国際航業株式会社の3次元計測を取り入れたドローンスクール

創立から70年を迎えた、航空測量の老舗・国際航業株式会社は、国交省の進めるi-Constructionに対応したドローンによる3次元計測を、ドローンスクールの「初級コース」の講習から取り入れ展開。「中級コース」の講習は3次元計測に特化、飛ばす技術だけでなく、計測現場での実践見据えた専門性の高いスクールを開校している。

国際航業、3次元計測を授業に取り入れたドローンスクールを展開


■日本の航測技術のパイオニア「国際航業」〜測量とともに発展

 終戦から2年後の1947年、焼け野原となり荒廃した国土復興のため、現在の国際航業株式会社の前身となる三路興業株式会社が設立された。当時、復興に必要な航測技術がなかったため、その後日本の航空写真測量のパイオニアである日本航測株式会社を立ち上げ、1954年には国際航業株式会社が誕生した。
 同社の歴史を振り返ると、その時代の測量に関わる先進技術を積極的に取り込み、社会の課題を解決し、常に業界をリードし発展してきたのがわかる。
 1954年、航空写真測量事業を推進するため、海外の最新鋭機器を導入し「国際航業型空中三角測量方式」という新技術を開発、1958年には日本初の電子計算機による「空中三角測量解析」を開発した。その後、80年代後半からGIS(Geographic Information System:地理情報システム)に取り組み、2000年以降、航空機レーザースキャナの導入により3次元地形モデルの作成を開始した。現在ではドローンを活用した3次元計測を前面に打ち出した特色あるドローンスクールも開校している。
 以上のように同社は先進技術によって情報の取得、解析、利活用を高度化し、地理空間情報コンサルティングのリーディングカンパニーの地位を築いている。

■航空測量のエキスパートが教えるドローンスクール

 国交省は2016年、3次元データの活用や「ICT の全面的な活用(ICT 土工)」等による施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図るi-Constructionを進めると発表した。背景には日本が抱える喫緊の課題となっている社会の高齢化と労働力不足があげられる。
 2010 年の 1 億2806 万人をピークに人口減少が始まり、しかも加速度的に高齢化も進みつつある。2030年までの20年間で、貴重な労働力である生産年齢人口は毎年1%近く減少していくと見込まれている。これまで経済を支えてきた勤勉で豊富な労働力は減少し続けるとしても、生産性を向上させていけば、経済成長を続けていくことは十分できるとの考えからi-Constructionを進めるというわけだ。

 同社では以上のような状況を背景に、建設・土木工事の全工程で3次元計測が必須になると考え、同社のこれまで積み重ねた経験を生かしたドローンスクールを2016年5月に立ち上げた。まさに国交省のi-Constructionの発表と呼応している。
 同社の「ドローン(UAV)運航・3次元計測スクール」は、航空測量のパイオニアである同社がこれまでに培ってきた技術を投入し、ドローンの運航方法と3次元データの計測方法を教習する実務者向けスクールとなっている。
 スクールではドローンを安全に運航し、さらに正確な3次元データを取得するための、正しい運航とデータ取得の方法を習得して業務にあたれるよう指導するとしている。

国際航業ドローンスクール Q & A 初級から測量講習

 同社の事業開発本部3Dセンシング事業部の今村晋二さんと椎名俊司さんのお2人にお話をうかがった。

国際航業 事業開発本部3Dセンシング事業部の今村晋二さん (左)と椎名俊司さん。

ーJUIDAに加盟するドローンスクールは100社を超えているが、国際航業のドローンスクールの特徴とは?

今村 建設土木関係で3次元データを活用する i-Constructionに主眼を置き、通常のドローンの技術取得だけでなく、国際航業の特徴である「航空写真測量」の知見を生かしたドローンによる3次元計測を講習に取り入れているのが大きな特徴です。そのために初級コースの5日間の内、1日を3次元計測の講習にあてています。国際航業は3次元計測の講習をいち早く取り入れたスクールです。JUIDA加盟のスクールでこのようなカリキュラムを取り入れているのは約100社のスクールのうち10社もありません。
※スクールの詳細はリンクをクリックしてご覧ください。
http://www.kkc.co.jp/service/biz_solution/uav-school.html

ー講習のカリキュラムについて教えてください。

今村 
 初級コースと中級コースの2パターンあり、初級コースではドローンのしくみ、関連法令、安全管理方法、操縦方法、3次元計測の方法などを、連続5日の期間で、座学と実技を通して学びます。ドローンを扱ったことのない初心者でも受講可能な基本的な内容となっています。
中級コースは、ドローンによる3次元計測の知識があり、すでに業務を実施されている方を対象とした、実践的なスクールです。
 
初級コースは、東京校、関西校、九州校の3カ所で行っていて東京校と関西校は5日間、九州校は合宿制なので4日間でうち1日が3次元計測の講習を行います。(九州校のみ共同運営しているDPCAによる写真撮影コースもあり)

椎名
 スクールの卒業生の皆様からのリクエストをもとに、3次元計測のフィールド実践を行う中級コースを2016年の12月からスタートしました。
 中級を受講するにはある程度操縦できることが前提で、自分が使っている機体を持ち込んでいただいています。実機を飛ばして3次元計測を行い、そのデータを元に国際航業が提供している「KKC-3D」という3次元データを作成するクラウドサービスを使い、実際に3次元データを作成します。

ーKKC-3Dクラウドサービスとは?

