【東京管工機材商業協同組合 創立70周年】〈橋本政昭理事長インタビュー〉「業界標準化」IT化がカギ 他団体との訓練で災害対応強化

――理事長として、組合の70周年を迎えた心境を。

 「各支部や専門部会の活動などに対する会員各社の協力に感謝したい。長年にわたって管工機材業界の発展や業界の社会的地位向上に尽力された先人たちにも敬意を表する。当組合が業界全体の発展に寄与し続けていることは、理事長として大変誇りに思っている」

東京管工機材商業協同組合・橋本理事長

――新人・中堅社員を対象とした研修会、管工機材・設備総合展などの恒例行事もすっかり業界に定着した。

 「研修はテーマや講師選定で色々な工夫を凝らしており、おかげで毎回参加者も増えている。これからも、会員会社や業界のニーズに応じたイベント研修会や研究会を逐次計画していきたいと思う」

――橋本理事長が就任されてから注力活動に上げられていた製(メーカー)・工(工事店)・販(販売店・流通)の連携、業界標準化に向けての取り組みについては。

 「工事店と販売店の連携については『防災協定』がカギ。メーカーと販売店については、相互の情報共有が重要になると考えている」

 「業界標準化に向けての活動は継続中。同じ製品でもメーカーや扱い筋によって製品名や呼び方が異なるなど、非常に分かりづらい状況が続いている。組合が中心となって、商品名の統一化などを検討していく。それには『IT化』が一つのカギとなるだろう」

――官公庁や他団体との連携にも注力している。

 「国土交通省や東京都とは、さらに連携を強化していく。東京都管工事工業協同組合や三多摩管工事協同組合、東京都水道局などとはそれぞれ災害時における資材供給、情報提供に関する協定・覚書を締結した。これからは、実際災害に直面した時に迅速な行動をとることができるかがポイント。今後、他団体と連携した防災訓練の実施なども視野に入れていきたい」

――最後に、会員会社に向けて。

 「管材業界にとっても、様々なケースへの対応が求められる『混迷の時代』に突入したと思っている。こうした時代を乗り切るため『個の力を磨くこと』や『チーム力を上げること』が重要。我々も組合活動を通じてチームワークを強化すべく、引き続き皆さんの御協力をお願いしたい」

戦後のガス・水道インフラ復興を先導

 東京管工機材商業協同組合(理事長・橋本政昭橋本総業社長)が今年、創立70周年を迎えた。教育・情報・宣伝・共催などの各事業活動を通じ、社会全般にわたるライフラインの整備、生活基盤・環境づくり、産業用諸設備の建設など幅広い分野で貢献してきた。管工機材に対する世間一般のニーズが時代とともに変化するなか、近年では工販、製販、官公庁、中小企業団体、業界関連団体などとの関係強化にも注力。組織を拡大しながら、業界の結束交流と相互秩序の役割を担い続けている。(後藤 隆博)

 第2次世界大戦後、大都市圏を中心に戦争で破壊されたガスや水道などのインフラ整備にともない、パイプ、継手、バルブなどの需要が急激に増大した。当時、東京都で工事を担当していた特別調達庁や東京都は業者間の連絡を緊密にするため、戦前にあった東京バルブコック商業組合の理事長だった石橋慶蔵氏に組合結成を要請。石橋氏は同組合の常務理事だった風間龍陽氏とともに準備に取り掛かり、東京都からの許認可取得、創立総会を経て1947(昭22)年7月14日に「東京バルブコック商業協同組合」が設立。この組合が、東京管工機材商業協同組合の前身となる。初代理事長は石橋氏。49(昭24)年には風間氏が2代目理事長となった。

 49(昭24)年12月16日には中小企業等協同組合法に基づく組織変更と定款変更を行って、名称を「東京バルブ継手鉄管商業協同組合」に変更。このころから、大阪バルブコック商業協同組合との本格的な交流が始まっている。また、同年3月には、ポンプ取扱い業者を組合員とした姉妹組合の東京ポンプ商工協同組合が誕生した。

