金正恩氏が「オトナの動画」流行に敏感に反応している

北朝鮮が、韓流をはじめとする海外コンテンツの密かな流行に警戒心を露わにしている。北朝鮮が建国以来、体制維持の柱としてきたプロパガンダが骨抜きにされかねないからだ。

乱交パーティーを摘発

北朝鮮では2000年頃から、中国を通じて韓流などの海外コンテンツが密かに流通し、多くの一般庶民、とりわけ青少年が影響を受けている。一方、北朝鮮当局は、このような海外コンテンツを見たり、流通させたりする行為を厳しく取り締まっている。一昨年5月には、韓流ドラマのファイルを保有していただけの容疑で、女子大生を摘発し、過酷な拷問を加えたほどだ。

それでも、海外コンテンツの拡散は止まらない。

なぜなら、北朝鮮の公営メディアが流すプロパガンダ放送がつまらないからだ。つまらないどころか、昨年には金正恩党委員長がスッポン工場を現地指導した際、管理不十分という理由だけで責任者を処刑し、さらに処刑直前の激怒の動画まで公開した。とても庶民が好んで見るようなコンテンツではない。

海外コンテンツの拡散を警戒してか、3日付の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は「帝国主義の思想的・文化的浸透」を阻止しなければならないとする論説を掲載した。

この中で次のように述べている。

「帝国主義者は、これらの国々に反動的な出版物と色情的で腐敗した映画、音楽を大々的に送り込む一方、資本主義に対する幻想を醸成するための放送宣伝を強化した」(2017年11月3日付労働新聞)

「反動的な出版物と色情的で腐敗した映画、音楽」の中には、海外で作られたわいせつ動画を指すと見て間違いない。しかし、日本などのわいせつ動画は、かなり前から北朝鮮に流入している。ある脱北者は幼少の頃、大人の男女が、こっそりと日本のわいせつ動画を鑑賞する様子を目撃したと話す。こうしたエピソードはさほど珍しいものではない。

近年では、金正恩氏の目の前で、喜び組が半裸で踊っている内容の動画が拡散したとの噂もある。

半裸の女性を見ながら、デレデレになっている金正恩氏の姿が動画に写っているとするならば、権威の失墜は避けられないだろう。

昨年3月には、映像コンテンツを取り締まる「109常務(サンム)」と呼ばれる専門の捜査機関が、北朝鮮の咸鏡北道(ハムギョンブクト)のある郡で、乱交パーティーに及んでいた男女を逮捕した。もはやわいせつ動画の拡散を止めるのは不可能に近くなっている。

労働新聞に掲載された論説には、海外コンテンツの拡散をけん制する狙いがある。裏を返せば、厳しい取り締まりにもかかわらず、依然として海外のわいせつ動画や韓流コンテンツが拡散しているということだ。

© デイリーNKジャパン