負いや硬さが感じられなかった。指揮官は「緊張はすごくしていたと思うんですが、先頭が出て、ウチのパターン、初回のパターンになって『よし行くぞ』という風になったんではないかと思う。柳田くんの初回のヒットが大きかった」と振り返るが、初回に柳田が中前安打で出塁し、デスパイネの左翼線への適時二塁打で幸先よく先制点を奪った場面に緊張は感じなかった。

 楽天と戦ったクライマックスシリーズ(CS)のファイナルステージでは、ちぐはぐな戦いを展開し、投打の歯車が噛み合わないまま連敗した1、2戦目の方が緊張感を感じさせた。その時のような重苦しさはグラウンド上にはなかった。いつも通りのソフトバンクの戦いぶりで、今季、圧倒的な強さを誇った先行逃げ切りの勝ちパターンに早速、持ち込んだのだ。

2ランの長谷川勇に迷わず代打、2戦目以降を見据えた起用も

 そして、DeNA先発の井納が、本来の姿を取り戻す前に攻め立てた。2回には長谷川勇が2ランを放ち、5回に右腕をノックアウトした。この回、工藤監督は、さらに勝負の一手を繰り出す。5回1死満塁となった場面。DeNAのラミレス監督は井納を諦め、左腕の田中をマウンドへと送った。ここで、工藤公康監督は、1打席目で本塁打を放っていた長谷川勇に迷うことなく、代打・川島を送った。

「次の1点というのが大きいのかなというのと、取られた後だったので早く取り返したいというのもあった。スパッと代えさせてもらった」。この川島が押し出し四球を選んだ。指揮官が取りにいった1点を狙い通りに掴むと、そこから一挙7得点のビッグイニングに繋がった。5回で大量10得点。逆にDeNA打線は幾分、制球に苦しんでいたソフトバンク先発の千賀にねじ伏せられた。ボール先行の状況でボール球に手を出して凡退したりと、序盤に乗り切れなかった千賀を助けた部分もあったように見えた。

 ソフトバンクは大勝の中でもきっちりと次戦以降を見据えたマネージメントも行なった。千賀を7回で降板させ、8回は森をマウンドに挙げ、9回はまず嘉弥真を送り、2死となったところで、9点差あるにも関わらず寺原を登板させた。「日本シリーズは投げないと落ち着かないピッチャーもいますので、投げて早く落ち着かせるため。次にしっかりと落ち着いた中で投げてもらうことも必要」と工藤監督は言った。 

 シリーズの主導権を奪えるかどうかの大事な第1戦。ソフトバンクにとって大きかったのは、1勝したこともだが、それ以上にCSファイナルステージでは取り戻すまでに3試合かかった“普段着の野球”を緊張感のある初戦で展開出来たこと。ただでさえ経験値に差のある両チームだけに、DeNAが本来の姿になるのに手間取れば、一気に決着になりかねない。

(Full-Count編集部)

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