 東京ポンプ商工協同組合は、鉄鋼・皮革などの重要資材の統制撤廃とともに配給の必要がなくなったことなどから、53(昭28)年12月17日に解散。東京バルブ継手鉄管商業協同組合に合流した。

 54(昭29)年、給水装置用機材の粗悪品が出回っていたことを憂慮した東京都水道局が、品質確保のために商標登録制を採用。組合は同制度に速やかに対応し、組合員の商標届を一括して都水道局に提出した。その後、JIS規格外水栓や検査基準の徹底化に向けても都の水道局と連携した。

業界VAN構築活動からIT化へ/関連団体吸収で組織拡大

 東京と大阪の管工機材業界は戦前から関係を密にしていた。戦後、東京を中心とした地域の需要が他に比べて非常に大きくなったことで、大阪や名古屋から管工機材問屋などが相次いで参入してきたことで競争が激化。業界の秩序を守る話し合いの場が必要になってきた。

 1962(昭37)年10月、日本バルブ継手鉄管商業協同組合は連合会結成を決定。東京、大阪、名古屋の業界団体による連合会創立総会を開催し、全国管工機材商業連合会(管機連)が設立された。翌年の総会で、京都、神奈川両組合が新規加入。その後少しずつ増え続け、現在は正会員18組合、特別会員44社で構成される。

 管機連設立にともない、各会員組合の名称を統一。64(昭39)年、日本バルブ継手鉄管商業協同組合は名称を「東京管工機材商業協同組合」に改称した。翌年には賛助会員制度が設置されている。

 組合が創立20周年を迎えた67(昭42)年4月、第1回管工機材設備総合展示会が都立産業会館で開催された。第3回(昭44年)からは東京都管工事工業協同組合、第11回(昭和54年)には全国管工機材商業連合会がそれぞれ共催団体に加わった。今では優秀な機材のあっせんとメーカーの新製品開発促進のため、ユーザーとの橋渡し的役割を担う恒例行事として業界に定着している。

 83(昭58)年には、組合員に重複加盟が多いことなどを考慮して、東京鉛栓商業協同組合を統合した。

時代ニーズに則した組織改編と新たな活動

 84(昭59)年には組合運営の活性化、業界の経済的活力の維持向上、企業体質強化施策の具体化を推進するため、8つの委員会が発足。その後、90(平2)年の定例役員会で総務、流通、経営、事業の4委員会に再編。また91(平3)年には専門部会を管継手化成品、バルブ機工、ポンプ空調、住設水栓衛陶の4つに改組し、それぞれ現在に至る。

辞書にない業界用語集。組合のホームページで、閲覧可能

 年号が平成になって以降、組合が注力していたのが業界VAN(value-added network、付加価値通信網)の構築事業だ。

 89(平元)年10月、組合内で業界VAN構築のための情報化推進準備委員会が発足。翌90(平2)年に情報化推進委員会の設置など情報ネットワーク体制づくりに注力していた。95(平7)年には同委員会のもとで「管材VANセンター」が設立された。

 業界全体を網羅した情報ネットワーク構築を目指した一大プロジェクトだったが、多大な設備投資を必要とすること、情報システムの急激な進展でVANシステム自体の利用価値が低減したことなどから、99(平11)年の定例委員会で同センターは事実上解散した。

 ただその後、パソコン・インターネット研修、組合ホームページ(HP)と組合員・賛助会員HPのリンクなど、業界VAN構築を目指した動きは現在、業界のIT化対応への活動など形を変えて引き継がれている。

 人材育成活動面では、02(平14)年度から東京都中小企業団体中央会の指導に基づき「中小企業人材確保推進事業」を推進。中堅社員研修を中心とした教育プラン(債権管理研修会など)などを目玉に雇用ガイドリーフセットの作成、業界モデル職能基準書、辞書にない業界用語集の作成など多くの事業を行った。07(平19)年3月には「中小企業人材確保推進事業実施報告書」を刊行している。「辞書にない業界用語集」は現在、組合のホームページ(http://www.tokanki.or.jp/)に掲載されており、誰でも閲覧することができる。

