金属行人(11月6日付)

 EV(電気自動車)が世界を席巻する!との見方が一般的になっている。本当だろうか。2040年以降は内燃機関の自動車を販売してはならない、とする国も。何度も出てくる話で恐縮だが、本当なら日本が誇る高性能のエンジン部品は存在感が大きく後退し、モーター、電池に絡む素材は躍進する▼「それは違うだろう」との異論を最近聞いた。それも読者諸兄には旧聞かもしれないが…要するにこうだ。今、世界で走っている自動車の台数はざっと12億台とされる。それが50年あたりにはどれぐらいになっているのか。論者は「16億台」と予想する▼一方、どれほどEV化が進んでも、同時期のEVの台数は「5億台」。数多くある予想のうち一番多いものを採用しても、そのぐらいだ。もっとも現状から考えて5億台は決して小さくない数字だが▼足元では、エンジン部品の核となる鋼種は生産が追いつかいないほど。EVに少しシフトしなければ解決できない状況なのかもしれない。軽率を承知で言えば、むしろ、そのために出てきたEV論議かもしれないのだ▼世界の自動車需要の伸びを考慮したとき、石油が枯渇するなどの非常事態でもなければ、内燃機関ががた落ちするとは考えにくいが、どうか。

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