【ニュースの周辺】〈JFE、ミャンマーで薄板建材生産〉高級品分野で差別化 ティラワ団地、進出を後押し

 JFEスチールやJFE商事など5社は31日、ミャンマーでの薄板建材事業設立を発表した。現状では市場規模が小さいミャンマーだが「東南アジア最後のフロンティア」として潜在的な成長性は高い。JFEは商社などとともに、いち早く同国で付加価値の高い鋼材の現地生産に乗り出し、鉄鋼需要の掘り起こしを進める。

 同事業は、JFEスチールやJ商、伊藤忠丸紅鉄鋼、阪和興業、シンガポールのメランティ・スチールを株主に、シンガポールで持株会社「JFEメランティ・ミャンマー・ホールディングス」を設ける。投資額は約8500万ドル(96億円)。薄板建材の知見のある商社やパートナーと組むもので、JFEスチールと阪和が海外で合弁事業を形成するのは初となる。

 このシンガポール持株会社の完全子会社として、ミャンマー法人の事業会社「JFEメランティ・ミャンマー」を置く。ミャンマー政府は投資法の整備を進めているが、今後の行方を見極めるため、二層体制を採った。

 JFEによると、ミャンマーの薄板建材需要は現状で年間30万トン。地場では韓国系のミャンマー・ポスコが建材用の亜鉛めっき鋼板とカラー鋼板を造っているのみで、主に中国などからの輸入鋼材が席巻する「汎用材」の市場だ。

 ただ「昔のタイもそうだった」と言われるように、経済成長に伴い、今後は工場建屋など高付加価値の薄板建材需要が増えていくと見込まれている。

 JFEは20年に50万トン、25年には100万トンへ市場規模は拡大すると見ており、特に55%アルミニウム―亜鉛合金めっき鋼板を現地生産することで輸入材やミャンマー・ポスコと差別化。主に高級品ゾーンでのニーズを開拓していく考えだ。また進出を後押しする一助となったのが、日系商社が共同開発しているティラワ工業団地。製造業を行う上でミャンマーのアキレス腱とされた電力などインフラが整い、許認可もワンストップで行える環境が大きな魅力となった。

 かつて大手商社がこぞって開設したミャンマーの亜鉛鉄板事業は電力不足や経済制裁、過当競争などで苦戦し今は残っていない。時代は変わり、JFEは付加価値とインフラの両面を押さえる上で、日本ミルとして初のミャンマー現地生産に挑むことになる。(黒澤 広之)

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