女優の吉田羊さんがナビゲーターと音声ガイドをつとめる「怖い絵」展は、ドイツ文学者で作家の中野京子さんの人気シリーズ本をもとにした展覧会。美しい絵画作品の裏に隠された、悲劇や陰謀、怨恨といった恐怖のドラマをひもといてみせる中野さんの解説は、美術ファンのみならず多くのファンを獲得してきた。「絵画の知識には疎いのですが」と謙遜する吉田さんも、その解説のおもしろさにすぐに夢中になったという。
「解説を読んだとき、底知れない怖さを感じると同時にとてもわくわくしました。もっと作品を見たい、もっとそのエピソードを知りたい、と、どんどんのめり込んでしまって。実は私、かなりの怖がりなんです(笑)。でも、この”怖さ”にはすっかり魅了されてしまいました」
展覧会の音声ガイドをつとめるのは、今回が二度目。女優やナレーション業とは、似ているようで取り組み方はずいぶん異なるようだ。
「録音の際に気をつけたのは、低めのトーンと落ち着いた声で話すこと。そしてなるべく自分の感情を抑えることでした。鑑賞にそっと寄り添うのがガイドの役目ですから」
その鑑賞法については、意外な言葉も飛び出した。
「最初は音声ガイドなしで絵を見てもいいのかな、とも思うんですよ。一度目はご自身の感覚でご覧いただいて、その後でガイドを聞く。そうすればまったく違う世界が広がるはずですから」
聞く前と聞いた後の違いを楽しんでほしい。そう言えるのは、絶対に面白い解説だという自信ゆえだろう。最後に、ここまで人々を引きつける「怖さ」の正体は一体何なのか。
「要は想像力ですよね。想像するから怖くなる。それがわかっていても、その怖さを想像せずにいられない。目に見えない世界を見たい、自分の知らない世界を知りたいという人間の好奇心は、いつの時代も普遍的なものなんでしょうね」
その怖さを想像しながら、絵画鑑賞を楽しみたい。
よしだ よう
福岡県久留米市出身。舞台女優としてキャリアをスタートさせた後、テレビドラマ『HERO』、NHK大河ドラマ『真田丸』、映画『ビリギ ャル』(2015年)、『ボクの妻と結婚してください。』(2016年)など話題作に多数出演。 10月からは『コウノドリ』(TBS)に出演
「怖い絵」展
作家の中野京子さんの人気シリーズ『怖い絵』で紹介された絵画作品も展示。《レディ・ジェーン・グレイの処刑》他、美しくも恐ろしいドラマが潜んだ絵画が勢ぞろいする。上野の森美術館にて12月17日(日)まで開催中