【現場を歩く】〈ウチヌキ・福島工場〉グラフィックパンチング、国内最高水準の精細技術 技術研修など海外進出にも貢献・加工技術の〝極み〟へ挑戦

 パンチングメーカー大手のウチヌキ(本社・神奈川県綾瀬市、社長・中尾健太郎氏)は、国内外に3カ所の製造拠点を持ち、主に1ミリ以下の微細孔加工を得意とする。このたび国内の中核工場である福島工場(福島県西白河郡)を訪れた。(伊藤 健)

88年に建設、生産体制増強

 同社は1966年(昭41)に神奈川県川崎市の貸工場で創業を開始した。76年に本社を現在地に移し、88年には生産体制を増強するため福島工場(第1期)を建設。その後、91年には生産拡充を図って福島工場の土地2500坪を取得、本社工場の生産部門を福島工場に完全移管し、生産集約(第2期)を行った。

 2006年、08年にはさらなる業務拡大に伴い、工場棟の増設や隣接地を新たに取得して敷地面積を拡大。現在の福島工場は、旧本社工場時代からの技術を受け継ぐとともに、約5500坪の敷地面積に大型プレス、パワープレス、シート加工、金型、出荷など5つの専用の工場棟を構える。

 同社は昨2016年に設立50周年を迎えた。また国内のパンチングメタルメーカーとしては初めて海外のタイ(サムットプラカーン県))に製造拠点を開設し、現地会社「ウチヌキ・インダストリー」が同年夏に本格稼働を始めた。グローバル・パンチングメタルメーカーとして、世界に躍り出ようとしている。

 タイのウチヌキ・インダストリーでは2018年春に兵庫工場の大型300トンプレス機を移設する計画だ。これに伴い、兵庫工場には福島工場のプレス機を移転、そして福島工場にはこのほど最新鋭の220トン高速プレス機を導入した。東日本地区と西日本地区、そして海外のタイと、各地の3拠点で最適生産体制の構築を進めている。

 福島工場は同社の海外進出でも大きな役割を担っている。ウチヌキ・インダストリーの設備は、大半が福島工場から移設したものだ。またウチヌキ・インダストリーで働く現地スタッフは、福島工場で事前にパンチングメタルの製造技術の研修を受けている。設備機械の『ハード面』と作業技能者の『ソフト面』ともに、日本品質を海外に移管するマザー工場として、今もなお新技術の開発や品質管理(QC)、生産効率化に取り組み続けている。

 福島工場ではこのほど、国内で最高水準となる高精細のグラフィックパンチング技術を確立した。パンチングの孔の口径(φ、パイ)は1・0ミリで、孔芯間隔(ピッチ)は1・5ミリと非常に細かく、従来同社が可能だった最小加工技術よりもおよそ4分の1近く最小化した。一般的なタレットパンチング加工によるデザインパンチングとは異なり、小孔径・ピッチの針を一本一本制御する精細なパンチング技術だ。

 開発のきっかけは、需要先からのニーズではなく、得意分野である精細孔の加工技術をさらに極めることへの挑戦。「どこまで孔径・ピッチを小さく出来るかのチャレンジから始まった」(中尾社長)としている。

 原画はコンピューター処理により写真やイラスト、パターンや文字、マークなどからもパンチング加工が可能。原板の素材はスチールやアルミ、ステンレスのほか樹脂などにも対応している。今後はディスプレイや看板、装飾品など向けに受注増、拡販を目指す方針だ。

製造現場の効率化、〝見える化〟を推進

 福島工場では作業効率のさらなる改善に向けて、製造現場の〝見える化〟の取り組みを始めている。

 福島工場の各工場棟で設備機械と作業員の作業工程と動線を俯瞰的にビデオに撮影して分析、作業ロスの改善と生産性の向上につなげる『現場改善活動』に着手し始めた。

中尾社長「下工程を中心に効率化」

 中尾社長は「大型プレス棟やパワープレス棟などは機械化、自動化が進んでいるが、〝見える化〟により、まだまだ改善の余地がある。また、特に人手のかかる下工程を中心に、作業効率化を図りたい」と話す。

 福島工場は2018年に開設30周年を迎える。微細孔のパンチング技術のさらなる深化や、金属以外の素材に対しての加工技術への挑戦など、技術開発、技術革新への歩みは止まる気配はない。同社はこの先も理念であるパンチングの未来を創造する『夢工房』を目指し続ける。

大阪で新商品をPR/「中小企業新ものづくり・新サービス展」に初出展

 ウチヌキは28~30日にインテックス大阪(大阪市住之江区)で開催する「中小企業新ものづくり・新サービス展(主催・全国中小企業団体中央会)」に初めて出展する。

 今回新たに開発した精細孔グラフィックパンチングのほかに、パンチングと同時に凹凸のエンボス加工を施した商品「編目パンチング」では、新たに三角孔の3デザインも初めて披露する。

 このほかにも同社が得意とする各種微細孔パンチング製品や建材向けの各種商品なども展示する。

 同展は事前登録制で入場は無料。

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