今村
 ドローンなどで撮影した複数の写真をクラウドサービスにアップロードするだけで3次元モデルデータが簡単に生成できるというものです。スクールでは、KKC-3Dクラウドサービスを用いて講習中に撮影した写真に位置情報を付与し3次元モデルデータを作成します。
※KKC-3Dクラウドサービスの詳細はリンクをクリックしてご覧ください。
http://www.kkc.co.jp/service/biz_solution/kkc-3d.html

ーそうなるとクラウドに上げる写真データが重要になるわけですね?

今村
 ドローンによる3次元計測撮影時は、被写体の周辺が白くぼやけて不鮮明になるハレーションや写真データのオーバーラップ率などに注意しないといけません。「こういった撮り方をしないと実際写真測量はできませんよ」といったところまでスクールでは説明します。これは長きにわたって写真測量をやってきたノウハウの強みだと思います。

ー3次元計測の講習は難しいものですか?

今村
 3次元計測講習では、ドローンの自動航行により撮影を行うため、高度な技能や知識はあまり必要ありません。ただし、現場では飛行ルートの設定ミス、携帯電話の基地局近くでの電波切れなどのハプニングも想定されます。こうなると操縦者がパニックに陥る場合があります。ドローンスクールではこのような事例を生徒に伝え、危機感をもってもらい安全運航に努めてほしいとの説明は必ず行っています。

ースクール特典があるようですね。

今村
 初級スクール卒業生には3次元空間解析クラウドサービス「KKC-3D」を無料でお使いいただけるお試しID(Basicプランを3か月間5回まで無料)を発行しています。また、初級、中級ともにクラウド月額基本料金5,000円を半年間無料とさせていただいております。(別途使用料金は従量制)

椎名 
 KKC-3Dクラウドサービスは卒業生でなくても利用可能です。6カ月単位で申し込めます。

ー安全講習について

今村
 安全運航については JUIDAのテキストをベースに講習しています。
 当スクールでは特徴のひとつとして、グループディスカッションを行っています。受講者でグループを作ってもらい、どんな危険があるか書き出してもらい、グループ内で討議してもらって発表するというものです。一方的に教えられるのではなく、グループで考える事によって危険性を共有することができます。他のスクールではあまり聞いたことがありません。

ーこれまで何人ぐらい受講しましたか?

今村
 初級は約300人ぐらいです。
 中級は法人単位受付けで20社弱くらいですね。1社あたり3〜5人が受講しています。

ーJUIDAの認定について。

 当社のスクールを合格すると、修了証を発行しています。
 JUIDAの「操縦技能証明証」と「安全運航管理者証明証」は、両方ともに国際航業の修了証を取得後に申請することで交付されます。
 数多いスクールの中で、国際航業のスクールを選択する受講生は3次元計測に興味がある方がほとんどです。JUIDAの証明証を目指すだけの人は少ないと思います。

ー今後のスクールについて。ドローンによる点検等の講習の要望もあるのでは?

今村 
 受講生からも「ドローンによる点検等の講習は?」「上級コースは?」と聞かれたりすることがあります。構想はありますがまだ具体化はされておりません。スクール卒業生や協力会社の皆様と協議し、ニーズにあったカリキュラムの提供を検討しています。

椎名
 航空写真測量を事業のベースとしてきたわが社は、空から地上を俯瞰する事や正確に計測する事に長けており、その意味では業界に先駆けて古くからドローンに注目してきました。
航空写真測量の世界は、アナログ写真からデジタル写真、そしてレーザーと空からのデータ取得方法は進歩を遂げてきました。今後は、お客様から即時性、経済合理性などが強く求められると考えられることから、ドローンの機動性、低廉性、発展性に注目をして、様々な利活用方法を考えていきたいと思っています。

 以上お二人のお話を聞いて、戦後間もなくから航空写真測量を積み上げてきた国際航業だからこその、裏打ちされた経験と安全運航に対する慎重さも見逃せない。ドローン技術の発展や利活用に大きく貢献している企業と感じた。

■■ドローンスクール予約はこちらから
http://uav-school.resv.jp/reserve/calendar.php?x=1492402356&pc=1

測量に使うドローン。

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