最後は救援投手の差、熱戦が続いたプロ野球日本シリーズをデータで読み解く

ソフトバンクのデニス・サファテ【写真:藤浦一都】

好勝負が相次いだ日本シリーズをデータで読み解く

 DeNAの「史上最大の下克上」はならなかった。プロ野球の日本一はソフトバンク・ホークス。4勝2敗ではあったが、6試合のうち1点差ゲームが4試合。好勝負が相次いだ。

 両軍選手の成績を、投打別に見ていこう。以下は主要選手の打撃成績。※カッコ内はシーズン中の安打数。

〇ソフトバンク打撃陣

柳田悠岐 6試25打数8安0本4点2盗 打率.320(139)
内川聖一 6試22打数7安1本3点0盗 打率.318(79)
デスパイネ 6試23打数5安0本4点0盗 打率.217(125)
今宮健太 6試21打数4安0本2点3盗 打率.190(139)
松田宣浩 6試23打数4安1本1点0盗 打率.174(140)
川島慶三 6試13打数3安0本2点0盗 打率.231(29)
明石健志 5試12打数3安0本0点1盗 打率.250(81)
中村晃 6試19打数2安1本4点0盗 打率.105(138)
長谷川勇也 4試7打数2安1本2点0盗 打率.286(8)
高谷裕亮 6試8打数2安0本2点0盗 打率.250(36)
甲斐也 4試4打数1安0本1点0盗 打率.250(48)
上林誠知 1試1打数0安0本0点0盗 打率.000(108)
川崎宗則 出場せず(26)

計 6試192打数42安打4本25点6盗 打率.219

 シーズン中戦線離脱し、ポストシーズン出場が危ぶまれた柳田と内川の主軸2人が、大活躍した。この2人が日本シリーズに間に合ったことが打線では最大のポイントだろう。

 また、工藤監督はシーズン中の成績にこだわらず、好調な選手を抜擢した。シリーズ優勝の安打を打ったのは、シーズン中29安打の川島だった。またシーズン中8安打の長谷川も本塁打を打っている。

 対照的に、今季初めて規定打席に達し108安打を打った上林は1打席に立っただけ。柳田、内川の復帰も影響したが、シリーズの蚊帳の外に置かれた。優勝の歓喜の中、上林は危機感を覚えていることだろう。

主力打者が期待通りの結果を残したDeNA打線

〇DeNA打撃陣

宮崎敏郎 6試20打数8安2本5点0盗 打率.400(155)
ロペス 6試24打数7安1本3点0盗 打率.292(171)
倉本寿彦 6試21打数7安0本2点1盗 打率.333(133)
梶谷隆幸 6試23打数5安1本1点0盗 打率.217(124)
筒香嘉智 6試20打数5安1本3点0盗 打率.250(143)
桑原将志 6試26打数4安0本1点1盗 打率.154(161)
高城俊人 2試5打数3安1本3点0盗 打率.600(14)
細川成也 4試4打数2安0本0点0盗 打率.500(2)
柴田竜拓 6試18打数2安0本0点0盗 打率.111(50)
白崎浩之 2試5打数2安1本1点0盗 打率.400(10)
嶺井博希 4試10打数2安0本1点0盗 打率.200(30)
戸柱恭孝 4試8打数0安0本0点0盗 打率.000(72)
乙坂智 5試8打数0安0本0点0盗 打率.000(12)

計 6試197打数47安打7本20点2盗 打率.239

 シーズン中からチームを牽引した主力打者がほぼ期待通りの働きをした。1番桑原が出遅れたが、後半戦で盛り返した。ロペス、筒香、宮崎の中軸は、試合の流れを変える一打を度々打った。捕手はシーズン中、打撃で抜擢した戸柱が不振。嶺井、高城の出番が増えたが、それぞれ持ち味を発揮した。

 ソフトバンク本拠地でのDHは乙坂、細川、白崎を起用。乙坂、細川は無安打だったが、第6戦ではシーズン中本塁打がない白崎が同点本塁打。ラミレス監督が用兵の冴えを見せつけた。