 05(平17)年には、組合内にある4支部に置かれた青年部の相互連携と活動支援を行うため、青年部連絡協議会が発足した。

教育・情報・宣伝事業など/会員、業界双方の課題解決に貢献

さらなる業界発展を目指して

 現在、組合は正会員156社、賛助会員167社の大所帯となった。直近の事業計画では、政府が今後の成長分野として掲げている「環境・エネルギー」「中古住宅流通・リフォーム」「健康・快適」「安全・安心」「地域活性化」「グローバル化」「IT技術の活用」の各分野に積極的に取り組むとしている。業界のさらなる発展に貢献すべく、直近でも様々な活動を手がけている。直近での主な活動を見てみる。

管工機材・設備総合展

 「管工機材・設備総合展」は現在、1年ごとに東京管工機材商業協同組合と東京都管工事工業協同組合の両組合が主催を交代する形で毎年運営されており、いまでは業界の最新製品・技術が一堂に会する一大イベントとして認知されている。49回目となった今年は8月1~3日に東京・有明の東京ビッグサイトで東京管工機材商業協同組合の主催によって開催され、過去最大の340小間、157の企業・団体が出展。パイプ、継手、バルブをはじめとした配管機材、住設、工具の最新製品・技術が一堂に会し、期間中に販売店や設備工事店、メーカーなどから1万6千人余りが会場に詰めかけた。

業界他団体との連携

 95(平7)年の阪神・淡路大震災と2011(平23)年の東日本大震災の2つの大地震、また近年のゲリラ豪雨など異常気象による局地的な自然災害の発生は、ライフラインの復旧・復興支援の観点から管材業界内での連携の動きを加速させた。

 東京管工機材商業協同組合は11年の東日本大震災以後、発災時対応の在り方を最重点課題の一つとして取り組んできた。13年10月15日には東京都管工事協同組合と「災害時における給水装置の応急措置の協力に関する協定」を締結。14年7月28日には三多摩管工事協同組合とも同協定を結んだ。同年、東京都水道局とも「発災時における復旧用資材の情報提供に関する覚書」を締結。東京都水道局、復旧工事にあたる業者、流通が三位一体となって、災害時に速やかな復旧資材調達の情報提供や連携強化の効果が期待されている。

 昨年には、全国管工事業協同組合連合会と全国管工機材商業連合会が災害時における応急復旧の応援協力に係わる覚書を調印。全国各地で、業界にこうした連携の輪が広がっている。

 東京管工機材商業協同組合は現在まで多くの会員会社と個々に災害協定に係る資材提供の覚書を締結しており、今後さらに拡大する方針。災害発生時のネットワーク強化にも注力していく。

各種研修会・研究会

 毎年4月には、その年に会員会社に入社した新入社員が対象の研修会を開催している。自社で新人教育に時間と人を割けない中小会員会社からのニーズも多く、業界の基礎知識やビジネスマナーなどを学ぶ。中堅社員や管理職向けでは、営業推進、債権管理、最新商品に関するテーマなど、より実務的な研修会も随時行っている。

 15(平27)年には、管機連からの要望で「管工機材の将来を考える研究会」が発足した。管材や住宅設備機器メーカーなど外部から講師を招き、エコ・エネルギー、中古住宅流通・リフォームなどをテーマに業界の最新市場動向、法制について情報を共有。業界の行政への窓口である管機連とも連携し、管工機材業界の地位向上に向けた活動を推進している。

 管材業界には、環境・省エネ対応や災害対応など業界全体に係わる問題、商流の変化による事業再編や経営・現場の後継者育成など会員会社個々が抱える課題がある。東京管工機材商業協同組合は今後も、業界と会員会社双方の問題・課題解決に向けた活動を推進していく。

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