4次安倍内閣が発足 改憲加速、民意どこへ

 自民党の大勝に終わった衆院選から10日余り。第4次安倍内閣が1日、発足した。選挙期間中は正面から訴えなかったが、首相悲願の改憲が現実味を帯びる。「安倍さんなら大丈夫」と“妄信”する自民支持がある一方、野党の“失点”による消極的な選択も少なくない。「ふわりとした民意」はどこに向かうのか。主権者たる有権者が問われている。

 1日午後、横浜市西区の家電量販店。陳列されている最新の大型テレビに、首相指名された安倍晋三首相の笑顔が大きく映し出された。同市南区の児童福祉職の男性(36)は「景気回復と北朝鮮問題をしっかり対応してほしい」と期待した。

 首相自身が強い意欲を見せる改憲には「どちらかと言えば賛成」。対案を示さず批判ばかりを繰り返す野党の姿勢は「反対のための反対」のように映り、「与党の言い分の方がすんなり入ってくる」。

 同市旭区の会社員の男性(24)は衆院選で自民に1票を投じた。「ほかに選択肢がない」というのが理由だ。「改憲はどちらかと言えば賛成寄り。安倍さんが言うならそうなんじゃないか、と」と苦笑する。

 投開票日2日前の10月20日。藤沢駅前(藤沢市)は安倍首相の街頭演説見たさに聴衆がひしめき合った。支持者の手には、首相の顔が大写しとなった自民の政策パンフレットやピンクのハートマークが描かれたプラカード。「反安倍」の団体がビラを掲げると「見えねえよ」という罵声が飛んだ。

 「友達とシェアするつもり」。同市在住の女性(21)はスマートフォンを持った右手を懸命に伸ばし、動画を撮影した。偶然通り掛かっただけで「政治はよく分からない」。それでも「こんなに多くの人が集まってる。安倍さん、何かすごい」。

 買い物に訪れていた相模原市南区の主婦(49)は「一つ一つの言葉に力があった。人を引き付けるものが決定的に違う」と興奮冷めやらぬ様子で語った。

 特に、共感したのは北朝鮮の核・ミサイル開発問題。「戦力を持っていない日本が他国から攻められたら終わり」と自民が掲げる改憲には賛成の立場を鮮明にする。演説では一切触れなかったが、気にはならなかった。「すべて任せる。安倍さんを信用しているから」 改憲を呼び掛ける国内最大級の右派団体「日本会議」が主導する「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が展開している「1千万人賛同署名」の達成率はすでに99%。署名する時に記入する住所や電話番号などは、国民投票の際に賛同を呼び掛けるための「名簿」にそのまま形を変える。

 集会にも参加する横浜市磯子区の主婦(34)は北朝鮮や中国を日本の脅威と危機感をあらわにし、「自国を独自に防衛できる体制が必要」。必ずしも積極的ではない自民支持者には「目を覚ましてほしい」といら立ちを隠さない。

 ただ、賛同者の“予備軍”と言える貴重な存在。主婦は力を込める。「何とか取り込んで改憲を実現したい」

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