 打線はDeNAの方がやや上。しかし併殺など好機をつぶすことも多く、打点はソフトバンクの方が多かった。

ホークス投手陣の成績は…

〇ソフトバンク先発陣&救援陣

東浜巨 2試0勝0敗9.2回 防御率4.66
千賀滉大 1試1勝0敗7回 防御率0.00
バンデンハーク 1試0勝0敗5.1回 防御率6.75
和田毅 1試0勝1敗5回 防御率3.60
武田翔太 1試0勝0敗4.1回 防御率2.08

計 6試1勝1敗31.1回 防御率3.45

サファテ 3試1勝0敗2S0H5回 防御率0.00
モイネロ 4試0勝1敗0S2H4.2回 防御率1.93
石川柊太 4試2勝0敗0S0H3.1回 防御率2.70
岩嵜翔 3試0勝0敗0S1H3回 防御率0.00
森唯斗 4試0勝0敗0S1H3回 防御率3.00
嘉弥真新也 4試0勝0敗0S2H1.1回 防御率0.00
五十嵐亮太 1試0勝0敗0S0H1回 防御率9.00
攝津正 1試0勝0敗0S0H1回 防御率27.00
寺原隼人 1試0勝0敗0S0H0.1回 防御率0.00

計 6試3勝1敗2SH22.2回 防御率2.78

 ソフトバンクの先発陣で勝利を挙げたのは千賀だけ。他の5投手は安定感がなかった。その千賀が第6戦は登板回避、7戦までシリーズが延びていたら先発陣は苦しくなったはずだ。

 しかし救援陣は素晴らしい出来だった。サファテはシリーズ4勝のうち3勝に絡んだ。しかも第6戦はシーズン中もない3イニングを投げる奮闘。シリーズMVPも当然だろう。

 岩嵜翔もシーズン同様の活躍。嘉弥真が、いわゆるシチューエーションとして素晴らしい働きをしたことも忘れてはならない。

DeNA投手陣の成績は…

〇DeNA先発陣&救援陣

今永昇太 2試0勝0敗13回 防御率2.08
濱口遥大 1試1勝0敗7.2回 防御率0.00
ウィーランド 1試0勝1敗5.1回 防御率5.06
石田健大 1試0勝0敗4.2回 防御率7.71
井納翔一 1試0勝1敗4.1回 防御率12.46

計 6試1勝2敗35回 防御率4.11

エスコバー 4試0勝1敗0S1H4.1回 防御率2.08
山崎康晃 3試0勝0敗1SH3.1回 防御率2.70
砂田毅樹 5試1勝0敗0S1H3回 防御率0.00
パットン 5試0勝1敗0S3H3回 防御率0.00
井納翔一 2試0勝0敗0S1H1.1回 防御率0.00
須田幸太 1試0勝0敗0SH1回 防御率0.00
平田真吾 1試0勝0敗0SH1回 防御率0.00
三上朋也 3試0勝0敗0S1H1回 防御率9.00
田中健二朗 1試0勝0敗0SH0.2回 防御率40.5

計 6試1勝2敗1SH18.2回 防御率2.89

 CSでは救援に回ることもあった今永が好投。同じ左腕の濱口ともにチームを引っ張った。救援投手も期待通りではあったが、ソフトバンクがサファテ、モイネロ、石川、岩嵜、森、嘉弥真と計算できる救援が6枚もあったのに対し、DeNAはエスコバー、山崎、砂田、パットンの4枚だけ。先発の井納も救援に回したが、先発よりも救援のウェイトが大きい短期決戦だけに、競り合いが続けば苦しくなった。最後はサファテとエスコバーという助っ人救援投手の差で決着がついた。

 DeNAはソフトバンクよりも戦力的にかなり劣っていたが、ポストシーズンを戦う中で鍛えられ、強くなっていった。ラミレス采配は見事だったと言えよう。下剋上はならなかったが、ここまでシリーズを盛り上げたDeNAの功績は大きい。

(細野能功 / Yoshinori Hosono)

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