日本人現役最強のプロアングラー "T.O." 大森貴洋が語る、世界で闘う男の勝負哲学

アメリカ・バスマスタークラシック出場12回にして、日本人唯一のクラシック優勝者、"T.O."こと大森貴洋。紛れもなく日本が生んだ現役の世界的プロアングラーであるが、実はその素顔を知る機会はあまり多くない。世界の檜舞台で"勝つ"ことだけを目指すT.O.の勝負哲学に迫った。

RTO=リスペクト・タカヒロ・オーモリ

大森貴洋(Takahiro Omori)。プロフェッショナルアングラー、47歳。

21歳で単身渡米。以来、26年間に渡り、トーナメントシーンの最前線で活躍。現在は世界最高峰のトーナメント、B.A.S.S.エリートシリーズに参戦。年間上位選手のみが出場権利を得るバスマスタークラシックへは12回と日本人最多出場。2004年、日本人として初優勝を果たしたのは歴史的出来事だった。またB.A.S.S.のレギュラー戦では6回の優勝も獲得している。

米国トーナメントの雄、B.A.S.S.での生涯獲得賞金額は実に195万ドル(約2億2,000万円・2017年10月時点)にのぼる。2012年までダブルエントリーしていたFLWでは58万ドル(約6,500万円)を数え、その桁数の多さは何より彼の強さを示している。

"T.O."(ティー・オー)。

彼の地ではもはやその名を知らぬ者はいない。イニシャルがそのまま愛称として親しまれ、シーンに深く浸透しているのは言うまでもない事実だ。

"2004 BASSMASTER CLASSIC WINNER" 日本人初のクラシック優勝は全米に衝撃を与えた。写真は、試合翌日のノースキャロライナ州の地方紙・シャーロットオブザーバーの一面だ。

「勝てる魚を釣るための道具。それが、シャロークランク」

日本国内で"T.O."の名を目にする機会が多いのは、ラッキークラフトU.S.A.から発売されているシャロークランクの名品"LC RTO"ではないだろうか。T.O.自らの戦力として欠かすことのできない武器。幾度となく実戦で上位に名を連ねてきた戦力のひとつである。

なぜRTOなのか。そう訊くが早いか、T.O.はこう語り始めた。

「トーナメントに出場するってことはサ、勝つこと、優勝することが全てなんだよ」

「勝てる釣りがメイン。むしろ、それしかやらない。そのひとつがシャロークランクだったってことなんだよ」

「スピナーベイトを10年、フリッピングを5年。最後のピースを埋めてくれたのがシャロークランクだったんだ」

言い換えるなら、試合で勝てるでかい魚を仕留める釣り方がそれだったということ。勝つための道具。そこにしかT.O.の興味はない。

数ある釣り方を全て身に付ける方法も、時間が無限なら可能だろう。しかし、アングラーに与えられた時間には限りがある。T.O.独自の哲学は、全てにおいて無駄や虚飾を削ぐことにある。

「好きとか嫌いとか、そんなレベルのものじゃない。ゴールを設定してそこから逆算していく。何が大事なのか。一番大事なのは次のトーナメントで勝つことで、そこに向けて何をすべきかを常に考えている。これは全てにおいて大事なことなんじゃないかな」

T.O.かく語りき。全ての道は世界の頂点へと続いているのだ。

T.O.のシャロークランクBOXを覗いた際、あることに気づいた。カラー数が極端に少ないのだ。「メインで使う」という4色の他は、TOチャートブルーとその他の色がいくつかのみだった。 (上左)LC2.5DRS TOチャート:チャートボディに淡いオレンジベリー、ブラックバック。配色には実に細かい指定がある (上右)LCRTO2.0 BPゴールデンシャイナー:国内に生息するワタカにも似る米国のベイトフィッシュをイミテートした1色 (下左)LC3.5DRS...

全てにおいて最高峰。そこに君臨し続けるために

B.A.S.S.エリートシリーズという世界最高峰の舞台で長年戦い続けているT.O.。モーターレースで例えれば、F1の世界だろうか。

「最高峰のエリートツアーに出るって言うのは、そこで他のプロと戦うことで今どこに自分がいるのかを再確認できるってことなんだ」

いわば、世界ランキングの指標。年間上位に滑り込めば、年に一度の集大成であるB.A.S.S.バスマスタークラシックへの出場権を得ることができる。T.O.は自身のキャリアで実に12度もの出場を果たした。2桁に到達したプロはアメリカでも実に少なく、もちろん日本人アングラーでは最多。これは偉大なる記録だ。

"I KNEW IT!!"「アイ・ニュー・イット!!」

2004年にバスマスタークラシックを制覇した時、最終日終了間際のビッグフィッシュの連打を果たした際にT.O.が叫んだそのフレーズ。今でもその声が耳から離れず、その光景が眼に焼き付いているアングラーも多いだろう。和訳すれば「やっぱりね!!」といったところだろうか。

「バスプロのピークパフォーマンスって、30歳から45歳くらい。その間にクラシックも獲った。でも、ここで終わるわけじゃない。僕はバスプロだからサ」

T.O.の戦いはまだ始まったばかりだ。

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世界と闘う男・T.O.の勝負哲学は、ルアーマガジン2017年12月号の特別ふろく小冊子(8P)"大森貴洋コンセプトブック 〜B.A.S.S.バスマスタークラシックチャンプのシャロークランキング〜"にてその全貌を知ることができる。T.O.のさらなる世界的活躍を願う全てのバスアングラーにとって永久保存版、必携の一冊だ。

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[文/野村 "マイケル" 英之釣りPLUS

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